- 60位〜51位
- 第60位 “Dummy”/Portishead (1994)
- 第59位 “Aja”/Steely Dan (1977)
- 第58位 “Aquemini”/OutKast (1998)
- 第57位 “Never Mind The Bollocks Here’s The Sex Pistols/Sex Pistols (1977)
- 第56位 “Appetite For Destruction”/Guns N’ Roses (1987)
- 第55位 “(What’s The Story) Morning Glory?/Oasis (1995)
- 第54位 “Bitches Brew”/Miles Davis (1970)
- 第53位 “Unknown Pleasures”/Joy Division (1979)
- 第52位 “Is This It”/The Strokes (2001)
- 第51位 “Let It Bleed”/The Rolling Stones (1969)
- 50〜41位
- 第50位 “Horses”/Patti Smith (1975)
- 第49位 “The Chronic”/Dr. Dre (1992)
- 第48位 “In The Aeroplane Over The Sea”/Neutral Milk Hotel (1998)
- 第47位 “Who’s Next”/The Who (1971)
- 第46位 “Purple Rain”/Prince & The Revolution (1984)
- 第45位 “Off The Wall”/Michael Jackson (1979)
- 第44位 “Born To Run”/Bruce Springsteen (1975)
- 第43位 “Marquee Moon”/Television (1975)
- 第42位 “There’s A Riot Goin’ On”/Sly & The Family Stone (1971)
- 第41位 “Innervisions”/Stevie Wonder (1973)
60位〜51位
第60位 “Dummy”/Portishead (1994)
トリップ・ホップ初期の名盤で、ロックとヒップホップのより高次な結びつきを示した1枚です。
デジタルなビートは力強くも淡々と鳴り響き、そのビートを軸に展開される音像は深々と降り積もる雪の情景を連想させるほど冷ややか。ただベス・ギボンズの歌声のみが情感的ですが、それすらもこの凍てついたサウンドの中で孤独を振りまいています。
非情なメランコリアを展開するこの作品は、冷酷な美によって貫かれています。レディオヘッドの『キッドA』が体現してみせたロックの脱ロック化、その予言のようにも思える作品。
第59位 “Aja”/Steely Dan (1977)
D・フェイゲンとW・ベッカーによるユニット、スティーリー・ダンの緻密極まりない傑作です。
数多のセッション・プレイヤーを迎えて構築されたサウンドは、非常にスムーズで心地よい響きを持ちます。しかしこの音像は2人の狂気的な完璧主義の賜物で、リラックスしたムードの中には尋常ならざる緊張感が滲んでもいるのです。
AORやフュージョンの文脈で語られることの多い作品ではありますが、本作はそうしたジャンルによる制約を超越しています。この上なく上質でアダルトなポップスとして、触れがたい高みに到達してみせた非凡な名盤。
第58位 “Aquemini”/OutKast (1998)
サザン・ヒップホップの代表格、アウトキャストの数ある名盤の中でも、最も充実した内容を誇る第3作です。
サンプリングのセンスは勿論、実際の演奏を主体としたトラックは実にグルーヴィー。その心地よさはソウル/R&Bの延長線上としても解釈できますが、ネオ・ソウルとも異なる純然たるヒップホップ・アルバムとして両者の融合に成功した点は高く評価すべきです。
コンシャスな姿勢にも根差し、しかしシリアスではなくパーティー的な享楽にも溢れている。ヒップホップの成立の過程を思えば、本作はヒップホップの持ち得る全ての特質を表現し尽くした1枚と認めることができます。
第57位 “Never Mind The Bollocks Here’s The Sex Pistols/Sex Pistols (1977)
ロンドン・パンクの代表格、セックス・ピストルズの1stアルバムであり最終作。如何にも乱暴な『勝手にしやがれ!』の邦題でも知られています。
英国王室から大手レーベル、ありとあらゆる権威に中指を立てる姿勢は実にパンキッシュ。粗悪な演奏に人を馬鹿にした歌声もパンクのパブリック・イメージと符合しますが、これはM・マクラーレンによる極めて打算的な音楽性であったことは理解せねばなりません。
本作をパンクの本質と認識することは危険な一方で、本作がパンクを代表する傑作であることは紛れもない事実。UKロックに巨大な爪痕を残した、あまりに強烈な一撃。
第56位 “Appetite For Destruction”/Guns N’ Roses (1987)
80’sを席巻したグラム・メタル、その真打たるガンズ・アンド・ローゼズの記念すべきデビュー・アルバム。
どの楽曲にも一切の小細工はなく、A・ローズの素晴らしい金切り声とスラッシュのタフなギター、パワフルなビートというハード・ロックの典型をあけすけに展開する様は痛快そのもの。どの楽曲もハイ・テンションで、ハード・ロックの魅力をキャッチーさを伴って余すことなく表現しています。
ニルヴァーナの登場によりHR/HMが沈静化したことを思えば、このアルバムはハード・ロック栄光の時代の最後のピースと言うこともできるでしょう。最後の花火に相応しい、けばけばしくも華々しい名盤です。
第55位 “(What’s The Story) Morning Glory?/Oasis (1995)
ブリットポップの大名盤と名高い、ギャラガー兄弟率いるオアシスの2ndアルバム。
ザ・ビートルズを代表するUKロックの殿堂への影響を隠そうともしないそのストレートなロックは、ともすれば過去の音楽の焼き直しになりかねません。しかしノエル・ギャラガーの天才的な作曲とリアム・ギャラガーの天性の歌声があれば、唯一無二のロック・クラシックへと変貌します。
バンドの代表曲を数多く収録し、そのボリュームは最早ベスト・アルバムと言っても遜色ないほど。90’sのロックにおける有数の名作アルバムです。
第54位 “Bitches Brew”/Miles Davis (1970)
ジャズの限界を悟り、その向こう側を目指したマイルス・デイヴィス。その最終到達点として提示されたのがこの『ビッチェズ・ブリュー』。
いわゆる「電化マイルス」の集大成と名高いこの作品ですが、ジャズの帝王としてのM・デイヴィスという観点から見つめるのは危険です。従来のジャズ理論を逸脱した、アヴァンギャルドで破滅的な熱量をこそを本質とする1枚。
フュージョンの先達として歴史的意義の高い作品でもあり、本作に参加したジャズ・マンの後の功績を鑑みても、彼らが一堂に会したこの作品を高く評価するのは極めて妥当と言えるでしょう。
第53位 “Unknown Pleasures”/Joy Division (1979)
ポスト・パンク屈指の名盤であり、この世に存在する全てのレコードの中でも最も陰惨とした1枚です。
イアン ・カーティスのバリトン・ヴォイスは濃厚な闇が持つ特有の光沢を放ち、ミニマルで何ら起伏を持たないサウンドと奇妙な呼応を見せます。その絶望の表現はまるで深海のような息苦しさと冷たさを聴き手にも押し付けるほど。
まったくもって鑑賞していて楽しい作品ではなく、万人に受け入れられるアルバムでないのは明らか。その一方で、精神の最も繊細で危うげな部分の具現化と言ってもいい、未来永劫古びない普遍性を帯びた1枚です。
第52位 “Is This It”/The Strokes (2001)
21世紀におけるロックのあり方を提示した、ロックンロール・リバイバルの代表的名盤です。
徹底してシンプル、限界まで贅肉を削ぎ落としたソリッドでシャープな音像は、旧来のロックへのリスペクトを滲ませつつも印象を異にします。その温度感もどこか冷笑的で、スタイリッシュに展開されるガレージ・ロックはクールそのもの。
ほとばしる精神のエネルギーを様々に解釈してきたロックの歩み、その中で熱量をひけらかすことなく、それでいてパワフルにロックンロールを表現する手法は極めて斬新かつ衝撃的です。
第51位 “Let It Bleed”/The Rolling Stones (1969)
B・ジョーンズの脱退と死、そして60’sの終焉というバンドにとっての変遷の狭間に産み落とされたバンド有数の傑作です。
実際本作にはほとんどジョーンズは参加せず、後任のギタリストであるM・テイラーの参加も数曲に留まり、バンドの方法論の中ではある意味で異色の作風と言えます。しかしその内容は彼らの歴史の中でも目を見張るほど素晴らしく、同時にとびきりダーティでもあります。
荒廃した時代の空気を閉じ込めたかのようなデンジャラスなムードはザ・ローリング・ストーンズの魅力そのもの。ジャケットに付された「大音量で聴くべし」という注意書きに従い、余すところなくロックンロールを堪能するのがこの作品へのマナーでしょう。
50〜41位
第50位 “Horses”/Patti Smith (1975)
NYパンクにおける重要人物、「パンクの女王」ことパティ・スミスのデビュー・アルバム。
冒頭で強烈な存在感を発揮する序曲『グロリア』はブルーアイド・ソウルのグループ、ゼムのカバー。スミスの情念的な歌唱と荒々しい演奏によって、見事なパンク・クラシックとしての再構築に成功していることからも彼女の才能は明らかでしょう。
秀でた詩才や猛々しい歌声も勿論、女性特有の感性や強かさを多分に含んだこの作品は、男性優位のロック・シーンにおける女性のオルタナティヴ・ロックの先達としても高く評価すべきです。
第49位 “The Chronic”/Dr. Dre (1992)
ヒップホップ史上最高のプロデューサー、ドクター・ドレーのソロ作品としては最高の完成度を誇るアルバムです。
サンプリングだけでなく実際の楽器演奏も取り入れ、よりグルーヴィーでファンキーなサウンドを構築する「Gファンク」というスタイルの習作とも言うべき内容で、気だるげなムードとアグレッシヴなラップの相性は見事という他ありません。
スヌープ・ドッグを筆頭にドクター・ドレー傘下のアーティストも多数参加した、90’sウェストコースト・ヒップホップの金字塔と呼ぶに相応しい名盤の1つ。
第48位 “In The Aeroplane Over The Sea”/Neutral Milk Hotel (1998)
ニルヴァーナやレディオヘッド、オアシスら90’sを彩るロック・バンドの影に隠れ、ひっそりと生まれ落ちた重要なアルバムです。
アコースティック・ギターを主軸とした音像を展開しつつも、サイケデリックな陶酔感、インディー・ロック的な濃密な陰影、そしてノスタルジックかつ劇的なアルバムの構造は見事という他ありません。商業的成功には程遠いものの、その完成度は時代の中でも有数です。
発表当初こそ見過ごされていたアルバムながら、アーケイド・ファイアらインディー・シーンの重要アーティスト、そしてNMEやピッチフォークといった主要メディアがメンションすることでその意義が再確認された遅咲きの名作。
第47位 “Who’s Next”/The Who (1971)
ザ・フーの最高傑作として知られる1枚。
ロック・オペラの傑作『トミー』に続くコンセプト・アルバムを念頭に置いて制作されたものの頓挫した計画、そのマテリアルを再構築したという背景は有名ですが、この作品の雄渾たるスケール感とエネルギッシュな演奏はそうした「未完の大作」を思わせない堂々たる佇まい。
特に序曲と最終曲のイントロで極めて象徴的に鳴り響くシンセサイザーのリフレインには70’s的前衛性が感じられ、同時にそのパワフルさはハード・ロック的でもあります。紛れもなくロック全盛期における決定盤の1つです。
第46位 “Purple Rain”/Prince & The Revolution (1984)
プリンスが主演を務めた映画のサウンドトラックであると同時に、彼の膨大なカタログでも有数の傑作。
ファンクのようであり、ロックのようであり、ポップスのようでもある。掴みどころがなく、しかし確かに上質であるこの作品は実に妖しげです。その紫の妖気はサイケデリアすら纏い、唯一無二のセクシーさを演出しています。
プリンスがカルト・スターから時代の寵児に変貌を遂げる契機になったのも十分に頷ける、彼の個性をポップネスによって万人に理解し得るフォーマットに書き換えた緻密さも素晴らしい1枚です。
第45位 “Off The Wall”/Michael Jackson (1979)
アーティストとしてのマイケル・ジャクソンにとって、事実上初となるソロ・アルバム。
以降もタッグを組む名プロデューサー、クインシー・ジョーンズが集めた腕利きのミュージシャンに囲まれた中でジャクソンの発揮するプレゼンスは、最早チャイルド・スターのそれではありません。自作曲も積極的に提供し、成熟した1人のアーティストとして作品に大きく貢献しています。
ブラック・コンテンポラリー屈指の名盤として、時にあの”Thriller”を凌駕するとも称されるR&B史上に残る珠玉のレコード。
第44位 “Born To Run”/Bruce Springsteen (1975)
アメリカン・ロックを代表する「ボス」ことブルース・スプリングスティーンの出世作です。
情熱的ながらどこかナイーヴなスプリングスティーンの歌声が紡ぐ世界観は、どこまでも広大で自由なアメリカの大地をたやすく想起させます。同時にサックスを大々的にフィーチャーしたサウンドは重厚で、フィル・スペクターを意識したというのも頷ける出来栄え。
単にパワフルなだけでない繊細な表情も併せ持つ筆致は、「ボス」のパブリック・イメージからはある意味では離れたものでしょう。しかしそのクオリティは絶対的で、アメリカン・ロックの真打に相応しい1枚です。
第43位 “Marquee Moon”/Television (1975)
NYパンクの中でも指折りの完成度と芸術性を見せる、テレヴィジョンの1stアルバム。
NYパンクの聖地であるライヴ・ハウス、CBGBから登場した彼らのサウンドは一大スペクタクルを展開したオーヴァーグラウンドのロック音楽とは一線を画するものです。絡みつくギター・サウンドは無機質かつ狂気的で、どこまでも無感動な情熱という奇妙な質感に終始しています。
NYパンクというポピュラー音楽史においても一際アーティスティックな潮流において、この作品は輪をかけて先鋭的です。緊張感に満ちたムードが危うげな退廃を演出する、唯一無二の作品。
第42位 “There’s A Riot Goin’ On”/Sly & The Family Stone (1971)
『暴動』の邦題で知られる、スライ・ストーンによる密室ファンクの大名盤です。
スライ・ストーンが多重録音によって構築したそのサウンドは、それまでのハッピーで開放的なファンクネスとは打って変わった暗い表情を見せます。ドラムマシンを導入した最初期の音源としても知られ、そのDIY精神は後のプリンスやディアンジェロにも繋がるものでしょう。
マーヴィン・ゲイが「何が起こっているんだ? (What’s Going On)」と問いかけた同年に「暴動が起こっているんだ」と痛烈に黒人社会を貫くその冷たい態度、そしてこれまでに類を見ない独自のファンクネスはブラック・ミュージックの歴史でかつてないほど重要です。
第41位 “Innervisions”/Stevie Wonder (1973)
盲目の天才、スティーヴィー・ワンダーの所謂「黄金期」の3部作に当たる作品です。
ソングライターとしての目覚ましい才能は勿論、このアルバムではほとんどの演奏を彼自身が手がけ、彼の驚異的な音楽的感性が余すところなく発揮されています。
ニュー・ソウルとしてのアーティスティックな側面を見せつつ、徹底的にファンキーに、そして徹底的にグルーヴィーに展開するブラック・ミュージックは他の追随を許しません。当時弱冠23歳にして、老練な支配力をもって構築された名盤です。
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