- 40〜31位
- 第40位 “The Low End Theory”/A Tribe Called Quest (1991)
- 第39位 “Doolittle”/Pixies (1989)
- 第38位 “Blonde On Blonde”/Bob Dylan (1966)
- 第37位 “The Queen Is Dead”/The Smiths (1986)
- 第36位 “Loveless”/My Bloody Valentine (1991)
- 第35位 “Rumours”/Fleetwood Mac (1977)
- 第34位 “A Love Supreme”/John Coltrane (1965)
- 第33位 “In The Court Of The Crimson King”/King Crimson (1969)
- 第32位 “Enter The Wu-Tang (36 Chambers)”/Wu-Tang Clan (1993)
- 第31位 “Rubber Soul”/The Beatles (1965)
- 30〜21位
- 第30位 “Tapestry”/Carole King (1971)
- 第29位 “Electric Ladyland”/The Jimi Hendrix Experience (1968)
- 第28位 “Blood On The Tracks”/Bob Dylan (1975)
- 第27位 “OK Computer”/Radiohead (1997)
- 第26位 “Remain In Light”/Talking Heads (1980)
- 第25位 “Songs In The Key Of Life”/Stevie Wonder (1976)
- 第24位 “My Beautiful Dark Twisted Fantasy”/Kanye West (2010)
- 第23位 [Untitled]/Led Zeppelin (1971)
- 第22位 “Illmatic”/Nas (1994)
- 第21位 “Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band”/The Beatles (1967)
40〜31位
第40位 “The Low End Theory”/A Tribe Called Quest (1991)
ジャズとヒップホップの積極的な融合を試みた一派、「ネイティヴ・タン」が残した作品の中でも一際優れているのが、このア・トライブ・コールド・クエストの2ndアルバムです。
冒頭から大胆にジャズをサンプリングし、JB由来のグルーヴとも一味違う独自のテイストを手中に収めています。実際にジャズ・ベーシストのロン・カーターが参加しており、生音を主体としたトラックは実にシックできめ細やか。
当然ヒップホップの歴史においても意義深い作品ですが、プログレッシヴ・ロックやフュージョン以来のジャズとポピュラー音楽の接続という点において、ブラック・ミュージック全般でも存在感を発揮する1枚。
第39位 “Doolittle”/Pixies (1989)
90’sにおけるオルタナティヴ・ロックの台頭、その布石となるピクシーズの2ndアルバム。
轟音で鳴らされるギター・サウンドと正気を失ったかのように絶叫するヴォーカルが共鳴するその音像は衝動的そのもの。静と動を行き交う手法はポピュラー音楽全般において一般化していますが、この作品でのそれは最もピーキーかつフリーキーです。
この作品がオルタナティヴ・ロックの世界に与えた影響は計り知れず、ニルヴァーナやレディオヘッドといった90’sを代表するアーティストにとっても乗り越え難い巨石としてシーンに横たわる作品です。
第38位 “Blonde On Blonde”/Bob Dylan (1966)
ボブ・ディランのフォーク・ロック3部作における集大成で、ポピュラー音楽最初期の2枚組アルバムともされる作品です。
煙に巻いた発言を多く残すディラン本人ですら、この作品を評して「特別なサウンド」としており、その完成度は彼の理想像に肉薄しています。フォークの侘しさとロックの激情の双方をこれまで以上に高い次元で両立させ、どの楽曲も実に個性的。
レコードD面を使い切る格好の大作”Sad Eyed Lady Of The Lowlands”が象徴するように、60’s中期の実験的精神もパッケージされており、ディランのカタログでも最高峰に位置付けて然るべき創造的なアルバム。
第37位 “The Queen Is Dead”/The Smiths (1986)
UKインディーの雄、ザ・スミスの最高傑作です。
ジャケットに起用された横たわるアラン・ドロンの肖像から感じる退廃的な美、それは作品全体を貫くカラーでもあります。モリッシーの紡ぐ歌詞はどこまでも陰鬱ながら諦観の込もった清々しさのようなものも表現し、そうした濃密さをジョニー・マーのギター・プレイが奇妙にも軽やかに仕立てます。
MTVやヒップホップの台頭で狂騒の時代を演じた80’sにあって、インディー・ロックの嚆矢となる作品を産み落とした意義は巨大です。内向的でダーク、そしてだからこそ生まれるロックのカタルシスを閉じ込めた名盤。
第36位 “Loveless”/My Bloody Valentine (1991)
シューゲイザーを代表する、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインの傑作2nd。
どこまでも曖昧に、そして巨大に鳴り響くギターはノイジーでありながら甘美でソフト。囁くように紡がれる歌声もやはりスウィートで、この作品に通底するメランコリックな美学はそれまでのロックにはないキャラクターです。
全く新しいロック・サウンドの提示という意味ではこの作品は最後の一例と言えるかもしれません。シューゲイザーのフォーマットを構築した偉業だけでなく、その革新性によってポピュラー音楽全般にとっても重要な足跡を残した作品。
第35位 “Rumours”/Fleetwood Mac (1977)
イギリスのバンドの作品ながらアメリカで巨大なヒットを記録した、70’sロックを代表する名盤です。
リンジー・バッキンガムやスティーヴィー・ニックスの参加で軽やかなポップネスを獲得した彼らのピークがこの作品で、キャッチーなメロディと堅実なアンサンブルの奥から残り香として感じる枯れたブルースの味わいも見事。
バンド内の人間関係が破綻した中での制作でも知られますが、結果としてその背景がこの作品に単なるポップスには出せないある種の緊張感や危うさの表情を与えています。オーソドックスながら決して真似できない、正にオンリー・ワンの作品。
第34位 “A Love Supreme”/John Coltrane (1965)
ジョン・コルトレーンの最高傑作で、ジャズの芸術化におけるピークの1つです。
異なるリズムを並列させる展開は西洋音楽の手法からは外れたアプローチで、アフリカ音楽やインド音楽への意識の賜物です。もちろんジャズという西洋音楽としても白眉で、カルテットの鬼気迫るプレイは神に捧げられた作品というコンセプトを強く感じさせます。
ジャズの持つ静けさや穏やかさのイメージからは離れた情熱的な演奏は、ジャズの世界にとどまらずロックの演奏法にも大きな影響を与えました。ジャンルを超えて存在感を発揮する稀有なジャズ・レコードです。
第33位 “In The Court Of The Crimson King”/King Crimson (1969)
『クリムゾン・キングの宮殿』の邦題でも知られる、プログレッシヴ・ロックを開闢せしめたキング・クリムゾンのデビュー・アルバム。
ジャズの要素を取り入れたスリリングな即興演奏、サックスやフルートといったロックのアンサンブルには通常使用されない楽器の導入、メロトロンを巧みに操って構築した壮大なスケール。そのどれもが旧来のロックとは一線を画する斬新さであり、そしてそれらが全て高い水準で完成されています。
プログレッシヴ・ロックという70’sにおける重要な潮流を生み出したばかりか、同時にその最高到達点を示してしまった、永遠にプログレッシヴな名盤です。
第32位 “Enter The Wu-Tang (36 Chambers)”/Wu-Tang Clan (1993)
イースト・コースト・ヒップホップを代表するグループのデビュー作。同時にヒップホップの歴史に残るマスターピースでもあります。
メンバーのほとんどがソロ・アーティストとして成功したことからもわかる通り、それぞれに強烈な個性が白熱するマイク・リレーから伝わってきます。どこかレトロなトラックが彼らのラップの魅力を引き立てている采配も処女作とは思えない辣腕ぶり。
ハイ・テンションに、あるいはコンシャスにラップするのではなく、ある種のメロディアスなムードを伴った心地よいヒップホップが展開する名作です。
第31位 “Rubber Soul”/The Beatles (1965)
ザ・ビートルズにおける重要なターニング・ポイントであり、ポピュラー音楽の深化の予兆となる作品です。
ボブ・ディランに感化されたフォーキーなサウンドやインド音楽の受容といった音楽性は、それまでのマージービートとは一線を画するものです。同時にエヴァーグリーンなメロディが通底し、次作以降の強烈な実験性とも毛色の違う高品質なポップスの性格も有したアルバム。
最初期のサイケデリック・ロックという見方もでき、いずれにせよ世界最大のアイドルであるザ・ビートルズのイメージとは大きく離れた作品です。そして、世界最高のアーティストであるザ・ビートルズのイメージに見事に符合した作品。
30〜21位
第30位 “Tapestry”/Carole King (1971)
60’sから職業作曲家として夫のジェリー・ゴフィンと活躍した彼女が、ソロ・アーティストとしての成功を決定的なものにした1枚。
シンガー・ソングライターのブームから登場した多くのメロディ・メーカーの中にあって、10年以上のキャリアを持つ彼女の音楽は貫禄を見せつけるかのように飛び抜けて上質です。メロディ、歌唱、演奏、その全てが実に抜け目なく高水準。
誰の耳にも明らかに優れていると理解できる上質さと普遍性を兼ね備えた作品はそう多くありませんが、この『つづれおり』はその両立を難なくこなしています。間違いなく、史上最良のポップス・アルバムの1つです。
第29位 “Electric Ladyland”/The Jimi Hendrix Experience (1968)
ジミ・ヘンドリックス率いるスーパー・トリオの最終作にして、バンドの創作のピークを的確に捕らえた2枚組アルバムです。
泥臭いブルース・フィーリングから先鋭的なサイケデリック・サウンドまで、ヘンドリックスのギターによる表現は時の試練を経ても破格そのもの。デビューから1年余りにして、最早そこには老練な円熟すら滲んでいます。
単にヘンドリックスのワンマンでなく、バンド・アンサンブルの総体で魅了する展開も多く、わけてもミッチ・ミッチェルのドラムはロック・ドラムの歴史において先駆的。単にギターの神の記念碑でなく、ロックの歴史に巨大な足跡を残した偉大なバンドの傑作です。
第28位 “Blood On The Tracks”/Bob Dylan (1975)
ディラン最大のヒットを記録し、60’sのフォーク・ロックの諸作と並んで彼の傑作と名高い1枚。
時代の代弁者、フォークの若き担い手として出発した彼がこの作品で辿り着いた境地はどこまでも個人的で俗的です。多くの楽曲で悲恋を題材とし、アコースティック・ギターとブルース・ハープを軸としたシンプルなサウンドの中で語るように歌うしゃがれ声は生々しさすら漂うほどにリアル。
恋や愛についての作品はこの世にありふれていますが、そうした題材を一切陳腐に感じさせず、どころかどこまでも痛切に描き切るディランの表現力には脱帽する他ありません。
第27位 “OK Computer”/Radiohead (1997)
オルタナティヴ・ロックの旗手としてのレディオヘッドがピークに達した、90’sを代表するアルバムです。
過去2作で展開したギター・オルタナティヴを骨子としつつも、よりディープでダークな音像を追究しています。コンピュータ社会への警鐘を鳴らす歌詞も作品のムードに貢献し、作品全体が完璧に掌握された理知的なロック・アルバム。
ミレニアムを予感させる沈鬱とした通奏低音と冷酷に研ぎ澄まされた美意識は、当時のシーンにおいても、そしてポピュラー音楽史上においても極めて異質にして上質です。
第26位 “Remain In Light”/Talking Heads (1980)
NYパンクから出発した彼らが、ニュー・ウェイヴとしての音楽性を確立した記念すべき名盤。
前作から試みていたアフリカ音楽の採用が結実した作品として評価が高く、パンクによるロック解体を受けてのロックの拡張をいち早く実践しています。ファンキーでありながら情熱的ではない、その奇妙な無機質さは唯一無二。
ポピュラー音楽におけるワールド・ミュージックの受容はザ・ビートルズに端を発するものですが、ことアフリカ音楽となればこの作品は最初期の例の1つ。その挑戦と成功は、バンドの高い創作性のなせる業でしょう。
第25位 “Songs In The Key Of Life”/Stevie Wonder (1976)
「黄金期」と称される3部作の後に、絶頂期の集大成としてスティーヴィー・ワンダーが発表した2LP+1EPの超大作。
全ての楽曲において彼の神がかり的な才能が遺憾なく発揮され、メロディ、グルーヴ、歌唱、演奏、その全てにおいて非の打ち所がありません。時に朗らかであり時にファンキー、そして時には霊的ですらある。そうした完璧なソウルが全21曲にわたって展開されるのですから驚く他ありません。
これほどまでに恐るべき才能の発露でありながら、この作品はどこまでもポップ。グラミー賞も総なめし、大ヒットも記録した、「名盤」の要素を1つ残さず兼ね備えた稀有な作品です。
第24位 “My Beautiful Dark Twisted Fantasy”/Kanye West (2010)
21世紀最重要アーティストの一角であるカニエ・ウェストの最高傑作。
Qティップやドレイクといったヒップホップ界の同志に止まらず、リアーナにボン・イヴェール、エルトン・ジョンといったジャンルを横断したアーティストを客演に迎え、彼のキャリアの集大成とも言うべきサウンドを次々に展開するそのゴージャスさは格別です。
キング・クリムゾンやブラック・サバスをサンプリングすることでロックの歴史にも目配せをしつつ、それらを21世紀的ポピュラー音楽のモードに落とし込む手腕には惚れ惚れとしてしまいます。正に21世紀を代表する名盤です。
第23位 [Untitled]/Led Zeppelin (1971)
ZEPの最高傑作であり、ロック全盛期を象徴する1枚。タイトルはありませんが、第4作であることから”IV”とも呼ばれています。
初期2作で開拓したブルース由来のハード・ロックの手法と、前作で挑戦したトラッドな作風、それらを極めて高い次元で融合させることに成功し、最早ハード・ロックの名盤という枠に収まらない普遍性を主張した1枚です。
ロック・ギターの聖典『天国への階段』にヒップホップのサンプリング元としても意義深い『レヴィー・ブレークス』といった重要曲を多く収録した、正にロックの金字塔と呼ぶに相応しい名盤。
第22位 “Illmatic”/Nas (1994)
多くのヘッズがヒップホップ史上の最高傑作と見なす、東海岸の天才ラッパーの衝撃的デビュー作。
「西高東低」の関係にあった当時のヒップホップ・シーンを一変させるだけの完成度がこの作品には備わっています。マッチョなイメージはなく、気だるげで都会的なムードを纏いながら私小説的なライムを刻むナズのラップは既に円熟の域にあると言っていいでしょう。
ヒップホップの作品としては比較的コンパクトで、アルバム作品としてのトータリティの観点でもその充実度は確かなものがあります。ヒップホップの名盤としては屈指の1枚。
第21位 “Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band”/The Beatles (1967)
サイケデリック・ロックに沸く1967年、ザ・ビートルズが生み出した最大の発明品がこのアルバムです。
「架空のバンドによるライブ演奏」というコンセプトに基づいたこの作品は、おそらく史上初の意識的な「名盤」です。アルバムという単位にフォーカスを当て、サウンドにおいてもサイケデリック・ロックのビビッドな色彩感覚が通底し、「サマー・オブ・ラヴ」に沸く時代の空気を密封しています。
カウンター・カルチャーの象徴であり、「1960年代のサウンドトラック」とも称される、ポピュラー音楽における最大のゲームチェンジャーとして燦然と輝く傑作です。
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