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ピエールが本気で作った「史上最高の洋楽名盤ランキングTOP100」

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20位〜11位

第20位 “Blue”/Joni Mitchell (1971)

A Case of You

シンガー・ソングライターの最高峰、ジョニ・ミッチェルの傑作です。

アコースティック・ギターとピアノ、そして歌声だけを主軸としたどこまでも簡素な作りながら、それゆえに輝く彼女の作曲能力には思わず恍惚としてしまうものがあります。その真珠の如き柔らかな光沢は、女性的な感性でないと描出できないテクスチャーです。

後続の女性アーティストへの影響力も巨大で、今日の音楽シーンにおける女性の活躍を思えばこの作品はますますその意義を深めています。単なるSSWムーヴメントの一貫としての評価では留めておけないアルバムの1つ。

第19位 “The Rise And Fall Of Ziggy Stardust And The Spiders From Mars”/David Bowie (1972)

Rock 'n' Roll Suicide (2012 Remaster)

デヴィッド・ボウイの最高傑作にして、「ジギー・スターダスト」の栄枯盛衰を描いたコンセプト・アルバムの名盤です。

玉虫色の才能をキャリアを通じて発揮し続けたボウイですが、この作品には最早彼の姿はなく、火星からやってきたバイセクシュアルのロック・スター、「ジギー・スターダスト」に自身を埋没させています。ジギーの妖艶さはグラム・ロックの妖しげなサウンドにより増幅し、そのムードは実にデカダン。

そのエキセントリックなコンセプトやシアトリカルな当時のステージがまるでこの作品をフリーキーかのように思わせますが、あくまでロック黄金期の頂点に君臨し得る普遍性こそを本質とする1枚。

第18位 “To Pimp A Butterfly”/Kendrick Lamar (2015)

Alright

10’sにおける最高傑作であるばかりか、オール・タイムにおいても屈指の名盤の地位を確かなものにしつつあるケンドリック・ラマーの傑作。

人種差別からスターの苦悩まで、ラマーが見つめる様々な問題がコンシャスな姿勢によって貫かれ、そこにジャズのエッセンスを大いに導入したサウンドがよりシリアスな質感を強めています。私小説の如き作風ながら、誰の心をも打つその真摯さは彼のリリシストとしての才覚のなせる業。

リリースからわずか10年で並み居る伝説的名盤と匹敵してしまうだけのことはある、ヒップホップの垣根を超えた普遍性を見せるアルバム・クラシックです。

第17位 “Exile On Main St.”/The Rolling Stones (1972)

Tumbling Dice

ストーンズの黄金期においてもとりわけ密度と充実度の高い、2枚組の大作アルバム。

ミック・ジャガーが「音楽の展覧会」と認める通り、この作品にはポピュラー音楽のルーツたるアメリカ南部のサウンドが所狭しと収録されています。徹底的にアーシーで妖しく、そしてクール、70’sのロックの動向を敢然と無視した誇り高きロックンロールの連続はストーンズにしかできない芸当です。

ラフでルーズ、乾いた土の匂いが充満したこの作品は、今日忘れ去られつつあるロックンロールの最も本質的な魅力そのものと言えるでしょう。

第16位 “It Takes A Nation Of Millions To Hold Us Back”/Public Enemy (1988)

Don't Believe The Hype

ヒップホップにおける最重要作品とみなされ、事実このジャンルにおいて最も重要なアルバムの1つです。

冒頭でマルコムXの演説を引用していることからも明らかなように、この作品は硬派でシリアス、そしてコンシャスな姿勢で一貫しています。チャックDのラップは一聴だに強烈で、そこに込められた主張はやはり人種差別をはじめとした社会問題への痛烈な批判です。

決してリリックの内容を理解せずとも、アグレッシヴなラップとトラックによってこの作品の魅力は十全に掴み取れます。悲しいかなその主張は今日においても朽ちることなく、未だに苛烈。

第15位 “Abbey Road”/The Beatles (1969)

The Long One (Comprising of ‘You Never Give Me Your Money’, ’Sun King’/’Mean Mr…

ザ・ビートルズの事実上のラスト・アルバムであり、彼らの音楽の集大成に相応しい作品です。

A面にはメンバーそれぞれの渾身の楽曲が並び、わけてもジョージ・ハリスンの活躍は目覚ましいものがあります。そしてB面には壮麗なメドレーが収められ、ポール・マッカートニーとジョージ・マーティンによる采配の数々が崩壊を目前にしたバンドの実情をいささかも感じさせない完璧なサウンドスケープを展開。

最も偉大なポピュラー音楽家の最終作というドラマを差し引いたとしても、この作品の完成度は彼らのカタログの中でも随一。どこまでも切なく、そして美しい、音楽史に残る完璧な幕切れです。

第14位 “Kind Of Blue”/Miles Davis (1959)

Miles Davis – So What (Official Audio)

ジャズの巨人、マイルス・デイヴィスの最高傑作であり、ロックやポップスの名盤と並び史上最高のアルバム作品と目される1枚です。

ハード・バップに傾倒していたデイヴィスがモード・ジャズに目覚めた瞬間の作品であり、参加プレイヤーはジョン・コルトレーンにキャノンボール・アダレイ、そしてビル・エヴァンスと錚々たる顔ぶれ。最高峰のジャズ・マンによる緊張感に満ちた演奏は苛烈そのもの。

サウンド自体は静謐ですが、その静けさの中に尋常ならざる密度が感じられる1枚。ジャズとは何か、それを端的に表現してみせたマスターピースです。

第13位 “London Calling”/The clash (1979)

London Calling (Remastered)

ロックにとって激動の10年だった70’sの終わりに産み落とされた、ザ・クラッシュの2枚組の名盤。

ロンドン・パンクとして出発したバンドですが、この作品はパンクの名盤として評価できないアルバム。何しろロカビリーにスカをはじめとした多様な音楽性が濃密に混じり合い、最早1つのジャンルでは定義できない縦横無尽の音像を展開しています。

ロックがパンクによって打倒され、80’s以降シーンが新たな局面を迎えることを思えば、このアルバムは「ロックの走馬灯」と表現できるのかもしれません。

第12位 “The Beatles”/The Beatles (1968)

While My Guitar Gently Weeps (Remastered 2009)

ザ・ビートルズがサイケデリックの狂騒から脱し、バンドのクリエイティヴィティを爆発させた2枚組の大作です。

セルフ・タイトルが象徴する通り、この作品にはバンドに可能な創作の全てを無秩序に封じ込められています。それはすなわちポピュラー音楽の可能性全てと換言してもよく、ポップスにブルース、アコースティック・バラードからミュージック・コンクレートまで、その全体像はカオスそのもの。

同時にそこには星雲のような巨大な秩序も存在し、その多様性はザ・ビートルズにしかなし得ない偉業です。現代の感性でも全く朽ちないアイデアが凝縮した作品。

第11位 “Voodoo”/D’Angelo (2000)

Untitled (How Does It Feel)

90’s後期から勃興したネオ・ソウルにおける決定盤であり、同時にグルーヴの概念を覆した傑作です。

リズムに意図的な「揺らぎ」を生み出すことで表現されたその独自のグルーヴは、以降のブラック・ミュージックにおいて常に参照されるほど衝撃的な発明です。単に革新的作品でなく、ヒップホップを通過した感性でニュー・ソウルを解釈することで生まれる心地よさはエヴァーグリーンでもあります。

現代のシーンから音楽史を俯瞰で評論する上で、この作品のコペルニクス的転回はあまりに重要な意味を持ちます。ブラック・ミュージックにおけるターニング・ポイントたる重要なアルバム。

10位〜1位

第10位 “Kid A”/Radiohead (2000)

Idioteque

20世紀に繰り広げられたロックの進化、その終着点こそがレディオヘッドの『Kid A』でしょう。

「脱ロック」を図ったこの作品には、バンドが活動初期に構築したギター・オルタナティヴの要素は皆無です。エレクトロニックに大きく傾倒した無機質なサウンドにジャズやヒップホップのエッセンスを散りばめたこの作品は、「ロック」と呼ぶにはあまりにもダークで冷酷。

しかし、絶えずその領域を拡張してきたロックの精神性に照らし合わせれば、やはりこの作品はロックの名盤と認めるべきでしょう。アルバムとしての完成度も当然ながら非凡で、ロックの限界とその向こう側を提示してみせた傑作です。

第9位 “Thriller”/Michael Jackson (1982)

Billie Jean

6000万枚という史上最大のセールスを記録した、「キング・オブ・ポップ」ことマイケル・ジャクソンによる前人未到のモンスター・アルバムです。

TOTO、エディ・ヴァン・ヘイレン、ポール・マッカートニーといった錚々たる面々をゲストに迎えたこの作品は、単なるブラック・ミュージックの枠組みを超えた「ポップス」としての普遍性を獲得しています。それは単に大衆的という意味ではなく、あらゆる因習をことごとくなぎ払った結果として。

印象的なミュージック・ビデオや驚異的なセールスばかりが注目されますが、紛れもなく音楽作品として最高純度のアルバムであり、ポピュラー音楽の最高到達点の1つとしてこそ評価すべき名盤。

第8位 “Highway 61 Revisited”/Bob Dylan (1965)

Like a Rolling Stone

ポピュラー音楽最大の偉人の1人、ボブ・ディランの「ロック化」が完成した記念すべきアルバムです。

前作から試みていたロックとフォークの融合、それをよりパワフルな次元で成立させているのが最大の特徴。「時代のドアを叩く音」とも形容される『ライク・ア・ローリング・ストーン』のイントロがそのことを何よりも雄弁に語っています。

ロックに文学性をもたらす契機という意味でも重要なアルバムであり、そればかりか単にディランの最高傑作としてだけでも十分に歴史的名盤たりうる1枚。

第7位 “The Dark Side Of The Moon”/Pink Floyd (1973)

Time

プログレッシヴ・ロックの第一人者、ピンク・フロイドによる究極のコンセプト・アルバム作品。

「人間の内側に潜む狂気」という難解なコンセプトに基づき、アルバム全体としてシームレスに展開するその音のパノラマは完璧と呼ぶ他ありません。エンジニアリングにおいても当代の追随を許さず、緻密なスタジオ・ワークの極致がこの作品のテーマをより補強しています。

『サージェント・ペパーズ』によって成立したコンセプト・アルバムの概念、その行き着く先こそがこの作品。難解さを上回るその普遍性によって驚異的なロング・セラーともなった「アルバム文化」の象徴です。

第6位 “Sign O’ The Times”/Prince (1987)

Adore

ブラック・ミュージックにおける重要人物にして唯一無二の鬼才、プリンスの最高傑作にして2枚組の大作。

スライ・ストーンが提示した「密室ファンク」の手法やJB由来の濃密なブラックネス、そうした古豪を参照しつつも、そこにプリンスの絶対的な個性を注入した世界観は正にオンリー・ワン。自身のバック・バンド、ザ・レボリューションを解散させ、ほとんどの楽器を自身が手がけることでその個性はより強烈に発揮されています。

ディアンジェロやフランク・オーシャンといった後続のブラック・ミュージックの求道者にも進むべき先を示した、ブラック・ミュージックにおけるあまりに巨大なミッシング・リンクです。

第5位 “The Velvet Underground & Nico”/The Velvet Underground (1967)

Heroin

現代アートの大家、アンディ・ウォーホルがプロデュースを務めた、「アート作品」としてのロックの源流に位置付けられる作品です。

ドラッグやSMにまつわるあけすけな歌詞、鋭くも退廃的で危なげな世界観、そして作品全体に充満するアヴァンギャルドなアティチュード、そのどれもが旧来のロックにはない新奇な要素です。この剥き出しの芸術性は、パンクやオルタナティヴ、果てはインディーのルーツとみなされるほどの影響力を歴史の中で誇示しています。

ブライアン・イーノをして「このアルバムは3万枚しか売れなかったが、買った3万人は全員バンドを始めた」と称する、商業的失敗にもかかわらず最重要作品の地位を欲しいままにする真のアート作品。

第4位 “What’s Going On”/Marvin Gaye (1971)

What's Going On

R&B/ソウルが芸術性、精神性を獲得する契機となった、マイルストーン的名盤です。

商品としての意義の強かったブラック・ミュージックにとって、社会問題に切り込んだシリアスな姿勢やスピリチュアルなサウンドは紛れもなく革新的。事実、モータウンの看板シンガーだったゲイがこの作品を発表することに当初レーベルは難色を示しました。

しかしこの作品はブラック・ミュージックを「表現」の域に到達させることに見事成功しました。以降ゲイを旗印に展開されたニュー・ソウルのムーヴメントのみならず、全てのブラック・ミュージックの精神的先達となった偉大すぎる1枚。

第3位 “Nevermind”/Nirvana (1991)

Smells Like Teen Spirit

ヘア・メタルを一網打尽にし、たった1枚でグランジ中心のシーンを形成してしまったあまりに衝撃的なアルバム。

「パンクとブラック・サバスの結婚」と評される初期衝動とヘヴィネスの共存、そこにカート・コバーンという破滅的カリスマが乗じるサウンドはロックの原始的魅力を90’s的に提示しています。商業的なアレンジメントを考慮してもなお、その衝撃はリリースから30年を経ても全く色褪せません。

カート・コバーンやニルヴァーナにつきまとう悲劇的なストーリーを無視しても、単に最高レベルのロック・アルバムとして歴史に名を残す大名盤です。

第2位 “Revolver”/The Beatles (1966)

Tomorrow Never Knows (Remastered 2009)

ザ・ビートルズの脱アイドル化、そしてアーティスト化が成功した瞬間を切り取った1枚です。

いち早く採用したサイケデリック・ロックの要素、テープの逆回転やサウンド・エフェクトを効果的に導入したスタジオ・ワーク、インド音楽との接続、そうした様々な試みはこれまでのポピュラー音楽の領域を遥かに逸脱した革新性を示しています。

レノン=マッカートニーの完全に拮抗した才能、そして音楽家としての躍進を見せるジョージ・ハリスン、その全てに完璧なリズムを提示するリンゴ・スター……歴史的意義は勿論、ザ・ビートルズの瞬間最大風速がパッケージされた彼らの最高傑作。そしてザ・ビートルズの最高傑作ということは、それは歴史上でも最高峰の名盤でもあるのです。

第1位 “Pet Sounds”/The Beach Boys (1966)

God Only Knows (Mono / Remastered)

実質的にブライアン・ウィルソンがたった独りで作り上げた、音楽の歴史に燦然と輝く孤高の大名盤。

フィル・スペクターの「ウォール・オブ・サウンド」を参照しつつ、壮麗な演奏とザ・ビーチ・ボーイズの重厚なコーラス・ワーク、そしてウィルソンの天才的なメロディが霊的なまでに美しい音像を構築しています。

ウィルソンの今にも崩壊しそうな精神が反映された脆くも儚い世界観はしばしば難解とも評されますが、その迷宮の如き深遠さはこの作品に永遠の鮮やかさと感動を刻み込んでいるのです。

その触れがたい絶対的な美しさは、何人たりとも到達できない高みに達しています。ポピュラー音楽の深化における重要なピースであるだけでなく、純然な音楽として未だ比肩するもののない音楽史上の最高傑作です。

まとめ

さて、全4万字、弊ブログの過去最長記録を大幅に更新する今回の記事、お楽しみいただけたでしょうか。

このリストを制作する上で前提とした私の中での洋楽史観や「名盤」観を最後に語っておきたいのですが、それはまた別の機会に譲ろうと思います。

私にとってこれ以上ないランキングという自負はある一方で、見方を変えれば多くの批判が来ることは容易く想像できます。

そうした批評的な議論、それこそ私が求めたいものであり、我々の音楽への意識をアップデートさせるものだと思うのです。

是非とも皆さまの忌憚なき意見をぶつけていただきたいですね、私も全力で反論しますのでどうぞよろしく。それではまた。

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