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山下達郎の「サブスク解禁一生しない」発言から考える、「音楽後進国」日本

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さて、音楽ネタを扱うこのブログではこれは是非とも扱いたいトピックです。

山下達郎 サブスク解禁一生しない - Yahoo!ニュース

こちら、先日公開された山下達郎のインタビュー。その見出しにもなった「サブスク解禁一生しない」という発言が、かなり話題を集めましたね。

インタビュー全文は表現者としての彼の矜持や哲学に溢れた、極めて示唆的で含蓄のある内容です。センセーショナルな見出しで早合点するのは惜しいものですので、まずはご一読いただければ。

ただまあ、この見出しが注目を浴びたのは事実ですから。実際、私もこれについては思うところが結構あります。それは単に「山下達郎のサブスク未解禁」というだけの話でなく、もっと大きなスケールの問題意識として。

今回はそこんところをつらつらと書いていきたいと思います。それではどうぞ。

タツローのサブスク解禁は「責務」

さあ、まず大前提として、今回のタツローの宣言、これは尊重すべきというのが私の考えです。彼が職人気質で頑固な音楽家であることは百も承知ですし、その彼の哲学にのっとった判断なのであれば、それは受け止めねばならないでしょうね。

その上で主張させてください。こと2022年に至って、彼のサブスク参入は「責務」だと私は考えています。

考えてもみてくださいよ。CDを一切リリースせず、いまだにLPでしか発表しないアーティストがいたとしたら「こいつ何してんだ」ってなりませんか?今回のタツローの主張、やってること自体はそれと同じだと思っていて。

音楽の聴かれ方というのはサブスクの普及以降一変しました。テープ・レコーダーの発明によって音楽が「音楽」として保存できるようになった歴史や、CDの登場がレコードの50分というフォーマットを破壊した事実、サブスクというのはこれらと同列に語るべきパラダイムシフトなんです。

そのパラダイムシフトに対応するのは、発信の側として当然すべきことなのではないかと思うんですよ。山下達郎ほど多くの人々に求められる才能の持ち主であればなおさらに。

だって彼の音楽って、今や日本人だけのものではないでしょ?彼を最右翼とするシティ・ポップは世界中で愛好される巨大なジャンルになってしまったし、タツローの音楽を求めてわざわざ日本くんだりまでやってきてレコードを買い漁るコレクターまでいるんです。

80s japanese city pop playlist

でも、誰も彼もがそこまでの行動力や経済力がある訳ではない。結局のところ、彼の音楽はYouTubeで極めてグレーなラインの上で楽しまれている。権利元に還元されているかどうか怪しいままの音源が、そこら中にある状態ですからね。

そこにしっかりルーリングをするという意味でも、サブスク解禁はしてやらないといけないと思うんです。タツローはサブスク未解禁の理由を「表現に携わっていない人間が自由に曲をばらまいて、そのもうけを取ってるんだもの」とサブスクのシステムからくるものだと指摘していますけど、それって現状でもそうなっていますし。

サブスクの還元率の悪さは他のアーティストもしばしば糾弾しているポイントではありますけど、それ自体は改善されるべき点として、それはサブスク解禁による権利問題の整備を拒む理由には必ずしもなり得ないのではないかと思いますね。

サブスク後進国、日本

さて、話をもう少し大きくしましょう。山下達郎という個人にとどまらず、日本国内におけるサブスクリプションの発展には至らぬ点が多々存在しているんです。

サブスクが未だに未解禁のアーティスト、少し考えるだけで山ほど出てきます。中島みゆきBLANKEY JET CITYTHE BLUE HEARTSマキシマムザホルモンチャゲアスに……アイドル系統ならジャニーズハロプロはほぼ全滅ですから。

まあ、それぞれに理由はあるんでしょうけど、その理由そのものがもうエクスキューズとして機能しなくなってるんですよ。さっきも言った通り、音楽の聴かれ方はこの10年でまるで変わっている。それはどうしたって事実なんですから、そこにアジャストしないことには話にならないんです。

実際私個人としても、そのせいで聴けずじまいになっている国内の音楽ってそれなりにありますよ。「それはただの怠慢、CDで買え」と言われればそれまでなんですけど、その手順を踏むなら手軽に聴ける洋楽の名作や近々の新譜聴いちゃいます。サブスク未解禁による機会損失というのを、私は実感しているんです。

でも自分で言うのもなんですけど、私はそれなりに音楽に誠実なつもりですし音楽への愛は深いつもりです。その私をしてそういう機会損失を生んでしまうということは、もっと一般的な音楽リスナーの層に至るとこの問題ってもっと深刻なはずなんですよね。

加えて言うと、発信側が後ろ向きなだけでなく、聴き手の側にサブスクに好意的でない層が見受けられるのも日本独特です。アイドルやアニメのファン、あるいは一部のロック・バンドのファンにも見られる傾向ですけど、「ファンなら音源を買ってこそ、サブスクで簡単に聴くのは愛が足らん」みたいな価値観あるじゃないですか。

これがもうまるっきり前時代的で。真にコンテンツの発展を望むのであれば、その間口は広いに越したことはないじゃないですか。なんですか「愛」って、そんなものコンビニでも買えると草野マサムネが20年以上前に言い切っているじゃないですか。

スピッツ / 運命の人

発信・受信の双方がサブスクという現代的で最大規模のフォーマットに後ろ向きな現状が招くのは、衰退しかありません。この事実に日本の音楽産業全体で気づくべきだと、私は強く主張したいですね。

サブスク後進国は、音楽後進国である

それじゃあ、もっと話の規模を大きくしましょう。日本がサブスク後進国であるというのは今書いた通りですけど、それって最早「音楽後進国」と同義ではないかと思うんです。

誤解されたくないので断っておきますけど、日本の音楽はそれはそれは豊かですよ。諸外国にも決して負けないクオリティだと私は信じて譲らないし、未だに見かける「洋楽至上主義」的なリスナーに対しては冷たい視線を浴びせています笑

ただその上で、音楽産業のあり方としては日本は遅れを取っていると言わざるを得ない。何故なら、急速に進む「音楽のグローバル化」に対応できていないから。

これに関しても色々な意見はあるでしょう。日本はアメリカに次ぐ規模の音楽市場が既に国内に構築されている以上、グローバル化はそもそも不要という指摘もありますし、それはある意味では正しいとも思っています。

ただどうです、最早ポピュラー音楽は英米の特権ではなくなりつつあるでしょ?K-Popがビルボード・チャートを席巻し、ロックの新たな担い手としてイタリアからマネスキンが殴り込みをかけるようなこの時代に、いつまでも日本は音楽的に鎖国していていいものでしょうか。

それこそタツローの話に戻りますけど、シティ・ポップは世界的なムーヴメントになっている訳です。あるいはNujabesを軸に発展したローファイ・ヒップホップもそうだし、ムーヴメントと呼ぶにはスノッブ過ぎますけどRate Your Musicでフッシュマンズが絶大な支持を集めている現状もある。

reflection eternal
Long Season

これは私の敬愛するみの氏の発言の引用なんですけど、邦楽は「発見待ち」なんですよ。機会さえあれば、もっと拡散されて、もっと評価されるはずで。その機会を、サブスク後進国・日本が手ずから摘み取ってしまうというのはあまりにナンセンス。

尤も、国際的な評価が全てだとは思っていないんです。いい音楽はいい、それが真理ですから。ただ、どれだけ優れた音楽であろうと、音楽は聴かれることで初めて存在意義を持つ。これもまた真理です。いい音楽はそれだけ多くの人にリーチしないといけないし、それは音楽の質だけではどうしようもない、システムやプロモートに依存してしまう部分ですから。

さっきタツローのサブスク解禁を「責務」と言い切ったのは、正にこの信念によるところなんですよ。彼はよく「耐用年数」という言葉を用いて音楽制作の哲学を語りますけど、そもそもが聴かれないことには耐用年数もへったくれもないんです。

音楽の聴かれ方の変化、それは単純なフォーマットの変化だけを意味しません。音楽産業の規模の変化でもあるし、音楽のあり方そのものにも多大な影響を与えるものなんです。このことに無自覚あり続けるのであれば、私は素晴らしい音楽的土壌に富んだこの国を「音楽後進国」と非難せざるを得ない、そう思います。

まとめ

なんか説教くさいポストになっちゃいましたね。ただ、それだけ真摯に考えないといけないテーマだと私は思っているんです。今回のタツローのインタビューは、そのいいきっかけなのかなと。

投稿の中でも書いていますけど、今回提言した内容って単純に音楽産業のあり方を批判するだけでなく、聴き手の側の意識にも関わる問題なんですよね。もっと我々はプログレッシヴに音楽産業を捉えないといけないと思うし、その意識が何某かに作用することだってあるでしょうから。

とはいえ、普段からこんなしち面倒臭いこと考えてたら音楽が楽しくなくなっちゃうので。基本的には好きな音楽聴いて脳汁全開にするのが一番健全なんですよ。ただ、たまに立ち止まって、こういう問題に思考を巡らせる。そういう時間もそれはそれで大切だと私は考えています。

今回の私の主張が必ずしも正解だとは思ってもいないですしね。私がタツローのインタビューをきっかけにこの投稿に至ったように、この投稿が誰かの思考のきっかけになっていれば嬉しく思います。それではまた。

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