- 80位〜71位
- 第80位 “Graceland”/Paul Simon (1986)
- 第79位 “Straight Outta Compton”/N.W.A. (1988)
- 第78位 “Paranoid”/Black Sabbath (1970)
- 第77位 “The Stone Roses”/The Stone Roses (1989)
- 第76位 “I Never Loved A Man The Way I Love You”/Aretha Franklin (1967)
- 第75位 “Ready To Die”/Notorious B.I.G. (1994)
- 第74位 “Pink Moon”/Nick Drake (1972)
- 第73位 “Beggars Banquet”/The Rolling Stones (1968)
- 第72位 “Blonde”/Frank Ocean (2016)
- 第71位 “Led Zeppelin”/Led Zeppelin (1969)
- 70位〜61位
- 第70位 “After The Gold Rush”/Neil Young (1970)
- 第69位 “Music From Big Pink”/The Band (1968)
- 第68位 “The Miseducation Of Lauryn Hill”/Lauryn Hill (1998)
- 第67位 “Trans-Europa Express”/Kraftwerk (1977)
- 第66位 “John Lennon/Plastic Ono Band”/John Lennon (1970)
- 第65位 “The Joshua Tree”/U2 (1987)
- 第64位 “Funeral”/Arcade Fire (2004)
- 第63位 “The Doors”/The Doors (1967)
- 第62位 “The Blueprint”/Jay-Z (2001)
- 第61位 “Ramones”/Ramones (1976)
80位〜71位
第80位 “Graceland”/Paul Simon (1986)
サイモン&ガーファンクルでの活躍でも知られるポール・サイモンのソロ・キャリアにおける最高傑作。
本作を特徴づけるのはやはりそのリズム。サイモンがかねてより関心を示していたワールド・ミュージックの受容が本作では大々的に試みられ、アフリカ音楽に根差したビートやグルーヴがこの作品にオンリー・ワンの質感を生み出しています。
サイモンの素晴らしいメロディ・センスだけでも音楽としては成立するところへ、アフリカ音楽の濃密な軽快さを加えることで本作はいっそう奥深い内容となっています。ポピュラー音楽と民族音楽を結ぶピースとしても本作は重要。
第79位 “Straight Outta Compton”/N.W.A. (1988)
西海岸ヒップホップの伝説的アーティスト、N.W.A.の1st。ギャングスタ・ラップの代表的な名作です。
ヒップホップにつきまとうマッチョでブルータルなイメージ、そのルーツの1つはこの作品と言っていいでしょう。ドラッグの蔓延や警察権力の横暴が日常となったL.A.の惨状を、過激なリリックと暴力的なビートで告発する様は真に迫るスリルと誠実さを感じさせます。
ドクター・ドレーやアイス・キューブといったヒップホップの重要人物を輩出したスーパー・グループに相応しい名盤で、以降のウェストコースト・ヒップホップの指針を決定づけたエポックメイキングな1枚。
第78位 “Paranoid”/Black Sabbath (1970)
70’sハード・ロックの中心的バンドであり、メタル・ムーヴメントの祖とも称されるブラック・サバスの傑作2nd。
同時代の他のハード・ロックと比較しても、本作の醸すおどろおどろしさや重苦しさは実に特殊です。ギター・リフやリズムは引きずるように重く、オジー・オズボーンの歌唱も呪いを唱えているかのような邪悪さを感じさせます。
当然ハード・ロックとしても有数の名盤ですが、メタルへの影響力、あるいは90’s以降のグランジとの親和性を考えた時、単なるハード・ロックの名盤以上の意味を持つ重要作品と評価できるでしょう。
第77位 “The Stone Roses”/The Stone Roses (1989)
マッドチェスター・ムーヴメントにおける決定盤で、90’sのUKシーンにおけるマイルストーンとなったバンドのデビュー・アルバム。
ダンサブルなビートと浮遊感溢れるサウンドスケープの奇妙な共存は、ハウスの流行とドラッグ文化という当時のUKの反映です。水晶のように煌めく音像に、瑞々しくもどこか遠くから語りかけるようなヴォーカルが乗じて生まれるスペクタクルは唯一無二。
オアシスにブラーにレディオヘッド、90’s後半のUKロックの隆盛の根幹には、こうしたどこまでも英国的な音像の提示があったことでしょう。UKロックの中で格別の意義深さを持つ名盤の1つです。
第76位 “I Never Loved A Man The Way I Love You”/Aretha Franklin (1967)
「ソウルの女王」、アレサ・フランクリンの実質的なデビュー作です。
それまでポップスの歌手として不遇に甘んじていた彼女ですが、本作の素晴らしいブラックネスによってその素晴らしい才能を開花させています。その歌唱力は音楽史上最高峰で、あのO・レディングの名曲『リスペクト』を自家薬籠中のものとしています。
ソウルとは何か?優れた歌唱とは如何なるものか?その答えを端的に示した作品こそがこのアルバムです。絶対的な歌唱力で聴く者を唸らせる、ソウルの本質に肉薄した1枚。
第75位 “Ready To Die”/Notorious B.I.G. (1994)
90’sのヒップホップ・シーンにおいて2パックと人気を二分した伝説的ラッパーの傑作。
同時期にドクター・ドレーを筆頭に西海岸のヒップホップ・シーンで展開されたG・ファンクとも異なるハードコアなサウンドは、彼の巨体をたやすく想起させる重厚で破壊力のあるビギーのラップと、彼のラップに負けじと主張する強烈なビートによって提示されています。
そして意外にもポップな側面を持つ1枚でもあり、ヘヴィなアプローチとポップネスが絶妙なバランスでせめぎ合うことで緊張感を感じさせます。東海岸のヒップホップにおける屈指の名盤です。
第74位 “Pink Moon”/Nick Drake (1972)
生前は成功を収めることなく夭逝したシンガー・ソングライター、ニック・ドレイクの最終作。
彼がその人生の最後に残した音楽には、変則チューニングのアコースティック・ギターとヴォーカル、そして僅かながらのピアノしか存在していません。音の1つ1つから漂う儚さや幽玄のオーラは、まるで此岸と彼岸の架け橋のような印象すら受けます。
インディー・シーンからの注目によって彼の死後評価が高まった作品ですが、そうした影響力を無視したとしても、この置き土産の持つ唯一無二の美しさや侘しさは高く評価せねばなりません。
第73位 “Beggars Banquet”/The Rolling Stones (1968)
サイケデリック・ロックの導入が失敗に終わり、ルーツに立ち返ったストーンズが発表した作品です。
ルーツに立ち返ったと言えど、本作は実のところロックンロール・アルバムという訳ではありません。アコースティックなアプローチも目立ち、カントリーやフォーク、そして当然ブルースといった根本的なポピュラー音楽の本質に肉薄しています。
「ストーンズの面白さは純粋なロックンロールではない」とはK・リチャーズ自身の言ですが、なるほど迷走のサイケ・タームを抜け出し、ザ・ローリング・ストーンズの魅力の本質を描き出す作品としてこれ以上なく相応しい1枚でしょう。
第72位 “Blonde”/Frank Ocean (2016)
10’sを代表する名盤としての地位を確固たるものとした、フランク・オーシャンの2枚目となるアルバム作品です。
彼の個人的体験に基づいて制作された数々の楽曲は、緻密なサウンド・プロダクションによってどこか朧げで曖昧模糊とした印象を抱かせます。そこに見て取れるのは孤独の表情ですが、その孤独はどこまでも甘く、そして優しい姿をしているのです。
そのパーソナルな筆致と至上の美しさは、あの『ペット・サウンズ』を想起させます。現在進行形で進化し続けるソウル/R&Bのフロンティアたる1枚です。
第71位 “Led Zeppelin”/Led Zeppelin (1969)
ハード・ロックの祖、70’sにおけるロックの玉座をほしいままにしたレッド・ツェッペリンの記念すべきデビュー・アルバム。
轟音で鳴り響くヘヴィな演奏と、それすら支配する圧倒的歌唱。レッド・ツェッペリンのアンサンブルの本質は処女作にして十全に表現され、サイケデリアにブルース、アコースティックといった様々なサウンドを「レッド・ツェッペリン」の名の元に掌握しています。
60’s中期以降にロック・シーンで巻き起こった諸潮流を統括し、ハードなサウンドで進歩的にアップグレードする。何故ZEPが史上最高のロック・バンドの一角たり得るのかは、本作を聴けばすぐに理解できるはずです。
70位〜61位
第70位 “After The Gold Rush”/Neil Young (1970)
カナダを代表するシンガー・ソングライター、ニール・ヤングの最高傑作。
ギタリストとしても高い評価を受けるヤングですが、本作では彼のメロディ・メーカーとしての才能にフォーカスされています。ヤングの線の細い歌声と彼の紡ぐ哀愁漂うメロディの相性は格別で、もの悲しいムードが厚い雲のように作品を包み込むかのよう。
フォーキーなアプローチでまとめ上げ、どの楽曲もメロディの純度のみで表現する誠実さは惚れ惚れとします。この作品での彼の作曲は、彼がポピュラー音楽屈指のソングライターであることを静かに語るのです。
第69位 “Music From Big Pink”/The Band (1968)
誰も彼もがサイケデリアの狂熱にうかされる中、ポピュラー音楽の芯を見誤ることなく表現したザ・バンドの1stアルバムです。
かつてボブ・ディランのバック・バンドだったことは有名ですが、そのエピソードは単なるトリヴィアではなく彼らの演奏の妙味を裏打ちする根拠です。派手さにこそ欠けますが、堅実かつ魅力的なプレイによってアメリカ音楽の最も心地よい面を描き出しています。
演奏は前述の通り、ヴォーカル・ハーモニーやメロディも非の打ち所がなく、とにかく上質と言っていい1枚です。ジョージ・ハリスンやエリック・クラプトンといった偉人にも影響を与えた名盤。
第68位 “The Miseducation Of Lauryn Hill”/Lauryn Hill (1998)
フージーズのメンバーであるローリン・ヒルの唯一のソロ作であり、ヒップホップ/ネオ・ソウルの文脈における重要作品の1つ。
レゲエの導入はフージーズでも試みた手法の1つですが、本作はよりヒップホップやソウルの中で調和の取れたサウンドになっています。全編通じてしなやかなグルーヴが感じられ、ヒルの気だるげなセクシーさがメロウな作品像を強調する格好に。
ヒップホップの要素を色濃く持つ本作ですが、その本質はあくまで心地よいソウル/R&Bにあります。90’s以降のブラック・ミュージックのあり方を、滑らかな才能によって描出したきめ細かな名盤と言えるでしょう。
第67位 “Trans-Europa Express”/Kraftwerk (1977)
ドイツの前衛音楽シーン、クラウトロックの代表的存在であり、後の電子音楽の世界の開祖とも称えられるクラフトワークの傑作。
『ヨーロッパ特急』という名の通り、ヨーロッパを走る鉄道をテーマにしたと聞けば如何にも牧歌的に思えるかもしれません。しかしそのサウンドは一貫してシンセサイザーによって展開される電子音で、一切の肉感のない冷徹なテクスチャーです。
テクノやハウスといった後続の電子音楽と比較しても遜色ない素晴らしい作品であり、同時にプログレッシヴ・ロック的に解釈しても非常に興味深い内容の1枚。
第66位 “John Lennon/Plastic Ono Band”/John Lennon (1970)
ザ・ビートルズ解散後初となる、ジョン・レノンのソロ作品。
『ジョンの魂』という極めて適切な邦題が示すように、この作品にはジョン・レノンという人間のすべてが閉じ込められています。剥き出しにされた彼の精神と才能はガラスのように繊細で美しく、どの楽曲も一切の虚飾を伴わない本質的なもの。
亡き母を想い、愛の本質を歌い、「ビートルズなんて信じない」とまで叫ぶ。天才アーティストでも愛と平和の象徴でもない、1人の傷ついた青年の肖像こそがこのアルバムです。
第65位 “The Joshua Tree”/U2 (1987)
アイルランドを代表するバンドであるU2が、世界的ロック・スターに成り上がった記念すべき名盤です。
アメリカンなサウンドへの接近が本作最大の特徴で、それまでのポスト・パンク的サウンドにはなかった雄大なスケールを獲得しています。ソウルフルですらある歌唱や大きなメロディもこの作品のカラーに沿うもので、荒涼としつつも包み込むような世界観の構築は見事。
単にアメリカナイズドされるのではなく、ジ・エッジのエフェクティヴなギターのようなバンドの強みを発揮しながらスケール・アップすることに成功し、U2の本質そのままに普遍性をも成立させた傑作と言えるでしょう。
第64位 “Funeral”/Arcade Fire (2004)
現代の音楽シーンにおけるインディー・ロックの存在感、その直接の根拠となるのがこのアーケイド・ファイアのデビュー作『フューネラル』でしょう。
多くの楽器が共鳴して織り成すシンフォニックな世界観と、どこかフォーキーで牧歌的な佇まい、儚くも美しい旋律。それらが一体になって生み出すうねりは、生命や神秘といったモチーフを連想させるほどに力強く表現されています。
この作品が提示した壮大さによって、インディー・ロックというカテゴリは予てからの芸術性に加えて大衆的な普遍性をも獲得しました。普遍性の源たるエネルギーをこれ以上ないほど漲らせた作品です。
第63位 “The Doors”/The Doors (1967)
サイケデリック・ロックのムーヴメントの中でも卓抜した存在感を誇る、ザ・ドアーズの1st。
ジム・モリソンの破滅的な歌声や倒錯的な詩世界が構築する音像は、どこまでも退廃的で幻惑的。そのサイケデリアは1967年の時代の空気を代弁するかのようです。
バンドを代表する名曲を多く収録したザ・ドアーズのキャリア・ハイであるばかりか、サイケデリック・シーン、そして60’sの音楽全体をも代表する稀有な名盤です。
第62位 “The Blueprint”/Jay-Z (2001)
ビギーと2パックという東西両雄を失った悲劇の後、90’s末からヒップホップ・シーンを盛り立てた重要人物ジェイ・Zの代表作。
カニエ・ウェストやジャスト・ブレイズといった後のヒップホップで中心的活躍を見せる才能がその頭角を現した作品でもあり、サンプリングに回帰したサウンドは優美で煌びやか。当然、その秀逸なトラックを従えるジェイ・Zのラップも格別です。
90’sをヒップホップの黄金期と捉えるならば、その発展を受けて前進した00’sはヒップホップの円熟期と評価できます。その円熟の象徴たり得る、実に如才ない傑作。
第61位 “Ramones”/Ramones (1976)
NYパンクの重要バンドにして、UKパンクの原型を構築したラモーンズのデビュー・アルバムです。
猪突猛進する8ビートとダウン・ストローク、その演奏に負けじとエネルギッシュに畳み掛けるヴォーカル。今日我々がイメージするパンク・サウンドそのものと言えるこのスタイルは、時の試練に打ち勝つ初期衝動に満ち満ちています。
どの楽曲も2分前後で、凝ったアレンジの介入する余地などない、シンプル・イズ・ベストの極致のようなアルバムです。悪し様に言えば単調とも表現できますが、それはたった1つのスタイルで聴き手を捩じ伏せることはラモーンズにとって容易である証左に他なりません。
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