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ピエールの選ぶ「2022年オススメ新譜5選」Vol.14

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木曜日ということで、「オススメ新譜5選」やっていきますよ。バックナンバーは↓からどうぞ。

先週も音楽トピックはたくさんありました。一番大きいのはコーチェラかな。そこまで熱心に追いかけていませんけど、宇多田ヒカルのパフォーマンスには胸を打たれたし、マネスキンはしっかりビッグになってくれそうで嬉しかったです。

Utada Hikaru (宇多田ヒカル) in Coachella 2022

あとはケンドリック・ラマーの帰還ですかね。5月リリースですから、あっという間にこの企画でも登場するかと思います。まだ何一つ作品の情報がない現状ですら、「どうせ名盤」という期待をしてしまいます。このとてつもないプレッシャーに応える作品であることを願うばかりです。

とまあ軽く先週を振り返ったところで、先週リリースの個人的名盤をレコメンドしていきましょうか。

“our hope”/羊文学

羊文学「光るとき」Official Music Video (テレビアニメ「平家物語」OPテーマ)

ケンドリック・ラマーほどではないにせよ、このバンドも期待値がえらいことになってましたね。羊文学の新譜、“our hope”です。

そんでもっていの一番に紹介していることからもわかると思いますが、いやはや期待通りでした!コアな音楽ファンからはずっと注目されていたし、最近ではメジャーへの露出も徐々に増えてきてね。ここでどういうカードを切るかというのはバンドのレガシーの中で重要になると思うんですけど、弩級の傑作で応えてくれました。

現行のインディー/オルタナティヴに呼応したサウンド・プロダクションが羊文学の強みの1つで、それは本作でも健在ですね。シューゲイズ的でもあり、ポスト・パンク的でもあり、ガレージ・リバイバル的でもあり。その上で本作ではポップに化けてしまったのがもう最高じゃないですか。

ポップといっても媚びている訳ではなくて、カネコアヤノっぽさが言及されている『金色』なんかはわかりやすいですけど、エッジィな楽曲もしっかりあるんです。その上で、メロディの強度だったり、あるいはメロディをロック・サウンドの中で滑らかに溶け込ませる技法だったりがかなり成熟していて。

初めて羊文学を聴いた時「ここまでコンテンポラリーなインディー・ロックやる日本のバンドがいたんだ」と感心したんですけど、この作品に至ってバンドはコンテンポラリーかつ普遍的にポップな領域に踏み込んでしまったと思います。全然キャリア・ハイと認めていい名作だし、今のところ宇多田ヒカルに対抗しうる、邦楽年間ベスト候補作の代表ですよ。

“(watch my moves)”/Kurt Vile

Kurt Vile – Like Exploding Stones

USインディーの雄、The War On Drugsに在籍していたことでも知られるギタリスト、Kurt Vileのソロ作品“(watch my moves)”です。

インディー・フォークとしてこれ以上ない仕上がりじゃないでしょうか。今年に関してはBig Thiefがどえらいアルバムを出したのでアレなんですけど、でもその文脈の中で語るべき1枚。USインディーに特有な、荒涼としているんだけど温もりのある、実に絶妙な筆致でね。

その上でほのかに香るサイケデリアが見事なアクセントになっています。幻惑的というほどに強烈ではないんですけど、どこか陶酔感があって、靄がかかったような神秘的なテクスチャを生んでいて。コーラス・ワークの目立つアルバムではないんですけど、温度感としては初期のザ・バーズみたいな瞬間もあるような気がします。

あまりThe War On Drugsと紐づけて語りすぎるのも短絡的な気がしないではないですけど、あのバンドが纏うアメリカーナの気配、言うなれば「のびのびとした孤独」の色彩が、インディー・サイケ・フォークという音楽性と見事にマッチしてます。

春という季節には軽やかさと物悲しさの2つの性格があると私は感じていて。その2つをピタリと音楽で描いてくれた1枚ですね。この季節にまさしく聴きたい音楽ですね。少々長いアルバムですけど、ゆったりとした時間の流れている作品ですから。気負うことなく、リラックスして世界観に没入できる魅力があります。

“Noughty By Nature”/Digga D

Digga D – Main Road (Official Video)

ここ何回かヒップホップをこのシリーズで取り上げ損ねていたんですが、今回はいい作品に巡り会えました。UKヒップホップから登場した新進気鋭のアーティスト、Digga D“Noughty By Nature”です。

ヒップホップの中でもドリルというサブ・ジャンルに属するサウンドですね。そこまでヒップホップの細々したジャンルまでは詳しくないんですけど、音楽性としてはUSシーンでも定番化しているトラップと似たようなものなのかな。で、トラップって個人的に苦手なんですよ。どれも似たり寄ったりな気がして。

ただこのアルバムに関しては、そういうありきたりな印象は受けませんでしたね。ビートのアプローチにしても楽曲毎にかなりタッチを変えているし、それにDigga Dのラップに気品があるのがいい。昨年傑作をドロップしたDaveLittle Simzにも共通する、洗練されていてどこか影も感じさせる真摯なラップです。

それこそUKラップの草分け的存在、The Streetsが見せたスタイリッシュな質感も発見できる気がするんですよ。もちろんサウンドはかなり違うし、ドリルというトレンドの中から生まれた作品ではあるんですけどね。すごく優雅に聴けちゃうヒップホップという意味では繋がってくるもの、あると思います。

何度かこのシリーズで主張しているんですけど、現代的なバッキバキのヒップホップは得意ではなくて。その感覚でいうとこれも聴く前は割とおっかなびっくりだったんですけどね。予想をいい意味で裏切ってくれる、アグレッシヴなのに聴いていて疲れない、ちょうどいい名作という印象です。

“Air”/SAULT

Air

一切の素性が明かされていない、謎多きイギリスのアーティストSAULT。サプライズ・リリースとなった最新作“Air”です。

恥ずかしながらアーティスト名も初めて知りまして。急いで情報をチェックしてると、ブラック・ミュージックをかなりエッジィに解釈しているアーティストとのことだったんですけど……何ですかこれは?ブラック・ミュージックの「ブ」の字もない、壮麗なシンフォニック・サウンドじゃないですか。

慌ててSAULTの過去作品もチェックしたんですけど、“Air”に至る痕跡はまるで発見できませんでした。情報の羅列だけで面食らうんですから、以前から彼らの存在を知っていた人は衝撃的だったでしょうね。ただ、じゃあこの作品がハズレかといったら全くそんなことはない。

このブログをよく見てくれている方なら私がプログレにめっぽう弱いことはご存知かと思いますが、そのアンテナに引っかかる作品ですよコレ。ただ、ロックの枠すら超えて、ほぼほぼクラシック。あるいは映画のサウンドトラックですかね。

とにかく心洗われる、壮大で神秘的なサウンドスケープ。どこまでも広がっていくその情景は宇宙的ですらあります。2022年の新譜!として聴くと割と戸惑うんですけど、「今年になってリリースされたムチャいい音楽」であることは絶対的事実ですね。

AIR, by SAULT
7 track album

“七号線ロストボーイズ”/amazarashi

amazarashi『境界線』Music Video

今回最後に紹介するのが、amazarashi“七号線ロストボーイズ”。これリリースのタイミングとしては先週扱うべきなんですけど、前回に間に合わなかったというのと、ぶっちゃけ先週のリリースそこまで刺さる作品が多くなかったのもあって……別に穴埋めのつもりはないですよ、満を持してオススメする1枚です。

amazarashiみたいな、いわゆるJ-Rockの範疇にあるアーティストをこの企画で紹介するのは初めてですか。いや、普通にこの辺は「世代」なので好きなんですよ。普段はやれ大滝詠一がどうのビートルズがどうのと言ってますけどね。ただ、近年のamazarashiは個人的にピンとこないことも多かったんですが、本作は久しぶりにしっかりキャッチできたアルバムです。

今回はかなりロック・バンド的なアプローチが目立つんですよ。構成としてはヴォーカル/ギターとピアノ/コーラスのユニットですし、ピアノをフィーチャーしたスロウなナンバーもしっかりあるんですけど、サウンドの全体としてはギターがかなり存在感を持っていて。

それが前向きなんだか厭世的なんだかわからない、ただひたむきな秋田ひろむの歌詞世界をよりエモーショナルに仕上げています。ピアノでしっとりと聴かせるのでなく、バンド・サウンドで衝動的に。どちらが先なのかはわからないですけど、近年落ち着いてきた感のある歌詞の後味の悪さ青臭さも取り戻されているのがまた嬉しいポイント。

このブログにお越しの方が気に入るアルバムかは、すみません、正直言って自信ないです。ただ個人的に思い入れのあるバンドだし、その上でここ最近ではかなりいい出来のアルバムになっているので是非とも聴いてほしいですね。

まとめ

さあ、今回はこんな感じの5枚で。最後に先々週分のamazarashiを選んでしまったのがちょっと自分の中でしっくりこないんですけど……

無難に話題作を当たり障りなく紹介することも可能ではあるんですよ。ただ、それはあまりに不誠実だし、この企画をやる意味がなくなってしまうので。冷静に考えて、これまで毎週5枚もオススメできる作品を見つけられていたのが幸運だった訳です。

今後もこのシリーズを続けるにあたって、こういうことはちょくちょく起こるでしょうね。その時は開き直って、それまでに紹介できなかった2022年の新譜を扱おうかと思います。こういう非常事態が起こりうることを把握できたという意味では有意義でした。

ただ、明日に関してはその心配はなさそうです。Spiritualizedキング・ギザード、それにPusha Tと大物だけでざっとこんだけある訳ですから。ネーム・バリューだけで期待するのは危険かもしれませんけど、流石にどれかは引っかかるでしょ。そんな感じで今回は締めておきましょうか。それではまた次回。

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