「ピエールの2022年オススメ新譜5選」、やっていきましょう。バックナンバーはこちらから。
Vol.1は思いつきで日曜日に投稿してしまいましたが、洋楽新譜って金曜に日付が変わったタイミングで一斉解禁されるんですよね。それならギリギリまで作品を聴き込める木曜日投稿の方がいい記事になるかと思い、これからは木曜日投稿とします。
……ということで、今回は先々週リリースだった作品からも選出しています。ちょっとトピックとしては遅きに失したチョイスにはなるかとは思いますが、以降はそんなことのないように頑張りますのでご容赦ください。
さて、前口上はこの辺にして、今週要注目だった5枚のアルバム、早速レコメンドしていきます。
①”BADモード”/宇多田ヒカル
はい、もうこれは問答無用で入ってきます。宇多田ヒカルの『BADモード』ですね。
リリース当日からTwitterはもう大騒ぎでした。その騒ぎに乗じて、私も珍しく新譜ながらにアルバム・レビューを敢行したほどで。あちらで語るべきことはほとんど語ってしまったんですけど。詳しくはそっちをご覧になっていただけると嬉しいです。
ただ、どうやらこのアルバムの評価、日本国内に限ったものでもなさそうです。というのも、Album Of The Yearという海外のレビュー・サイトでも、この『BADモード』は大絶賛なんですよね。user scoreに関してはあのザ・ウィークエンドの“Dawn FM”をしのぐ数値を記録しています。
あれだけよくできた作品だから当たり前で、むしろもう少し評価されてもおかしくないとすら思いますけどね。海外メディアが出す年間ベストでも名前を見るような状況になればすごく嬉しいです。そうなるに足る傑作ではあるので。
② “The Overload”/Yard Act
『BADモード』ショックに隠れてそこまで話題になっていなかった感もありますが、洋楽の本命はこれですね。Yard Actのデビュー・アルバム、“The Overload”です。
昨年のロック・シーンを騒然とさせたポスト・パンク勢の中にカテゴライズされるんですけど、実はあの絶賛を個人的にはそこまで受け止め切れていなくて。騒がれすぎな感も正直感じていました。実際、昨年の年間ベストでも私はBlack Midiの2nd以外は選外としていますから。
ただ、この作品はちょっと例外かな。というより、去年騒がれたどのアルバムより質がいいと思うんです。閉鎖的なんだけど生々しくて、古ぼけたスタジオのサウンドをそのままパッケージしたような印象を受けますね。音楽性もデビュー作とは思えないくらい煮詰まっていて、密度が素晴らしい。
来月には同じくポスト・パンク期待の新鋭、Black Country, New Roadが早くも2ndアルバムをリリースしますけど、このクオリティと比較されるのはかなり酷だと思います。そっちはそっちで楽しみなんですけど、デビュー・アルバム同士で比較しちゃうと、これはかなり高水準な作品じゃないでしょうか。
③ “W”/BORIS
『BADモード』の時にも名前を挙げたAlbum Of The Year、そこをチェックしている時に発見したアルバムです。前情報が一切なかったので日本語が聴こえてきた瞬間は結構驚きましたよ。
1992年から活動しているバンドらしく、きっとこういうアンダーグラウンドなロックを愛好する界隈では知ってて当然くらいの存在感があるバンドなんだと思います。そういう人達の寄合所ことRate Your Musicでも評価されているみたいですしね。
メタル的な分脈で語られたりもするみたいですが、重厚で壊滅的なサウンドの中にあるドリーミーな表情が個人的に好みです。人生に絶望したフィッシュマンズみたいなね。サウンドもインダストリアル的だったり、あるいはアンビエントな瞬間があったり、「ヤバイ」という共通項を持ちつつも単調さとは無縁の表現力を感じます。
いわゆるノイズ・ミュージック、それにアンビエントもそうなんですけど、この辺の知識に疎くて。ちょっとこの作品を機に攻略してみようかなという気持ちにさせられる程度には素晴らしいアルバムです。ひとまずはBORIS周辺をディグってみますけど、何かオススメあればコメント欄までお願いします。
④ “Optimism”/Jana Horn
調べても英語版wikiすら発見できなかったんですけど、これがデビュー・アルバムということなんでしょうか。Jana Hornの“Optimism”です。
繊細でモノクロームな、女性シンガーによるインディー・フォーク。これが第一印象ですね。なんとなくテイラー・スウィフトの『フォークロア』以降こういう作品が多いように思います。昨年であればカッサンドラ・ジェンキンスが割と早い時期にそういう路線で絶賛されましたが、その文脈の中で私は咀嚼していますから。
ただ、この作品は結構素直な感覚がありますね。キーボードが後方でうっすらと鳴っているものの、基本的にはこじんまりとしたバンド・アンサンブルがメインのアルバムですし。全体で聴かせる作品というよりはメロディを引き立てる真っ直ぐな作りの作品な気がしています。
ひょっとしたら「地味」みたいな印象を持つ方もあるかなとは思うんですけど、こういうネイキッドなアルバム大好きなんですよ。30分そこそこで終わる潔さもいいですよね。そのこじんまりとしたスケール感に、ひっそりとした感動や美しい瞬間が潜んでいる、そんなアルバムです。
⑤ “From A Bird’s Eye View”/Cordae
これはリリースのタイミング的には前回扱わないとダメなものなんですけど、スルーしておくのも釈然としないのでここで紹介させてください。コーデーの2nd、“From A Birds Eye View”です。
すごくクラシカルなヒップホップ・アルバム、というのが率直な感覚ですかね。トラックはシックですごく心地いいし、コーデーのラップもとびきりクールではあるんですけどどこか自然体を感じるというか。ヒップホップを大量摂取できない体質の私でも、いい意味で軽やかに聴くことのできる1枚です。
ガンナの参加に明らかなように、トレンドであるところのトラップ的なアプローチも取り入れてはいるんですけど、あくまでナチュラルなヒップホップとリリシストとしてのコーデーが真ん中にいるおかげでそこまで抵抗感もなく。なんならスティーヴィー・ワンダーをサンプリングしてR&B的に楽しめる瞬間もあるくらいですからね。
ガンナの新譜は苦手でしたし、Earl Sweatshirtも世間の反応ほどにピンと来なかった立場からすると、ようやく心の底から楽しめるヒップホップが出てくれたというのも安心感がありましたね。ヘッズの方からすると「何言ってんだコイツ」ってなもんかもしれませんが……ま、ここは私のブログなので。
まとめ
Vol.2で紹介するのは以上の5枚となります。あいも変わらずベタな選出ではあるんですけど、しっかり自分の耳と頭で解釈した上でのご紹介ですから。ある程度は信用していただいて構いませんよ。
早いもので1月も終わってしまうので、月間ベストみたいなものも発表していきたいですね。まだ構想中なのでどうなるかはなんとも言えませんし、聴きこぼしをさらう作業も定期的に必要ですから。
実は明日のリリース、正直そこまで名前だけではピンとくるアーティストがいないんですよね。強いて言うならジェスロ・タルは楽しみですけど、他は結構未知の領域なので。その辺の手探り感も味わってもらいつつ、Vol.3でお会いしましょう。
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