スポンサーリンク

独断と偏見と愛で選ぶ、「2021年間ベスト・アルバムTOP30」

Pocket

音楽を題材にした弊ブログ、流石にこれをやらずに2021年を終えることはできません。今回は年の瀬企画、「2021年間ベスト・アルバムTOP30」と参りましょう。

上半期のベストはこっちで順不同という感じでまとめているんですが、

今回はそこに順位づけをしていきます。ランキング企画多すぎますねこのブログ。

ただ、「新譜」には歴史的意義だったり後続への影響なんてものがまるで定着していない訳ですよ。だから評論として、1つの基準によって序列づけることが大変難しい。

なので今回はこうします。

「個人的に刺さったアルバムかどうか?」

……はい、つまり100%主観な訳です。

もちろんいろんなレビューサイトをチェックして、なんとなく「2021年新譜の勢力図」みたいなものは頭の中にはあるんですけど。それはあくまで参考程度に。独断と偏見それから音楽への愛でいきましょうか。「僕わかってます」感のあるランキングはピッチフォークに任せましょう。

それでは、どうせ今回もかなり長くなるのでそろそろ本編へ。ランキングのネタバレを避けたい方は目次を非表示にしていただければ。

第30位 “SEE-VOICE”/パソコン音楽クラブ

Dehors (Intro)

日本のDTMユニット、パソコン音楽クラブの3rdアルバムです。

名前は以前から知っていたんですけど、作品を聴くのは実はこれが初めてで。かなり印象と違う作品で驚きましたね。いわゆるDTMと聞いて想起する、ビートを主体としたダンサブルなものではなく、むしろメロディや繊細な世界観の描出を本質とする作品です。

過去2作ではもっとノリのいい音楽性だったので、意欲作とみなしていいんじゃないでしょうか。コロナの影響もあるのかもしれません。ただ、個人的に電子音バキバキのパーティー・チューンって苦手なので、このアルバムから入れてよかったんですけど。

作品のコンセプトは「水」、それは詩世界にも表れているテーマですが、それ以上にサウンドの部分でこのコンセプトを強く感じます。揺らめく不定形のサウンド、それでいて静謐で大らかで、どこまでも広がる優しさがある。

アンビエントというのも違うんですけど、すごく安らかな気持ちになれるんですよね。メロディも粒ぞろいで、こういう音楽が苦手な人にも満を持してオススメできる1枚じゃないかと。

第29位 “Screen Violence”/CHVRCHES

CHVRCHES – Good Girls (Official Video)

グラスゴー出身のバンド、チャーチズのアルバムです。

エレクトロ・ポップスとして非常に秀逸な内容なんですよ。電子音で構築された音像はすごくカラフルで、メロディはとても可憐で。こういう真正面からポップスやってる作品、実はこのリストでこの作品だけな気はしてます。

ローレン・メイベリーの歌唱も際立っていてね。加工された電子的な響きを持ってはいるんですけど、生意気な女の子みたいな印象があって。ほんのちょっぴり挑発的で、すごく引き込まれちゃう素晴らしい歌声です。

ただ、単に享楽的なポップス・アルバムなのかというとそうでもない。ゴシック的な闇みたいなものも感じられるんです。それこそザ・キュアーのロバート・スミスが客演していることからも狙い通りの表現なんだと思います。

そのゴスの成分がポップスにくどさを与えず、ちょっとした捻くれ方を作品に生んでいます。捻くれたポップスなんていうと、それこそグラスゴーの地で生まれたネオ・アコースティックを想起しますが、そういうある種の土着性も感じられたりしてね。断じてネオアコではないんですけど。

第28位 “Raise The Roof”/Robert Plant, Allison Krauss

Quattro (World Drifts In)

ここで大ベテランの登場、ロバート・プラントアリソン・クラウスのコラボレート作第2弾です。

何はともあれロバート・プラントの歌声ですよ。まるで老獅子のような、静かな気迫。どんなに勢いとセンスがあろうと、キャリアそこそこのシンガーには絶対に出せない表現力です。世界最高のシンガーの一角はやはり伊達じゃない。

プラントって正直作曲家として大成功した人物でもないし、クラウスも然り。じゃあ本作の音楽は何かというと、ブルースからフォークまで、彼のルーツに迫る数々のカバーです。これがまた痺れます。だってプラントの歌唱の本領って、ハード・ロック以上にこっちでしょ?

そしてクラウスとの相性がまた格別でね。侘び寂びすら感じる枯れた歌唱と女声のハーモニーは勿論、フィドルとの親和性が素晴らしい。クラシカルな味わいがグッと増して、神秘的な哀愁のようなものも感じられます。

ニック・ケイヴだったりスティングだったりABBAだったり、古豪も様々な活躍を見せてくれた2021年ですが流石にこれには敵いません。だってロバート・プラントですよ?これ以上言葉はいらないとすらいえる、それくらい彼の凄さを感じさせられた1枚です。

第27位 “Talk Memory”/BADBADNOTGOOD

BADBADNOTGOOD – Beside April

トロントを中心に活動するジャズ・バンド、BADBADNOTGOODのアルバムです。ゲストにはファラオ・サンダースとのコラボ作”Movement”で今年の注目を掻っ攫ったフローティング・ポインツらが参加しています。

この作品聴いたきっかけは、Twitterで「初期のキング・クリムゾンっぽい」なんてレコメンドを見たからなんですね。もう私くらいになると、キング・クリムゾンって聞くだけで体が反応しますから。パブロフの犬状態です。

で実際に聴いてみるといいんだなコレが。なるほど確かにジャズを軸としたアンサンブルで混沌としたムードを演出するという手法は共通です。本作はもっと格調高いというか、ロックのテイストはかなり薄いんですけど。

とにかく緊張感がすごいんですよね。技巧的に演奏を詰め込むというよりは、「空白」の中で火花を散らしてジリジリとボルテージを上げていくような、そんな印象です。聴き手の側にもかなりの集中力を要求するタイプの作品なんですが、その「空白」が見事なのでグイグイ引き込まれます。

とにかく予断を許さない、ギリッギリの均衡状態で45分もたせちゃう。プログレはそこにやたらドデカいカタルシスを持ってきますけど、このアルバムはその均衡状態のまま終わっていきます。プレイのほんの僅かな機微を追っていく楽しさがあるアルバムですね。

第26位 “SOUR”/Olivia Rodrigo

Olivia Rodrigo – deja vu (Official Video)

今年のグラミー最優秀新人賞は流石にこの人の独断場でしょうね。いまだにApple MusicのデイリーTOP100に食い込んでくる驚異的ロングヒット作、オリヴィア・ロドリゴの”SOUR”です。

デビュー曲である“driver license”が特大ヒットを記録してましたけど、あの曲って結構わかりやすい失恋系バラードなんですよね。そのせいで彼女のことを「ありがちなテイラー・スウィフトのフォロワー」だと誤認していました。今にして思えばバカな話で。

このアルバム、紛れもないロック・レコードですよ。1曲目からすごく直線的なギター・オルタナですし、全体を通してもインディー・ロック風味なんですよね。「イマドキ女の子の代弁者」というには可愛らしさの成分がかなり薄い。

でも、あくまで楽曲の強度が凄まじく高いというのが素晴らしい点で。ロック的に捉えても面白いんですけど、当然ポップスとしても非凡なんです。そうでないとああもヒット連発できません。

上半期のアルバム紹介記事の時に「大衆の耳もバカにならん」なんて言いましたが、アレは私の理解が甘かったです。内省的でロック的なこのアルバムを大衆に納得させちゃう彼女の作曲能力をこそ評価すべきだったんですね。

第25位 “Ignorance”/The Weather Station

Robber

カナダのアーティスト、ザ・ウェザー・ステーションのアルバムです。批評筋でも概ね好評なようで、今年のリストの定番になってくるアルバムじゃないでしょうか。

アルバム・ジャケットが端的に象徴している、濃密な闇を音楽でも豊満に表現していますね。アダルトな質感に終始していて、心地よいダウナー・ミュージックです。実は結構情報量は多くて、いろんなサウンドが光沢のある影を広げていきます。ブラスやストリングスのアレンジなんて見事なセクシーさで。

それでいてビートはかなりシンプル、これが面白い。カチッとしたドラムが前提にあるからこそ、上物だったりメロディだったりの部分で世界観を広げることができているんだと思います。

Tamara Lindemanのヴォーカルもいいんですよね。女優としても活躍する彼女ですけど、ひっそりとしつつも歌劇的というか、ドラマチックなんです。サウンドスケープとの相互作用もあって、沈鬱なフランス映画のような美しさを放っています。

その語るような歌声に隙間があるのがこの作品のミソだと思うんですよね。旋律だけでなく、しっかり音楽作品全体で物悲しい世界観を構築していくんです。この隙のなさ、名盤オーラが溢れているのも当然ですよ。

第24位 “Smiling With No Teeth”/Genesis Owusu

Genesis Owusu | The Other Black Dog (Official Music Video)

ガーナ出身で現在はオーストラリアで活動するヒップホップ・アーティスト、ジェネシス・オウスの1stフル・アルバムです。

一応ラップ・アルバムにはなるんでしょうけど、ヒップホップというよりは突拍子のないR&Bって印象が正直強いですね。メロディアスな瞬間もかなり多いので、そこまでラップラップしてません。

楽曲も多彩でね。メロウな楽曲が個人的にはグッとくるんですけど、80’sニュー・ウェイヴみたいな真っ直ぐな展開もあったり、アグレッシヴな時はとことんアグレッシヴで。その振れ幅をまとめるのが通底する「エロさ」でしょうか。

そう、全体的にかなりセクシーな作品なんですよ。それも上品さを伴う類のものでなく、ちょっと露悪的な。そういう際どいアプローチ、彼が敬愛するというプリンスとの接続もできると思います。

やっぱりブラック・ミュージックとセクシーさって切っても切り離せないものじゃないですか。プリンスにしてもそうだし、マーヴィン・ゲイだったりも。そういう意味で、ソウル的な耳で聴いてこそ楽しめる作品だと思います。

第23位 “綺羅星”/おはようツインテール

おはようツインテール『世界にチャイムが鳴り響く』

SNSを中心にネット上のみで活躍をする覆面ヴォーカル・ユニット、さよならポニーテール。その楽曲制作陣が新たに手がけたグループ、おはようツインテールの1stアルバムです。

経歴だけ見るとオタク・カルチャー的ですし、実際そういった土壌で生まれたグループだとは思うんですけど、でもこのアルバムは結構バキバキに音楽的ですよ。

可愛らしいんだけどどこか無機質な歌声、肉感的なVOCALOIDみたいな絶妙なニュアンスなんですけど、これが実にクセになる。程よくアンニュイな感じもあってね。

それでいて音楽的にはシティ・ポップなんですよね。それもキリンジみたいな、ゆるやかで情報量が少ない感じです。演奏もかなりグルーヴィーで有機的というか。

演奏の有機性と歌声の無機性、そのバランスがかなり意図的で見事です。「チルい」が横行する現代日本ですが、これこそチルですよ。シーシャ・バーとかでチル気取ってる大学生を拉致して無理やり聴かせてやりたいくらいいいアルバムです。

第22位 “Nurture”/Porter Robinson

Porter Robinson – Look at the Sky (Official Music Video)

ポーター・ロビンソンの待望の新作がこの位置に。待望つってもこの盤から知った新参なんですが。

一応ダンス・ミュージックみたいなんですが、いわゆる電子音ピコピコで縦ノリって感じでは全くないです。むしろ逆、しっとり聴き入っちゃう世界観が妙味ですね。

アンビエント感も強くて、シンセサイザーや時にピアノなんかが本当にキラキラしてて綺麗なんですよね。トリッキーなビート・メイクもあるんですけど、あくまで飛び道具としてアクセント程度で。

こういうジャンルは滅多に聴いてこなかったんですが、いいもんですね。すごく新鮮で。その新鮮さって私の知識の浅さもありますけど、この作品の持つ爽やかさもかなり大きい要素なんじゃないかと。本当にフレッシュな音楽です。

「寒い朝にコーヒーと共に聴きたい新譜ランキング」だったら絶対1位ですね。というより、これは最近の私のモーニング・ルーチンなんですけど。

第21位 “Jubilee”/Japanese Breakfast

Paprika

朝鮮系アメリカ人のミシェル・ザウナーのソロ・プロジェクトです。上半期ベストの時はまあ大体の人がリストに入れてましたね。妥当です。

ジャンルで分けるならエレクトロ・ポップなんですかね?ベッドルーム・ポップと言ってもいいですけど、DIY精神がいい意味でないというか、かなり緻密で職人気質な音像だと思ってます。それでいてカラフルで、色彩が何度も何度も展開する、万華鏡みたいな楽しさがありますよ。

上半期ベストの時に「次世代型ケイト・ブッシュ」なんて表現をしましたが、我ながら言い得て妙だなと。つまり、すごくアーティスティックな女性性を押し出した作品なんですよね。ロックでもなく、カントリーでもなく、ナチュラルなトンガリ方というか。

そのナチュラルさがメロディの部分に出てきていると私は思うんですよね。肩肘張らない、どこか脱力したような自然体のポップネスが感じられるんです。とはいえ、どの曲も丁寧なサウンドヴィジョンの中で展開されていてルーズさはないんですけど。

さっきも言った通り万華鏡みたいなアルバムなので、聴くたびにピンとくるポイントが変わるのがとても面白い。いいアルバムの条件である「何度聴いても飽きない」というものを間違いなく兼ね備えたタフな作品でもあるんです。

コメント

  1. 名無し より:

    良いランキングですね!
    ところで音楽評論をするならば、「ですます」調よりも「だ、である」調のほうが良いと思うのですが如何でしょう?

    • pierre pierre より:

      コメントありがとうございます。
      少しでもとっつきやすさを、と思い、あえて敬体を使っています。
      常体の方が格調や説得力は増すのでしょうが……今後扱うテーマによって使い分けてみるのもいいかもしれませんね。
      ご指摘ありがとうございます!

タイトルとURLをコピーしました