突然ですが、このブログの現在一番人気の記事って何かご存知ですか?
スマホからご覧の方は画面右下のサイドバーからご覧になれるかと思いますが、「独断と偏見と愛で選ぶ、ビートルズ全アルバムランキング」という企画です。
全人類はビートルズが好きですし(偏見です)、全人類はランキングが好きなので(偏見です)、当然ご愛顧いただける記事になる訳ですが。
ならば今回はこういう企画でどうでしょうか、ザ・ビートルズの全楽曲を私の好みだけでランキング付けしていくというものです。
とはいえ、ビートルズの公式発表楽曲って213曲もあるんですよ。
213位から発表すると、なんかそういうムック本みたいになってしまうので。今回は厳選に厳選を重ねて、上位50曲を発表していこうかなと思います。
50〜41位
第50位 “Can’t Buy Me Love”
第50位に滑り込んだのは『キャント・バイ・ミー・ラヴ』。とは言え名曲尽くしのザ・ビートルズの上位50曲ですからとびきり名曲なんですけどね。
初期のポール・マッカートニーって、どうしたってジョン・レノンの陰に隠れがちじゃないですか。事実この曲が収録された『ハード・デイズ・ナイト』なんてレノンが暴れ散らかしてますしね。
ただ、この曲の「初期ビートルズ」っぽさってたまらなく好きなんですよね。楽しげで陽気で、それでいて実はかなりハードというね。
第49位 “Taxman”
アルバム『リボルバー』は最愛の1枚ですが、そのイントロを担う『タックスマン』も当然のように好きな楽曲です。
ジョージ・ハリスンの厭らしいセンスが出まくりですね、「歩くなら足に税金をかけます」って毒々しすぎるでしょ。楽曲もいやに切れ味があって、すごくエッジィな質感です。
ただこの曲は作曲したハリスン以上にポール・マッカートニーが頑張りまくってますね。ギター・ソロも彼の演奏ですし、何よりベースが半端じゃない。ベース・リフがそもそもいいのに、3回目のヴァースでさらにウネウネ動き出すというんですから、もう変態的ですよ。
第48位 “Hey Bulldog”
『イエロー・サブマリン』に収録されたばっかりに過小評価されている曲だと思います。(『イエロー・サブマリン』が好きな方には申し訳ない物言いですが……)
ハード・ロックでもサイケでもないんですが、なんでしょうねこのとてつもなく硬質な音像は。マッカートニーのベースなんてもう空気読めないレベルでブリッブリですよ。もちろん楽曲の中で調和は取れているんですけど。
思うに、ピアノとギターのリフがキャッチーすぎるんですよね。ザ・ビートルズの類稀なるポップ・センスが、この曲を単にハードにさせない明るさみたいなものを生み出しているんだと。そんなことできるバンドが他にいるのかは知ったことではありませんが。
第47位 “I’m A Loser”
『ビートルズ・フォー・セール』はアルバムとしてはそこまで愛着ないんですけど、あのアルバムの冒頭3曲はとてつもなく好きなんですよね。そのうちの1曲『アイム・ア・ルーザー』です。
当初シングルにする予定だったらしいんですが、そうなっていればバンド初期を代表する楽曲になっていたと個人的には信じているんですよね。マージー・ビートのキャッチーさに、もろディランから影響を受けた内省的な歌詞のマッチングが素晴らしい。
この時期から『ヘルプ!』くらいまでがコーラス・グループとしてのザ・ビートルズの絶頂だと思うんですが、この曲も漏れることなくコーラスが秀逸ですね。マッカートニーの突き抜けて明るい高音がこの曲のうっすらとした暗さをちょうどいい塩梅に仕立てています。
第46位 “Sexy Sadie”
『セクシー・セディ』ほど「隠れた名曲」という表現が似合う楽曲もそうはないと思います。
『サージェント・ペパーズ』でサイケはやり切ったのか、この時期のレノンの作風ってボロボロの精神と朽ち果てない才能が入り混じったすごく危うげなものなんですよね。実際ヘロインにも手を出していたみたいですし。
ただ「ドラッグの女王」をもってしてもジョン・レノンの才能は一切傷つかないんですよね。かつて傾倒したマハリシへの痛烈な皮肉という、レノン節も炸裂した後期レノンの傑作の1つでしょうね。「後期レノンの傑作」がいくつあるのかは考えたくもありませんが。
第45位 “She Said She Said”
アルバム『リボルバー』は個人的にザ・ビートルズの最高傑作なんですけど、かの作品におけるレノン・サイケデリックの最高峰じゃないかと思っています。例のアイツを除いてね。
メロディ自体はとても大きいじゃないですか、空間的な広がりがあって。レノンの気だるげな歌いっぷりも世界観とマッチしているんですけど、もうそのレノンの歌声が尖りまくり、カリスマ発散しまくりです。
ジョン・レノンってロック・ヴォーカリストとして有数の存在ですけど、こういう大きなメロディでこそ彼の毒々しい個性って発揮される気がするんですよね。『愛こそすべて』のコーラスなんかもそうですけど。
第44位 “Blackbird”
今後幾度となく登場するであろう「ポール・マッカートニー+アコギ=最強」論の重要な証拠、『ブラックバード』です。
アコギと足踏みと歌声しかないんですよこの曲。冷静に考えればものすごく簡素な作りじゃないですか。でもメロディの質だけで、如何なるゴージャスなアレンジにも負けない強度を獲得しちゃうってのがとんでもないですよね。
こういう曲はジョン・レノンには似合わないんでしょうね、彼がやるとどうしたってカッコよくなってしまう。この曲はどこまでも甘く優しいからこそ名曲なんです。
第43位 “Being For The Benefit Of Mr. Kite!”
「曲単位での精彩に欠ける」という批評もよく目にする『サージェント・ペパーズ』ですけど、この曲はすこぶる名曲ですね。個人的には『ルーシー〜』より断然コッチです。
1800年代のサーカスのポスターをモチーフにしたらしいこの曲、見事なサイケデリック・ロックです。レノンは「おがくずの匂いのするサウンド」を要求したらしいんですが、なんでしょうね「おがくずの匂いのするサウンド」って。ただ言われてみるとそんな効果もある風に感じられます。
同じサイケ・アルバムでも『リボルバー』はモノクロ、『サージェント・ペパーズ』はカラフル、そんなイメージがあるんですが、そのカラフルなアルバムのトーンに溶け込む幻惑が素晴らしい。もっと注目されて然るべき1曲だと思っています。
第42位 “Girl”
『ガール』と『ミッシェル』はよく対にして比較されますが、私はどちらか1つとなるとこの『ガール』派です。『ミッシェル』も大好きなんですけどね。
この如何にも甘ったるいアコースティック・バラードとジョン・レノンの気だるげな歌声の相性ったらないですよ。こういう情感たっぷりのバラードってレノンには珍しい作風なんですけど、この声とこの作曲センスですから。しっかり名曲に仕上げてきます。
ブリッジで畳み掛けるように展開し、コーラスも盛り上がったところでスッとサビに戻る瞬間がすごく好きなんですよね。さりげないですけどこういうアレンジってすごくセンスがいるんだろうなぁと。
第41位 “Eleanor Rigby”
「マッカートニーの卑怯なメロディ」シリーズです。悪口じゃないですよ、でもこんな曲卑怯じゃないですか。
『イエスタデイ』を発展させてクラシックのサウンドを取り入れた楽曲な訳ですが、サウンドこそバロック的なもののこの陰惨っぷりったらないですね。マッカートニーの楽曲の中なら群を抜いてダークだと思います。
そういう冷たい光沢を放つからこそ、メロディのとんでもなさが引き立っているんですが。サウンドとあいまってすごくドラマチックに響きますよね。まるでモノクロ映画のような世界観に引き込まれてしまいます。音楽でそれを表現するの、はっきり言って異常な才能ですよ。
40〜31位
第40位 “Ticket To Ride”
あまりビートルズを好かない知人の唯一のお気に入りがこの曲らしいです。『涙の乗車券』ですね。
「世界初のヘヴィ・メタル」とはレノン本人の談ですが、それは流石に言い過ぎというのが私の見解です。ただ、当時のポップスとしては相当凝ったことやってるんですよね。ドラムのパターンにしろ見事なタンバリンにしろ。そう、この曲のMVPはリンゴ・スターじゃないかと個人的には思っています。
『ヘルプ!』にしろ『恋のアドバイス』にしろ、この時期からザ・ビートルズのサウンドって一気に深化していくと感じているんですけど、その意味ではすごく象徴的で、すごく革新的な楽曲じゃないでしょうか。
第39位 “I Will”
「口ベース」でも有名な名曲です。『ホワイト・アルバム』の縦横無尽の作品像の中で、案外こういうシンプルな曲って大事ですよね。
こういう、アコギ主体のメロディ一本勝負の楽曲ってポールの典型的作品像ですけど、それが毎度毎度ハズレなしってのはどういうことなんでしょう。この純度の高さには呆れてしまいます。
『アイ・ウィル』みたいなサラッとした美メロの楽曲を書かせれば、ポール・マッカートニーの右に出る者はいないでしょうね。
第38位 “The Inner Light”
ジョージ・ハリスンのインド趣味、その集大成ですね。『ジ・インナー・ライト』です。
シングルなのでオリジナル・アルバム未収録、そして『青盤』にも選出されていないという不遇ぶりですけど、ジョージの曲でも屈指の名作だと思っています。
インドのテイストはそれはそれは濃密なんですけど、しっかりポップスに落とし込むことに成功してますよね。「インド曲は捨て曲」みたいなこと言う分からず屋はこの曲を聴き直してほしいもんです。
第37位 “The Fool On The Hill”
これも「マッカートニーの卑怯なメロディ」シリーズの一環ですね。そりゃこんなメロディ思いつけるなら誰も苦労しないって。
ピアノとリコーダーでとびきり繊細にサウンドスケープを構築してるのがサイケ期にあってシンプルでいいですよね。間奏のフルートで叙情性を強める展開も技ありです。
木管楽器をここまでフィーチャーしたビートルズの楽曲って他にないんですよ。だから典型的なバラードの枠組みにはあるけれど、決して埋没することなく、数多ある名曲の中でしっかり個性を発揮しています。そういう「似てる楽曲がない」というのも彼らの素晴らしさの1つでしょうね。
第36位 “Yer Blues”
1960年代後半にロック・シーンで巻き起こったブルースへの接近、それに対するロック・ゴッドことジョン・レノンなりの返答がこの曲ですね。
「俺は独りぼっちさ 死んでしまいたい」なんて絶叫するのはブルースにしたって過激な嘆きですが、そこはナイーヴな精神性を持つレノンらしさです。おまけに3/4拍子というブルースらしからぬリズムですしね。
「俺のロックンロールなんてヘドが出るね」と吐き捨てておきながら、そのタイミングでテンポ・アップしブルースからロックンロールにギア・チェンジするところも皮肉が効いてます。どこまでいってもロック・ヒーローなんですよねジョン・レノンって。
第35位 “And Your Bird Can Sing”
この曲、作曲したレノンは「捨て曲」と言って憚らないようですが私は全くそうは思いません。むしろ『リボルバー』の中でもかなり優れた部類です。
マッカートニーとハリスンのツイン・リードによるギター・リフ、これがまず最高じゃないですか。かのアルバムにおけるレノンは徹底してサイケデリック・ロックに耽溺していますが、この曲は唯一の例外。素晴らしく爽やかなロック・チューンですよ。
マッカートニーのハモりマニアである私からすると、ギター・ソロ後のヴァースでだけ登場する至極の上ハモが大好きです。この秘蔵のハーモニーを出し惜しみして曲の終盤でサラリと展開するセンスがとてつもないと思いませんか?毎回やるとくどいでしょうけど、ある一瞬においてのみ輝く、そのタイミングが如才ないんです。
第34位 “No Reply”
『フォー・セール』の1曲目です。ポップスの聖典みたいなビートルズの楽曲群において、こんなに滋味豊かな名曲もそうはないでしょうね。
歌声にしろ歌詞にしろ、メロディにしろ楽曲全体のムードにしろ、晩秋を思わせる枯れ方ですよね。その枯れっぷりは絶対にボブ・ディランの影響なんですけど、そこによりロック的な嘆きを追加できるのがジョン・レノンの才能です。
このアルバムは全編通してレノンの歌声が最高なんですが、この曲でも冴え渡っていますね。歌唱力うんぬんというより、もう声質で押し切っちゃうような説得力。ハイ・トーンでもソウルフルでもなく、ただただロックンローラーな歌声です。これで内省的な詩世界に飛び込んでいくんですからその表現力は最早異次元。
第33位 “Happiness Is A Warm Gun”
ビートルズおじさん、それもレノン原理主義派の方はこの曲をとかく好きなイメージが勝手にあります。いや私も大好きなんですけどね。
3分に満たない楽曲にもかかわらず不穏さを纏ってめまぐるしく展開し、いきなり底抜けにサウンドスケープが開けるというのが如何にもドラッグ・ソング的です。ポリリズムのまとめ上げ方もすごく気持ちよくてね、本当に濃密な楽曲です。
余談ですけど、『青盤』に選出された『ホワイト・アルバム』の曲は本当に納得がいかないんですよね。この曲もそうだし、『ヘルター・スケルター』だって未収録でしょ?『オブラディ・オブラダ』なんて入れてる余裕あるなら……おっと、失言でした。
第32位 “Got To Get You Into My Life”
一聴するだにポール・マッカートニーとわかる底抜けの明るさがいいですね。「ブラス・ロックやってみました」ってな具合の楽曲です。
で、「やってみました」で済ましていい完成度じゃないんですよ。ものすごくサラッとやってますけど、ここまでソウルフルに、そしてキャッチーに成立させちゃうの凄いと思います。ブラック・ミュージックの影響をしっかり「ザ・ビートルズ」に落とし込むのが流石の才能。
ソウルフルなロック・ナンバーって実はマッカートニーお得意のスタイルですけど、そこにブラスを入れちゃっても難なく名曲にしてしまう。いやあズルイですね。アルバム『リボルバー』でもかなり好きな部類の曲です。
第31位 “Yesterday”
この曲がこの位置になっちゃう事実に我ながら青ざめています。世紀の名曲、『イエスタデイ』が第31位。
正直なところ、ザ・ビートルズに最初にハマった時にこの辺の大名曲は腐る程聴いてしまったので正直かつてほどの愛着がないというね。長年寄り添った老夫婦みたいな、好きで当たり前なので取り立てて上位にもってくるまでもないというか……わかりにくいですか?
にしたってこのメロディの純度は異常ですよ。世界で一番カバーされた曲ってことは、誰もこの曲の旋律に手出しできないってことですからね。語るまでもなく、ポピュラー音楽史の金字塔でしょう。
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