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ピエールの選ぶ「オススメ新譜10選」2024年2月編

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ご無沙汰です、ピエールでございます。今回は月間新譜レコメンド、2024年2月編です。バックナンバーはこちらから。

2月編から早速大遅刻をかましてしまいましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。ただいま、2月編と3月編を同時に書くという我ながらよくわからない作業をしております。今年いいリリースが多くて大変なんですよ。

この2月編に関してもけっこうベタなラインナップになってしまった感が否めないんですが、10枚という枠の中で順当に選ぶならこんな感じかな。今回も今回とて泣く泣く選外になったものも多いですけど、その分素晴らしい10作品をチョイスした自負がございます。それでは張り切ってどうぞ。

“Where We’ve Been, Where We Go From Here”/Friko

Friko – Where We’ve Been (Official Video)

まあ、まずはこれでしょうね。シカゴから彗星の如く現れた、Frikoのデビュー作“Where We’ve Been, Where We Go From Here”。リリースするや否や日本の音楽ファンはFriko一色と言っていい話題ぶりでしたね。かくいう私もそこに大いに加担した1人ではありますが。

で、これに関してはディスク・レビューという形でこの前散々っぱら語らせていただきました。それにこれ言っちゃこの企画の趣旨が崩壊しますが、流石に弊ブログにお越しの方でこれ聴いてないって人はほぼいないでしょうし。なので詳しくは↓参照ということで。

フジロック出演決定も嬉しかったですよね、リリースからものの1ヶ月で大抜擢ですよ。SMASHの本気を見ましたし、SNSで声を挙げることのポジティヴな意味を久方ぶりに体験できた気がします。やっぱり話題にするって無駄じゃないんだなぁと。おそらく日本で一番Friko関連のツイートが伸びた人間の自負はあるんですけど、コンマ何パーセントくらいは貢献できたんじゃないでしょうか。

“Prelude To Ecstasy”/The Last Dinner Party

The Last Dinner Party – Caesar on a TV Screen

Frikoがとんでもねえ作品を出すまでは、この作品を真っ先に取り上げるつもりでした。2024年で最もホットなバンドの1つ、The Last Dinner Party待望の1st“Prelude To Ecstasy”。全英チャートでも堂々の首位を獲得した話題作です。

私がいつも参考にさせてもらってる某ライター氏(勝手に名前を出すのは控えますけど、バレバレな気がしないでもないです笑)が、もう去年の時点からTLDPを大プッシュしてたんですよ。ただ、「アルバムも出してない段階でそこまで持ち上げられてもなぁ……」なんて斜に構えて見ていた部分が正直あって。ただどうです、この作品を聴かされてはそのプッシュにも納得するしかありません。Queenがルーツである私にとって、ロックの原体験を思い出させるような1枚でしたから。

ディズニー映画かってくらいに壮大でメルヘンチックなオーケストレーションで開幕、そこからの楽曲もキャッチーではあるんですけど2024年的にはあまりにトゥー・マッチなゴージャスさに溢れていてね。そこが私の愛するQueenの足し算の美学に共通しています。ただ女性的なエレガンスコケティッシュな官能という意味では、Kate BushからFlorence Welchへと繋がっていく文脈の先にいるような気もしますし、そうした世界観の構築に作為的なものを感じる、ニュー・カマーらしからぬクレヴァーなアルバムでもあるんですよね。

そうだ、Måneskinが出てきた時もQueenを思い出す方が一定数いましたよね。確かにビジュアルの華という意味ではそうかもしれませんが、ただ彼らはサウンドの上ではガレージ・リバイバルの流れにある硬派なギター・ロックでしょ?ただTLDPに関しては、外見といい音楽性といい、1970年代のイギリスから飛び出してきたような時代錯誤甚だしい愛嬌があるんですよ。この作品がしっかりメディアにも注目されて、かつセールスも上々、すごく喜ばしい傾向だと思います。

“Vultures 1″/Kanye West & Ty Dolla $ign

¥$, Ye, Ty Dolla $ign – Vultures (Havoc Version) feat. Bump J & Lil Durk

2023年はなんとなくヒップホップが寂しかった印象もあったんですが、今年に関してはまずこれで一安心という感じです。あのKanye WestTy Dolla $ignとタッグを組んでリリースした“Vultures 1”。Kanye Westはここしばらく音楽と関係ない話題でばかり目にしていましたから、こうして新譜のレコメンドの中で触れることができるのはすごく嬉しいことです。

ビッグ・ネームのリリースだからとりあえず1枠割いた、そんなつもりは毛頭ございません。掛け値なく素晴らしいアルバムでしたからね。直近の”DONDA”、そして続編にあたる”DONDA 2″がお世辞にもいい作品とは言えない、あまりに不親切といいますか、アーティストとして迷子になっている感も否めないものだったところからまだこんなのを作れるのかと感嘆しました。しっかりとヒップホップ的な意味でのポップ・センスというものを了解した、丁寧な作品というのが最初の印象ですね。

このポップ・センスというのは、チャート意識が露骨なトラップ・ビートだとかもっと単純なポップ・ラップだとか、そういう表層的なものではないんですよ。言い換えるならば、トラックを構成する音の1粒1粒を精査し、徹底的に磨き上げ、これ以上ないレベルまで聴き心地のよい音としての上質さにこだわっている、そういうことで。近作で見られたゴスペルの要素、それがこれまではやたらとスピリチュアルで我儘な方向に作用していたところだったんですが、今回は見事に作品の開けたスケール感に寄与していますし、そのダイナミズムにはすごく普遍的なものを感じます。加えて、10’sの彼が進んでいた内向性も確かに表現されていて。ある種総決算とも言えるような、圧巻の内容です。

1月の新譜レコメンドがあまりにもロック一辺倒だったので、ちょっと昨年に続いて不安ではあったんですよね。そりゃ私も根っこはロック小僧ですからいいことでもあるんですけど、扱うジャンルが偏るのはこの企画の趣旨からいってどうかなと。ただ、流石はKanye West、無事その不安を杞憂に終わらせてくれました。今回は枠の関係で取り上げないんですけど、UK女性ラッパーのLittle Simzも素晴らしいEPを発表していますし、今年はヒップホップも盛り上がっていくといいですね。

“Scrapyard”/Quadeca

TEXAS BLUE

Kanye Westに続いてヒップホップ……と言っていいんでしょうか?少なくとも私の感性はこの作品をヒップホップ的には受け止めていないんですけど、ひとまずはわかりやすくそういうジャンルで括っておきましょう。Quadeca“Scrapyard”です。

2022年に発表した前作“I Didn’t Mean Haunt You”の時点でチェックはしていましたし、コアなリスナーを中心に話題になっていた印象も強い彼ですが、今作でさらに一段ジャンプ・アップしたような印象。なにせAlbum Of The Yearでユーザー・レーティングが現在1位と、すこぶる高評価です。それも納得の出来栄えですね。ストリングスやピアノの高尚さから、ジャミングのかかったような生々しい電子音までを横断する、フォークトロニカ的トラックは実に見事。

で、冒頭でヒップホップ的に捉えてはいないなんて話をしましたけど、それはこのトラックへの執心が理由の1つ。そこに加えて、ヒップホップである必然性をQuadeca自身がそこまで感じてなさそうなんですよ。楽曲によってはかなりメロディックなラインが目立ったり、あるいはトラックの中にラップが埋没していたり、声そのものに注目させるプロダクションになっていないんです。音の1粒1粒が渾然一体となって迫り来る、そういう采配になっているが故の印象でしょうね。

そういう点が、本作を定型としてのヒップホップではない、聴いていてワクワクさせられるような作品に仕上げているんではないかと思っています。私のヒップホップに対する嗜好ってかなりソウル・フィーリング一辺倒といいますか、古き良き黒さを求めてしまう傾向にある自覚はあったんですが、そういうアンテナの持ち主であっても容易くノック・アウトさせられる作品でした。

“What Now”/Brittany Howard

Brittany Howard – I Don't (Lyric Video)

じゃあその古き良き黒さみたいなものを2月はどこから摂取したのかというと、それはAlabama Shakesのフロント・ウーマン、Brittany Howardの2ndソロ“What Now”ということになります。ソロ1st”Jaime”も好評でしたが、そこに続くに足る素晴らしいブラックネスでしたね。

ふくよかなルーツ志向とインディー・ロックの調和というのがAlabama Shakesの強みだと思うんですけど、この作品にはもっと幅広い嗜好が折り重なっています。インディー・ロックの内向性は言わずもがなとして、微かにエレクトロニカの彩色もありますし、フォーキーな侘しさも。バンド・スタイルがある意味では要求してしまう制約から解放された、ソロ・ワークならではの自在な音楽性ですね。それもあってAlabama Shakesの活動が停滞してしまっているのはちょっと悲しいですが……

そしてとりわけ私が嬉しかったのは、サイケデリック・ソウルのエッセンスですね。リラックスしたおおらかさの中に、しっかりと不穏さや幻惑の気配がある。またこれが彼女のアーシーな歌声とすごく相性がいいんです。サウンド自体は結構現代的でクリアなんですけど、そのクラシカルな響きが歌唱や作曲から堪能できるというのがすごく上質で。

そう、単純に作曲もすごくいいんだなこの作品。1曲1曲に力強さがあって、ポップスとして独立しています。そのうえで作風として統一感があるおかげで、散漫な印象もそこまで受けないですから。この作品をR&B的に聴くのか、サイケ的に聴くのか、インディー・ロック的に聴くのか。その人の好みによって受信の仕方が変わってくるアルバムと言えるかもしれませんね。それだけ懐の深い、多くの音楽ファンにリーチする1枚だと思います。

“Two Star & The Dream Police”/Mk.gee

Mk gee – I Want (Official Audio)

これはかなりXでも反応されていた印象のある1枚ですね、なんならコアな方々はFrikoよりこっちだろみたいな態度を取っていたような気もします。アメリカのシンガー・ソングライター、Mk.geeの1stフル・レングス“Two Star & The Dream Police”

これまた不思議な聴き心地のアルバムですよ。サウンドに注目すれば、Frank Ocean以降のベッドルーム・ポップに紐づけられる性質だとは思います。アブストラクトに波打ちながら、素晴らしい音響感覚によってツボを外さない結構なお手前。彼自身マルチ・プレイヤーのようなんですが、特筆すべきはギターのサウンドでしょうか。エフェクティヴなんですけどメロウでノスタルジック、作品全体のミステリアスなムードに奉仕する鮮やかな音色です。

でもそこに乗っかるメロディがモロに80’sポップスを参照している、ここがもう冴え渡ってますよ。XではThe Blue Nileとの類似を指摘する声も目立ちましたけど、個人的には全盛期のPrinceがしばしば見せたメロディックなキャラクターがすごく重なりますね。ちょっと突き放すようで、かつ良心的な絶妙さ。まあ、さっき言及したFrank OceanだってPrinceの樹形図に連なるアーティストの一角ではありますから、そういう意味でも21世紀において日々拡大するPrinceファミリーの系譜ではあるのかもしれません。

ただ、ベッドルーム・ポップにしろ80’sリバイバルにしろ、別段目新しいアプローチではないじゃないですか。そこへMk.geeは卓越した掛け算のセンスによって新たな音像を構築してきました。目立って大きな音楽性のトレンドが生まれにくくなっている昨今、本作でなされているようなブレンドのスキルというのは重要なテーマになるのかもしれません。私個人の年間ベストでも必ずや取り上げたいですし、来る6年後のディケイド・ベストでもリマインドされるような1枚になり得るポテンシャルを感じますね。

“Daniel”/Real Estate

Real Estate – Water Underground (Official Video)

アメリカはニュー・ジャージー出身のインディー・バンド、Real Estateの3年ぶりとなった“Daniel”。勝手に新人バンドのイメージでずっといましたけど、今年で結成15周年となかなかのベテランになりつつあります。実際ベテランらしいといいますか、上質でこなれたギター・ポップを届けてくれましたね。

一聴するだに、これぞインディー・ギター・ポップって感じのサウンドですよね。アルペジオを主体とした爽やかなギターに牧歌的なメロディ、全体に広がる瑞々しさ。その中で特徴的なのが、カントリーのフレーヴァーがくっきり感じられる点。レコーディングはカントリーの聖地ナッシュビルで敢行されたようですし、プロデューサーにはKacey Musgravesを手掛けたDaniel Tashianを迎えています。そうした狙いは功を奏していますよね、サウンドにもいい塩梅の渇きがあって、近年のカントリー・ブームにしっかり対応した仕上がりになっています。

そうそう、本作にかかるインタビューなんかを読んでるとしばしば言及されていたのが、R.E.M.への接近。これ、すごく腑に落ちました。本作に感じるうっかりすると涙ぐんでしまいそうな温かいエモーション、“Automatic For The People”的と言われるとしっくりくるでしょ?しかもそこにアコースティック色を強めることで、70’sのSSWを思わせるオールド・ファッションな響きまでを生み出している。クライマックスの“You Are Here”でスケールがぐっと大きくなる展開なんて、如何にもアルバム・クラシックってな風格です。

冒頭に紹介したFrikoとTLDP、これがどっちも目立つアルバムだっただけに(話題性という点でも、音楽性という意味でも)、このこじんまりとした名盤がいっそう沁みるじゃないですか。こういうインディー・ロック、取り立てて話題に挙げられることも多くはないでしょうけどやっぱり必要ですね。ほっと一息つけるような、すごくフレンドリーな1枚になっていると思います。

“Girl With No Face”/Allie X

Allie X – Weird World (Visualizer)

うん、今回はロック以外からも選出できて満足です。あくまで気に入ったもの上から10枚ってだけで、別にそこに忖度はしてないつもりなんですけどね。カナダの女性シンガー、Allie Xの3rd“Girl With No Face”です。

ジャンルとしてはシンセ・ポップなんですけど、まずユニークなのがそのシンセサイザーの音使いですよね。言葉を選ばなければ、ものすごく古臭いKraftwerkか初期YMOかみたいな質感ですからね。それにビートにしたってすごく80’s的で、こちらも思ったまま表現するならギッタンバッタンした80’sダンス・ポップ調。そりゃYMOもCyndi Lauperも好きですし、80’s好きからすると好意的に受け止めることもできるんですけど、流石に新譜として聴くにはちょっとくたびれそうだな……というのが率直な印象でした。

ところがどっこい、この作品に関しては聴いていてそこまで疲れない。それはおそらく、メロディやサウンドスケープにしっかりとを感じるからだと思っていて。ゴシック・ロック的と言い換えてもいいでしょう。曲によってはかなりヘヴィなギターが鳴ってもいますし、ヒステリックな金切り声をあげる瞬間があったりと、オルタナティヴ的なダイナミズムがある。そこがこの古臭いシンセ・サウンドをどういう訳だか鮮やかに、濃厚に聴かせてくれています。

いい意味ですごくコッテリした聴き味なので、もしかしたら聴く人は選ぶ作品なのかなとも思うんですよ。深遠なる魅力が!みたいな語り口の作品ではない、どこまでいっても80’sのバタバタ感を強烈に感じる類いのアルバムですから。ただ、さっきのReal Estateにも感じたことなんですけど、こういうキャッチーさって意識的に評価していかないとついつい逆張りしてしまいたくなりますから。ポップスが好きだという自覚のある方は是非。間違いなく太鼓判を押せる1枚です。

“PHASOR”/Helado Negro

Helado Negro – Wish You Could Be Here (Official Visualiser)

ラテン系アメリカ人、Helado NegroことRoberto Carlos Lange“PHASOR”。Allie Xと並んで今回のエレクトロ枠、同時にワールド・ミュージック枠でもあり、ジャズ枠と言ってもいいかもしれませんね。それくらい広大なサウンド・ヴィジョンを持つ1枚ですよ。

シンセサイザーによるアンビエンスな世界観が軸となっている作品ではあるんですが、その音色センス以上にグルーヴの面白さに私は心惹かれますね。ややラテン・チックに細かく刻まれるドラムと、気品と妖艶さを纏ったベース・ライン。このコンビネーションが織り成す快感は、ミニマムなネオ・ソウルのようでもあり、現代ジャズのようでもあります。このオーガニックな質感があるからこそ、エレクトロニクスの部分がより効いてくるんですけどね。

それと冒頭にも触れましたけど、扱うスタイルがかなり広範にわたっていて。たとえば一口にポップと言っても“I Just Want To Wake Up With You”は腰の据わったソフィスティ・ポップですけど、“Wish You Could Be Here”なんかはずっと未来的で軽妙でしょ?それにジャジーなものからインディー・フォーク調のものまで、作曲的な手数は見事なもんです。ただ、そこに繰り返しですけど静謐なエレクトロ、それと彼の淋しげな歌声がそっと寄り添うことでアルバムとしてしっかり落ち着いたものになっています。

おそらく今回取り上げた10枚の中では一番複雑な作品なのかなと思うんですけど、その心地よさって別に聴き手を選ぶようなものではない気がするんですよね。ジャズやネオ・ソウル、ラテンみたいなテイストって前提知識がなくても感覚的に気持ちよいですし。色々ややこしいことやってるけどすっと心に落とし込める、その配慮も本作の優れた点の1つなんじゃないでしょうか。

“Your Favorite Things”/柴田聡子

Your Favorite Things

邦楽からは順当に彼女を紹介しましょう。柴田聡子“Your Favorite Things”。前作“ぼちぼち銀河”2022年の年間ベストにも選出した力作でしたが、こういう進化をするのか!と思わず膝を打つ1枚でした。

元からネオ・ソウル以降のブラック・ミュージックに対しての感度は高かったと思うんですけど、本作のサウンド・アプローチの鋭さは天晴れです。余分な音を一切鳴らさない、すごくコンパクトなアンサンブルだというのにその余韻が素晴らしくてね。それもそのはず、共同プロデュースには岡田拓郎の名前がありますから。彼も彼で2022年に“Betsu no jikan”という音響的名盤を発表していますが、その冴えを盟友である柴田聡子に還元した成果と言えそうです。

彼女の才能の伸びやかさを遺憾なく発揮した、溌溂とした名作“ぼちぼち銀河”からのこのイメージ・チェンジ、なかなか大胆ですよね。本作はずいぶんと神妙な面持ちで、サウンドも密やかに、そして神経質的に紡がれている印象です。ここ、リスナーの間でどちらが好みかは意見がわかれそうではあります。かく言う私も、“ぼちぼち銀河”の方がしっくりくる部分は大きいんですよ。わけても、彼女の愛嬌のある歌声が活きているのは前作だと思いますね。

ただ、そこの好みを差し引いても本作のサウンドの煮詰め方は手放しに称賛できてしまいます。ちょっと空想的ですけど、次の彼女の作品がリリースされるとより真価を発揮するような気がするんですよね。いわば、本作は彼女のカタログにおける”OK Computer”。あれもそれ単体で傑作ですけど、”Kid A”に至るまでの道を知ることでより理解が深まるでしょ?いったんいい作品という評価を下しつつこの才媛の動向を見守っていきたい、そう思える作品でした。

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