ご無沙汰してます。2022年も早いものでもう半分が終わってしまいました。この1月サボり散らかしていたこのブログですが、これは流石にやらにゃいかんでしょう。
そう、上半期ベストですね。
昨年に引き続き、今年もこのランキングに挑戦していきます。なんなら今年から「オススメ新譜5選」なんて企画をほとんど毎週投稿してたので、そっから更に厳選した名作をご紹介していくことになりますね。
年末にはベスト50くらいを発表予定なので(私の気力が持てばTOP100にしたいんですけど、100枚のランキングを個人で作ることのべらぼうなしんどさはこの企画で身に染みました)、今回はあくまで前哨戦ってとこですか。とはいえ、ベスト30ですから結構なボリュームになるんじゃないかな。
始めに断っておくと、基本的にランキングの選考基準は「私が好きかどうか」の一点のみです。各メディアの動向とかはある程度知った上で無視できるところは全部無視していきますのでどうぞよしなに。まあ根っこがミーハーなので割と順当なランキングにはなると思うんですけどね……
さあ、前置きもそこそこに見ていきましょう。私ピエールが選ぶ2022年上半期リリースのアルバム・ランキング、どうぞ!
- 30〜21位
- 第30位 “Whatever The Weather”/Whatever The Weather
- 第29位 “Cure The Jones”/Mamas Gun
- 第28位 “Everything Was Forever”/Sea Power
- 第27位 ”Topical Dancer”/Charlotte Adigéry & Bolis Pupul
- 第26位 “HARMONY”/SPOILMAN
- 第25位 “MY REVOLUTION”/ゆうらん船
- 第24位 “Living Isn’t Easy”/Robocobra Quartet
- 第23位 ”Dance Fever”/Florence + The Machine
- 第22位 “Emotional Eternal”/Melody’s Echo Chamber
- 第21位 “PPONG”/250
30〜21位
第30位 “Whatever The Weather”/Whatever The Weather
アンビエントだったりエレクトロニカだったりって、正直なところ得意ではないし知識もほぼほぼないんですけど、だからこそ感覚的にいいと思える作品がたまに見つかるんですよ。このWhatever The Weatherのセルフ・タイトル作はそんな1枚です。
アルバム・ジャケットが示す、厳かで凍てついた自然の美。それを巧みに描き出した作品ですよね。紡がれる電子音は冬の朝の陽光のような絶妙な温度感を放っています。それに、ビートの効いた楽曲は強烈なフックを生んでいて、単なる静謐なアンビエントにとどまらない力強さだってあります。
トラックのタイトルはすべて摂氏温度から取られているんですけど、そういう仕掛けにも本作が温度感をキーにした作品であることが窺えますよね。実際、そこのところの表現が面白いアルバムですし。どうにも小難しい印象のあるジャンルですけど、ただただ美しいサウンドを浴びるだけの作品、そう理解しちゃっていいと思います。
第29位 “Cure The Jones”/Mamas Gun
これを新譜のオススメとして挙げるのはどうかとも思ってこの位置なんですが、かなりお気に入りの1枚です。イギリスのソウル・グループ、Mamas Gunの“Cure The Jones”。
最初に書いた懸念がどういうことかと言いますとね、このアルバムで聴くことのできる音楽性ってもうまるっきりクラシックなんですよ。モータウンやサザン・ソウルといった、ソウル/R&Bの最も輝かしい時代のサウンドが美味しいところだけ切り取って保存されているんです。そりゃ大好物ですけど、新譜としての鮮やかさとはちょっと趣が違うのも事実な訳で。
ただ、ここまでソウル・ミュージックを俯瞰して贅沢に吸収した作品の完成度は折り紙付きなんですよ。最低限のバランスはこのランキングでも保ちたいんですが、とはいえこのアルバムを無視できるほど私は捻くれてません。ソウル・ファンならば絶対に満足できる1枚ですからね。
第28位 “Everything Was Forever”/Sea Power
これ、あんまり話題になってないですけどすごくいいアルバムだと思うんですよね。イギリスのオルタナティヴ・バンド、Sea Powerの“Everything Was Forever”です。
壮大なんだけれどもウェットな内向性を秘めていて、その塩梅が実にUKロック的です。ポストパンクな瞬間もあるんですけど、昨年騒がれたフリーキーなバンド群と同質というよりは、それこそ初期のU2のような古典的ポストパンクなんですよ。捻くれてはいるんですけどダイナミックで力強くて、すごく王道のロックを感じます。
少なくとも日本人好みのロックでは間違いなくあるはずなんですけどね……「オススメ新譜5選」でも触れた作品ですけど、あらためてレコメンドしたい1枚です。
第27位 ”Topical Dancer”/Charlotte Adigéry & Bolis Pupul
これ、「オススメ新譜5選」では取りこぼしてしまった作品なんですよ。割とリリース段階で注目されてたはずなんですけどね……ベルギーのアーティスト、Charlotte AdigéryとBolis Pupulのコラボレート作品、”Topical Dancer”です。
跳ねたビートが生み出すグルーヴ感なんかは、ダンス・ミュージックではあるんです。ただ不思議なことに、どうにも淡々としているというか。単にエレクトロ的だからでは済まされない温度感です。トーキング・ヘッズや、あるいはプリンスなんかがインスピレーションらしいんですけど、ああいう奇妙でヘンテコなファンクネスに通ずる音楽性ですね。
ただ、淡々としてるとは言ったものの、アルバムの表情自体はかなり豊かで。ユニークなアイデアも沢山目立ちますし、その中にヨーロピアンな気品みたいなものが感じられるのがいいですよね。すごくクセになる、いい意味で得体の知れないアルバムではないかと。
第26位 “HARMONY”/SPOILMAN
まずもってマスにはリーチしない作品ですし、する気がまるでないんでしょうけど、この作品を見落とすのはあまりにもったいないです。SPOILMANの“HARMONY”。
リズムがとにかくヘヴィで、ベースなんてもう邪悪なレベルです。その上を発狂したヴォーカルが駆けずり回り、凶暴なまでにエッジィなギターがサウンドを塗りつぶす……聴いていて戦慄すら覚える、圧巻の気迫。この緊張感がアルバム全体で1秒たりとも緩まないというのはなかなかどうしてえげつないですよ。
ただ、意外にもしっかりリフやフックが目立っていますし、リズムがどっしりとこの壊滅的なアンサンブルを支えているおかげで、奇妙なまとまりや聴きやすさも覚えてしまうのが抜け目ない。マス・ロックを経由したブラック・サバスのような作品です。
第25位 “MY REVOLUTION”/ゆうらん船
邦楽にも藤井風や中村佳穂、それから山下達郎と注目のリリースが多かった上半期ですが、心に残ったのはえてしてこういうマイナーな存在だったりするんですよ。ロック・バンド、ゆうらん船の”MY REVOLUTION”です。
フィッシュマンズの「世田谷3部作」を連想させる、とびきりドリーミーで上質なサイケデリア。これが新譜としていきなりドロップされたんですから驚きです。さらに、このアルバムはロック・バンドとしてとても素直なんですよね。歌が作品の真ん中にずっとあるし、そのメロディも素朴かつ秀逸なものばかり。
陶酔感があって、手堅くまとめあげられ、いい意味でサラリと聴けてしまう軽妙さがある。これって、すごくクラシカルな「ロック・アルバム」としての理想型じゃないですか。そういう性質を持った1枚ですし、すごく今後に期待が持てるバンドだと思います。
第24位 “Living Isn’t Easy”/Robocobra Quartet
近年活況を見せるポストパンクのニュー・カマー、今年であればYard Actの1stも面白かったですし、下半期にはblack midiの新譜も予定されてますが、個人的に一番の発見はこのRobocobra Quartetの“Living Isn’t Easy”でした。
ギター・レスでベースとドラムが2人、上物はサックスというもうキレッキレの編成から繰り出されるサウンドが実に独自で。そのダークさはポストパンクでもありつつ、ある種ジャズ的にも楽しめる構築の妙がありますよね。無駄を削ぎ落とした……という訳でもなく、出るところはしっかり出る、メリハリの効いたアンサンブルが堪らない1枚です。
そこまでロックの要素が強い作品でもないですし、ユニークではあるものの聴きにくさを誘うフリーキーさがある訳でもないので、近年のポストパンクの盛り上がりにイマイチついていけない……という方にも自信を持ってオススメできる作品ですね。
第23位 ”Dance Fever”/Florence + The Machine
上半期で最も不遇なアルバムはコレっきゃないですね。Florence + The Machineの”Dance Fever”です。
不遇というのは、Kendrick LamarとThe Smileという、今年有数の話題作とリリースがダダ被りしたんですよ。いくら現行シーンで重要な存在たる彼女をもってしても、流石に注目度では敵わなかったというか。ただ、70年代のロックにすら接続可能なダイナミックなスケール感を、現代的な感性をもって表現した本作、聴けば聴くほど名作なんですよ。
彼女は冒頭で「私は王だ」と歌ってのけるんですけど、いやはや豪語するだけのことはあります。女性的な清冽さにしても、ゴージャスで厳かなサウンドスケープにしても、思わず平伏したくなるような強靭な名盤に仕上がっていますからね。今作、彼女のキャリア・ハイと言って差し支えないですよ。
第22位 “Emotional Eternal”/Melody’s Echo Chamber
フランスのドリーム・ポップ・バンド、Melody’s Echo Chamberの“Emotional Eternal”。話題性というよりは、その辺にいるロートルな音楽ファンとして支持したい1枚です。
週間レコメンドの方でもCocteau Twinsとの類似を指摘したんですが、改めて聴き直してもその感想は変わらないですね。幻想的で、美しい掠れ方をした耽美的なアルバムです。女性ヴォーカルの澄み切った気品もいいじゃないですか。ただ、その上で有機的なバンド・アンサンブルでもきっちり聴かせてくれる作品なのがもうツボを抑えすぎです。ベースの主張なんて堪らないですからね。
00’s以降のドリーム・ポップとしてではなく、古き良きサイケからもっと直接的に地続きな陶酔を感じさせる1枚だと個人的には解釈しています。そういうノスタルジー、冒頭にも書いたようにロートルな感性の持ち主からすると嫌いになれる訳がないんですよね。
第21位 “PPONG”/250
これ、毎週の新譜チェックでは目を通さなかった作品なんですけどね。この企画で紹介できてよかったです。韓国のプロデューサー、250の“PPONG”。
ポンチャックという韓国のダンス/テクノ系大衆音楽にカテゴライズされる作品らしいんですけど……韓国の音楽動向に明るくないのでなんとも言えませんが、アジアンな土着性に紐づいたテクノという意味で、YMOに近しいものを個人的には感じます。この作品はもっと生音のアンサンブルも目立っていますし、現代的ではあるんですけどね。
すごくサウンドが秀逸なんですよね。さっきも触れた生音のアンサンブルというのが効果的で、電子音が自由に鳴っていても、要所要所で肉感的なので軽くならない。そこのところのバランスが面白いポイントかと。作品や音楽性の背景も含めて、かなり興味を惹かれる1枚でした。
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