30〜21位
第30位 “It’s Late”
クイーン流ハード・ロックという意味では最も優れたものの1つでしょうね。『世界に捧ぐ』より『イッツ・レイト』です。
オープニングの哀愁あるギターの爪弾きと男性的なマーキュリーの歌声だけならば、ブルージーなロックにも思えるんですよ。『世界に捧ぐ』という収録作品のキャラクターから言ってもね。ただ、楽曲のコーラス部でその予想を打ち砕く訳です。この裏切り、クイーンに典型的な展開の妙です。
壮麗なハーモニーと高らかなレッド・スペシャルのギター・ワーク、そして振り絞るような高音を披露する歌声。タフなハード・ロックではあるんですけど、ブルースの泥臭さなんてどこにもないでしょ?
このどうしても隠せない華やかなドラマ性、それをハード・ロックの爆発力と調和させた恐るべき楽曲です。ロック的な歌唱の部分でいうと、マーキュリーのベスト・アクトの1つでしょうね。
第29位 “White Queen (As It Began)”
「サイド・ブラック」ばかりが語られがちな『クイーンII』ですけど、「サイド・ホワイト」だって素晴らしいんですよ。この『ホワイト・クイーン』を聴けばわかると思います。
悲恋を描いた楽曲なんですけど、この繊細なロック・バラード、ある意味ではバラードの名手としてのブライアン・メイの最初の一例と言ってもいいかもしれませんね。しっかりと終盤ではギターとコーラスでスケールを一気に押し上げる展開も待っていて。
間奏で聴けるアコースティック・ギターのサウンドもクイーンにしては特徴的で。シタールっぽいというか、かなりぶっきらぼうなサウンドをしているんですよ。そこからお馴染みレッド・スペシャルが登場することで、あの華やかなサウンドがいっそう際立って聴こえるのも面白い。
第28位 “Tie Your Mother Down”
ライヴでの重要なレパートリーでしたね。『華麗なるレース』のオープニングを飾った『タイ・ユアー・マザー・ダウン』です。
天文物理学の論文博士になってしまうくらい根っからの真面目で、どうしたって「不良のロック」を表現できないブライアン・メイが精一杯不良になってみた、ってな具合の楽曲です。「お前の母さんを縛り上げろ」なんて文句、必死に考えたんでしょうね。
もちろん楽曲としてもギター・リフの効いた最高のハード・ロックなんですけど、どうしたって優雅になっちゃうのがまたおかしくて。サビのコーラスはおそらくメイの多重録音だと思うんですけど、ハード・ロックのクセに品があるんですよ。
ギター・ソロも聴きものですよ。ブライアン・メイのギターってブルースの色が薄くて、メロディアスな気品が絶対にそこに存在するんですけど、その個性がよく出ている素晴らしいソロの1つです。
第27位 “It’s A Hard Life”
悪趣味独創的なPVもファンの中でしばしば話題に挙がる、中期の傑作『永遠の誓い』です。
この時期には珍しく、初期クイーンらしい優雅で耽美的なバラードなんですよね。マーキュリーのナルシシズムダダ漏れで、できるだけサウンドをゴージャスにして。ニュー・ウェイヴっぽい方向に舵を切った『ザ・ワークス』というアルバムの中では浮いているんですけど、この曲が素晴らしいだけに悪目立ちしています。
よくこの曲と『プレイ・ザ・ゲーム』の類似を指摘する声がありますけど、一度だって似ていると思ったことはないですね。確かに曲の構成は近いですけど、別にロックのピアノ・バラードとしては一般的な進行ですし、それにシンセをたっぷり使った80’s的な『プレイ・ザ・ゲーム』とではこの曲はサウンドヴィジョンが全く違います。
80’s以降、コンポーザーとしてのフレディ・マーキュリーはかなり存在感が小さくなっていくんですけど、たまにこういう名曲をポンと出してくる辺りが流石のセンスですよね。
第26位 “You’re My Best Friend”
ディーキー最初のヒットを記録した『マイ・ベスト・フレンド』ですね。メイよりも先にヒットを出しちゃうジョン・ディーコン、やはり侮れません。
当時新婚だったディーキーの心境を歌った、当時のクイーンにしては例外中の例外と言えるハッピーなラヴ・ソング。この等身大の愛らしさがジョン・ディーコンらしいじゃないですか。「家にいる時がハッピー」なんて、フレディ・マーキュリーには逆立ちしたって書けない素朴な歌詞でしょ?
とはいえ、『オペラ座の夜』収録ですから。サウンドはこれでもかとゴージャスになっています。マーキュリーの甘ったるい歌声にクリスマスの賛美歌のように美しいコーラス・ワーク。そしてエレ・ピアノのサウンドですね。
このエレ・ピアノ、マーキュリーが「グランドピアノ以外は弾きたくない」と駄々をこねた結果ディーキーがプレイしているんですけど、絶対こっちの方がいいと思います。生のピアノだとより荘厳になってしまうというか、この曲の可愛らしさが損なわれるような気がしません?
第25位 “My Melancholy Blues”
『世界に捧ぐ』のエンディング、『マイ・メランコリー・ブルース』ですね。この曲も目立たないけど本当にいい曲だ……
オペラにワルツにゴスペルに、ロックに+αすることに関して目敏いマーキュリーでしたけど、この曲に関してはもうロックの痕跡すらないまるっきりのピアノ・ジャズですね。ブライアン・メイのギターも、大袈裟な展開も、華やかなコーラスも一切出てこない訳ですから。
『世界に捧ぐ』という作品自体、これまでの華やかな「初期クイーン」との決別を図ったアルバムですけど、ここまで哀愁漂うナンバーを出してくるというのは流石の振れ幅です。こういうジャジーな楽曲歌わせても天下一品なの、ズルイと思いません?
第24位 “One Year Of Love”
フレディ・マーキュリーの「歌のうまさ」、これを味わうためには絶対に知っておかないといけない楽曲だと思っていますね。『愛ある日々』です。
作曲はディーキーなんですけど、このオールディーズ感溢れる大らかさたるや。サックスまで登場して、完全にソウルの領域ですよね。それもクラシカルな。ディーキーの趣味全開です。
もちろんロック的で華やかな歌唱だってマーキュリーは得意ですけど、特にこの時期に聴くことのできる正統派シンガーとしての捏ねくり回さないシンプルな歌唱力の高さ。アルバム『バルセロナ』と併せて、フレディ・マーキュリーの最高のパフォーマンスの1つじゃないでしょうか。
それにしても、本当にディーキーの作曲とマーキュリーの歌唱の相性って外れないですよね。ディーキーはアーティストとしてマーキュリーを尊敬していたので、きっと彼の才能への音楽的な理解が他の2人よりも深いところにあったんじゃないかなと。
第23位 “Brighton Rock”
『シアー・ハート・アタック』のオープニング、『ブライトン・ロック』です。この楽曲も当然これくらいの位置にきますね。なんならちょっと低いくらい。
語るべきことが結構ある楽曲なんですよね。マーキュリーの声色を巧みに使い分けた「1人オペラ」のような歌唱法も面白いし、クイーンには珍しいドライヴ感のあるハード・ロックという意味でも特徴的な楽曲ですから。
それと、メイの作曲にしては展開がべらぼうに多いのも個性的です。そういうのはフレディ・マーキュリーの十八番ではあるんですけど、『クイーンII』でのマーキュリーの覚醒に触発されたのかな?なんて邪推しちゃうくらいで。
ただやはり、この曲はブライアン・メイのギター・ソロありきですね。いわゆる「津軽三味線ギター」って奴です。1974年当時、ここまで独創的なギターのアプローチをしていたプレイヤーっていないんじゃないかな……彼のギター・サウンドが異色なのは言うまでもないとして、プレイの引き出しの数で見てもかなりオンリー・ワンなんですよね。
第22位 “手をとりあって (Let Us Cling Together)”
日本のクイーン・ファンにとっては何より重要な楽曲です。『華麗なるレース』のラストに収められた、日本とクイーンの絆を歌った『手をとりあって』。
親日家としてクイーンは有名ですし、実際クイーンの歴史の中で日本って極めて重要なんですけど、オリジナル・アルバムのエンディングで感謝を表明する、この特別扱いっぷり。これもメイの卑怯なバラードの一角なんですけど、ちょっとエキゾチックなメロディにも日本への意識を感じさせてくれます。
そしてサビでは日本語の歌詞が登場する訳ですけど、クリムゾンの”Matte Kudasai”やスティクスの”Mr. Roboto”で聴くことのできる冗談半分の日本語ではない誠実な表現ですし、実際いい歌詞なんですよね。
きっと海外のメディアやファンが選ぶランキングには入ってこない楽曲なんでしょうけど、わたし日本人ですから。この曲に関してはこれまでに観に行った3度のコンサートで毎回やってくれていて、思い入れも強いということでこの位置に。
第21位 “Bicycle Race”
「ふざけた歌詞の洋楽」としても有名な『バイシクル・レース』ですけど、個人的にフレディ・マーキュリーの大傑作だと思っている楽曲の1つです。
実際マーキュリーはこの曲を『ボヘミアン・ラプソディ』の後継とまで言っていたようで、それもわかるんですよね。転調の数といい次々に移り変わる曲調といい、そのアイデアの奔放さといったらないですから。
それを3分ほどで極めて強引にまとめあげている、そのコンパクトさって彼の作曲・編曲能力の高さの象徴じゃないですか。普通なら曲として破綻しちゃうレベルで手を替え品を替えの作曲ですから。これをポップスにしちゃうんですからとんでもない。
歌詞のナンセンスさだって、絶対狙ったものなんですよ。ここにもっと高尚な歌詞(クイーンに高尚な歌詞が果たしてあるかは怪しいですが)を乗せることもできるし、そうすればもっとプログレッシヴ・ロック的な表情も獲得できるはずなんですけど、自転車に乗りたい!スター・ウォーズなんて嫌い!という軽薄な歌詞を歌ってみせるいたずらっぽさも実に彼らしい。
20〜11位
第20位 “The Millionaire Waltz”
この曲も見落とされがちですね……天才フレディ・マーキュリーを知る格好の傑作なんですが。『ザ・ミリオネア・ワルツ』です。
『ボヘミアン・ラプソディ』でロックとオペラを融合(融合というか超合成というか)した彼ですが、翌年にはロックとワルツの融合に挑戦しているんです。これ、本来なら『ラプソディ』の偉業と並列して語られてもおかしくないと思うんですよね。それに楽曲としてもすこぶる名曲ですから。
この曲も例に漏れずすこぶる展開の多いナンバーなんですけど、『キラー・クイーン』で見せたさりげないあざとさと、それこそ『ボヘミアン・ラプソディ』に代表される強引な力業、このハイブリッドなんです。大胆な展開を見せこそするものの、正にワルツのように流麗で。
片時も耳を離せないスリリングな楽曲ですね。その中でも注目すべきはギター・ソロ。世にも奇妙な「ワルツ・ロック・ギター」を楽しむことができます。マーキュリーの傍若無人な作曲が成立するのって、その都度メイが素晴らしいギターを提供しているからな気もしていて。
第19位 “The Fairy Feller’s Master-Stroke”
『クイーンII』の「サイド・ブラック」の中の1曲、『フェアリー・フェラーの神技』。この曲もファンじゃないと見過ごしてしまいますけど、とんでもない曲なんです。
リチャード・ダッドの同名絵画『お伽の樵の入神の一撃』に着想を得た楽曲で、歌詞はこの絵画に描かれたファンタジー世界をモチーフにしています。初期のマーキュリーが持っていた寓話への耽溺を反映しているんですけど、音楽的にも実にフレディ・マーキュリーらしい。
サウンドがとにかく細かくて、執拗なまでのアレンジメントへの拘泥。間奏のコーラス・ワークとディーキーのベースの絡み合いなんてすごく面白いんですよ。ここまでファンタジックなロックを展開したバンド、後にも先にもクイーンくらいでしょうね。
2分半ほどの楽曲にここまでのきめ細やかな細工を施す訳ですから、楽曲としての密度が半端ではない。『クイーンII』を評して「音の洪水」と呼ぶのは、実はこの楽曲こそが最大の要因だと思っています。
第18位 “Who Wants To Live Forever”
コイツもメイの卑怯なバラード・シリーズです。『リヴ・フォーエヴァー』。アルバム『カインド・オブ・マジック』収録の壮大なバラードですね。
オーケストラを迎え入れたほとんど唯一の例なんですけど、この楽曲のシンフォニックな荘厳さ、そして映画『ハイランダー』の重要なシーンで流れる楽曲としての機能のために見事に機能しています。クイーンなんてほっといてもスケール大きくなるのに、オーケストラなんて登場したらそりゃ感動的になるってもんです。
それと、マーキュリー以外のメンバーがメインでヴォーカルを取った楽曲もこれが最後ですね。1番とラスサビ前で、作曲者のメイが歌っています。誠実さで言えばこちらも素晴らしいんですけど、何しろ歌わせたらロック史上一番のあの人が出てきますから。
ただそこの対比も面白くて、実は作為的な気もするんですよね。あえて序盤はメイの繊細さを押し出して、サウンドが開けていくのと同時にマーキュリーの爆発的な絶唱を登壇させる。そういうテクニックを使わせれば天下一品ですから、クイーンって。それと、この曲に関してはアダム・ランバートの歌唱も最高なのでよければそっちも聴いてみてください。
第17位 “Good Old-Fashioned Lover Boy”
フレディ・マーキュリーが正統派メロディ・メーカーとして活躍した時期って実はかなり短いんですけど、この『懐かしのラヴァーボーイ』はその時期の傑作です。
ミュージックホール的な昔懐かしいピアノ・ポップという体裁で、可愛らしいメロディとコーラスとの掛け合いの妙が楽しめる楽曲ですよね。マーキュリーの性的指向と関連してカミング・アウトの楽曲とする説もありますけど、歌詞をしっかり読み解けばこの曲が歌劇的な問答の形式を取っていることは明らかです。
正統派メロディ・メーカーとは言いましたが、それでもコーラスで畳み掛ける煌びやかなスタイルは健在ですし、ギターやドラム、ベースといったアンサンブルでの遊び心もなかなか面白くて。ポップスではあるんですけど、かなり凝り性な楽曲でもあるんです。
『華麗なるレース』でのマーキュリーってピアノを主体とした作曲にかなり積極的で、『愛にすべてを』だったり『ミリオネア・ワルツ』だったりですね、ある種エルトン・ジョン的というか、SSWのムーヴメントに呼応した気も若干するんですけど……どうなんでしょう?
第16位 “Was It All Worth It”
『ザ・ミラクル』のフィナーレを飾る、『素晴らしきロックン・ロール・ライフ』。最高の邦題ですよね。楽曲も大好きです。
アルバム『ザ・ミラクル』がかなりハードな作風なだけあって、この楽曲もそのムードを踏襲したギター・リフとヘヴィなビートで畳み掛けるタイプのロック・チューンなんですけど、そこに初期の華やかさや華麗なUKロックの痕跡があるのがある種異色というか。
歌詞に関して言うと、AIDS発症で自身に猶予がないことを悟ったマーキュリーの回顧録なんですよこの曲って。好き放題やってきた「ロックン・ロール・ライフ」を自信たっぷりに振り返り、「価値のあるものだったのか?」と問いかける。ただ、この誇らしげな歌唱を聴けば答えは明らかですね。
その並々ならぬ気迫、アルバム・ランキングの時に言及した本作に漂う「空元気」感と理解してもいいですけど、それ以上にクイーンのレガシーへの自負ゆえでしょうね。未来が違っていれば、『ショウ・マスト・ゴー・オン』にもなり得た楽曲だと思います。
第15位 “Don’t Stop Me Now”
このランキング、ベタな有名どころをかなり外しているんですけど、こればかりは外せません。『ドント・ストップ・ミー・ナウ』ですね。
クイーンで一番普遍的なポップスって、実はこの曲のような気がしていて。どうしてもクイーンは華やかになりがちで、サウンドもやたらめったら凝りがちなんですけど(褒めてます)、この曲に関しては突き抜けた爽やかさと凄まじい勢いの歌唱、そしてテンションの高さで押し切っちゃうというクイーンにとっては珍しいスタイル。
この時期のマーキュリーの歌唱って、80’s以降のマッチョな成分がやや表れつつも初期の気品と茶目っ気がまだ残っている絶妙なバランスなんですよね。それが一番効いている曲だと思います。骨太なんだけどどこかエレガントというかね。
映画『ボヘミアン・ラプソディ』のエンディングでも起用されていましたけど、この曲の圧倒的なポピュラリティって実にクイーン的なんですよね。徹底的にポジティヴで、娯楽に甘んじることをよしとする姿勢。ピアノ・ポップスとして最良の楽曲の1つじゃないでしょうか。
第14位 “Spread Your Wings”
文句なくディーキーの最高傑作です。『世界に捧ぐ』に収録されたもう1つのアンセム、『永遠の翼』。
『世界に捧ぐ』で一気にシンプルなロックに舵を切ったクイーンですが、それってディーキーにとってはすごくありがたいはずなんですよ。彼の音楽的関心ってモータウンだったりファンクだったり、そういう絢爛豪華なUKロックとは距離のあるものだったので。
そこへいくと、このシンプル極まりない、フレディ・マーキュリーの歌唱力とメロディの質だけで勝負する骨太なバラードってすごくディーキーらしいんです。ディーコンはクイーンで唯一歌わないメンバーなので、常に意識として「フレディ・マーキュリーが歌うとどうなるか」というのがあると思うんですけど、その分析が完璧に作用していますね。
初期クイーンの重要なエッセンスだった華美なコーラスを排除したこの曲をもって、ジョン・ディーコンは真にクイーンのソングライターとして存在感を発揮したんだと思います。そして間もなくして『地獄へ道づれ』ですからね。
第13位 “’39”
クイーンの音楽性を指摘してしばしば言われる「多彩なジャンル」、それに貢献している楽曲の1つですね。メイによる「相対性理論カントリー」、『’39』です。
クイーンとして発表した39曲目というところからタイトルを引っ張ってきているんですけど、まず面白いのが歌詞です。超光速の宇宙船で宇宙を旅した男が使命を終え地球に帰還するも、地球では遥かな時が流れ、かつて愛した人の面影はただその子孫に残るだけ……
特殊相対性理論によるところの「ウラシマ効果」を題材にしたSFカントリーなんて書けるロック・ミュージシャン、世界にDr.ブライアン・メイを置いて他にいないでしょうから。楽曲としても長閑なんだけど切なくて、メイの細い歌声がマッチしていて。それと間奏でのテイラーの驚異的ハイ・トーン!ここも聴きどころです。ライヴではほぼほぼ失敗しちゃうんですけどね。
決して目立つ曲ではないにしろ、70’sのライヴでは重要なレパートリーにも加えられていた大事な楽曲の1つです。ちなみにライヴではマーキュリーが歌うんですけど、それもまた素晴らしくチャーミングで。聴き比べてみるのも一興でしょう。
第12位 “I Want It All”
私が初めてクイーンに触れた時、「ハード・ロック」として紹介されていたんですよね。今ではクイーンをハード・ロックなんて馬鹿馬鹿しいと思いますけど、でもハード・ロックもやれちゃうんだから仕方ない。その「ハード・ロックもやれちゃうクイーン」の最高傑作がこの『アイ・ウォント・イット・オール』。
アルバム『ザ・ミラクル』収録なのでかなり後期の楽曲なんですけど、高学歴ギター・キッズことブライアン・メイなりのハード・ロックの方法論の達成がこの曲にはあります。クイーンのシグネイチャーである分厚いコーラスと、前作くらいから見られたヘヴィなビートの融合も面白いですね。
で、ビートが重厚になるにつれてマーキュリーの歌唱もマッチョで男性的になっていくんですけど、それが相性抜群なんですよ。久しぶりにメイがヴォーカルを取るブリッジの掛け合いなんて、メイの繊細な歌声がいっそうマーキュリーのタフネスを色濃くしていて。
そうそう、この曲、アルバムとシングル版とで結構構成が違うんですけど、楽曲として聴くなら断然シングル版がオススメです。イントロのド迫力のコーラスはイングル版にしかないですし、あとシングル版のギター・ソロ、これブライアン・メイのベストアクトの1つなのでね。
第11位 “Under Pressure”
デヴィッド・ボウイとクイーンの共作、なんてウットリする響きでしょう。『アンダー・プレッシャー』ですね。
楽曲として見ると、クイーンの中ではかなり異色というか、例外的な楽曲なんですよね。歌詞にしろ楽曲のムードにしろ、クイーンでここまでシリアスでメッセージ性の強い楽曲というのはほぼありませんから。ここは間違いなくボウイのセンスによるものでしょう。
ただ、逆に言うとこの楽曲のドラマチックな展開、とりわけクライマックスのメロディのスケールの大きさですね、ここはボウイ単独では絶対にやらないでしょうから。クイーンという、スケールを大きくさせることに関しては病的に得意なバンドならではです。
この両者の個性が柔軟に混ざり合った上で、フレディ・マーキュリーとデヴィッド・ボウイ、この2人の正反対の天才シンガーのデュエットが楽しめる。そんなの名曲にならない訳がないんですよ。ディーキーのアイデアだというベース・リフも最高ですしね。
コメント