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独断と偏見と愛で選ぶ、クイーン名曲ランキングTOP50

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10〜1位

第10位 “Love Of My Life”

Love Of My Life (Remastered 2011)

あらゆる意味で、クイーン、そしてフレディ・マーキュリーにとって重要な楽曲ですよね。『ラヴ・オブ・マイ・ライフ』です。

アコースティック・ギターの伴奏によるシンプルなライヴ・テイクもいいんですが、この記事ではあくまで音源でのテイクに限った話をしましょうか。フレディ・マーキュリーってこういうピアノ・バラードも得意分野なんですけど、その中で最もメロディが美しく、悲壮的で、そしてゴージャスな楽曲です。

マーキュリーの作曲って、もれなく「やりすぎ」なんですよね。その過剰さが彼の天才性ではありますし、実際この曲も非常に華やかなサウンドではあるんですけど、骨子となるメロディと歌唱、ここに彼の誠実さや苦しみが感じられます。そういう曲、実は他にあまり例がないんですね。

間奏の見事なギター・オーケストレーションにしろ、コーラスの煌びやかな効果にしろ、如何にも初期クイーン的な意匠をふんだんに取り入れつつ、素朴に聴こえてくる。「初期クイーン」のサウンドを完全にコントロールすることに成功した一例としてもすごく重要だと思います。

第9位 “These Are The Days Of Our Lives”

Queen – These Are The Days Of Our Lives (Official Video)

『イニュエンドウ』が最愛のアルバムだと前回言いましたけど、あのアルバムのハイライトの1つがこの『輝ける日々』。ロジャー・テイラーの最高傑作ですね。

死にゆく友、フレディ・マーキュリーへの哀別の歌。それだけであまりに切ないんですけど、とにかくメロディとサウンドが美しいんです。テイラーがここまで誠実なバラードを書いた例ってクイーンではないですし、サウンドも結構特殊で。セピア色というか、リバーブが全体的に聴いていて、回顧的な歌詞をサウンドでも補強しています。

そういうクレバーさがクイーンの抜かりなさなんですよね。もっとシンプルなサウンドにしたってこのメロディなら十分名曲になるんですけど、手を抜かない。やれる細工は全部する、その音楽への執念深さですよ。

そしてマーキュリーの歌声ですね。こんなに切ないメロディなのに、なんでこんなに楽しそうなんですか?いたずらっぽくて、まるでテイラーを励ますようじゃないですか。自らが死に直面しているのに。このマーキュリーの天性の明るさ、茶目っ気、それを最も残酷に引き出したエモーショナルなバラードです。

第8位 “The March Of The Black Queen”

Queen – The March of The Black Queen (Official Lyric Video)

さあ、『クイーンII』の通称「サイド・ブラック」のハイライト、『マーチ・オブ・ザ・ブラック・クイーン』は当然こういう位置ですね。

クイーンがどの時期にも忘れることのなかった「足し算の美学」、その極致がこの曲だと思います。聴けば聴くほどに新しい発見がある、とにかく細部に渡ってサウンドが磨き上げられていて、その緻密さと情報量の膨大さには脱帽ですね。

言ってしまえばプログレッシヴ・ロック的な美学でもあるんですけど、この曲のすごいところが6分半と別段大作でもないという点。一切の繰り返しがないポピュラー音楽における横紙破り、途方もないアイデアの量を要求するスタイルのくせに、6分半でそれを出し切っちゃうんです。

実際に聴いていただけばわかりますけど、「まだなんかあんの?」としつこいくらいの展開ですから。ただそれって言い換えれば冗長さとは無縁な訳ですからね。クイーンって高度ですけど難解ではないじゃないですか。その境界線って、実はこういう曲から見つけられる気もしていて。

第7位 “Save Me”

Queen – Save Me (Official Video)

これまで何度か登場したブライアン・メイの卑怯なバラード、その中でも一番ズルいのはこの曲です。『ザ・ゲーム』のラストを飾る『セイヴ・ミー』ですね。

この楽曲に関しては『ザ・ゲーム』で見せたアメリカナイズドが功を奏していると言えそうです。ここまでスッキリとした仕上がりで、それでいてパワフルなロック・バラード、実はこれまでのクイーンにはないですからね。メロディ・メーカーとしてのメイの才能を発揮できる環境が整ったというか。

とはいえギター・ソロのオーケストレーションだったり、サビの狂喜乱舞するサウンドスケープだったり、この辺はクイーンらしい「足し算の美学」です。冒頭はピアノだけで我慢できていましたけど、やっぱり無駄に壮大にすることに関しては一家言あるバンドですから。

あと、70’s後半からグングン男性的になっていくマーキュリーの歌唱の妙味をよくわかっているメロディだと思うんです。サウンドだけでなく、歌唱の観点でもすごくメイの洞察力を感じられる楽曲なんですよね。

第6位 “Innuendo”

Queen – Innuendo (Official Video)

この曲はTOP5に入れたかったなぁ……惜しくもこの位置です。フレディ・マーキュリーの遺作『イニュエンドウ』より、オープニングを飾るタイトル・ナンバーです。

ドラム・ロールから始まり、まるでツェッペリンの『カシミール』のようなエキゾチックで壮大なロックが神秘的に展開され、イエスのスティーヴ・ハウの客演によるフラメンコ・ギターもあり、ミステリアスなコーラスが如何にも過剰で居丈高に振る舞う瞬間もあり……紛れもなく『ボヘミアン・ラプソディ』のような通作的作曲への挑戦ですね。

これがまた素晴らしい出来栄えで。クイーンってとにかく時代にアジャストするバンドなので、こんなプログレッシヴでゴージャスな作品、80’s以降はまずもって作ってこなかったんですよ。いわゆる昔取った杵柄ではあるんですけど、その構成のスリリングさと流麗さときたら。

ギター・ソロもいいんですよね。スティーヴ・ハウのフラメンコ・ギターをなぞるような旋律なんですけど、とにかくスケールが大きくて。クイーンがかつて示した高慢で絢爛豪華なロックの凱旋として、タイトルを飾るだけのことはある大名曲です。

第5位 “We Are The Champions”

Queen – We Are The Champions (Official Video)

ここからTOP5ですけど、しばらくフレディ・マーキュリーの楽曲が続きます。やっぱり全盛期の彼の作曲能力って、ポピュラー音楽史の中でも有数だと思うんですよ。世界的アンセム、『伝説のチャンピオン』です。

大衆がシンガロングするアンセムというのはロック史上他にもいくつか例はあります。それはザ・ビートルズの『ヘイ・ジュード』だったり、あるいはオアシスの『ドント・ルック・バック・イン・アンガー』だったり……ただどうです、この曲ってどこまでも大衆のものなのに、あくまで真ん中にはフレディ・マーキュリーがいるんです。

この傲岸不遜なプレゼンス、鼻持ちならない華々しさ、これこそフレディ・マーキュリーです。実のところ彼がシンガーとして大成を見るのは80’s以降だと個人的には思っているんですけど、これは別格ですね。こんなに高慢ちきで親しみやすい歌声、一体誰に表現できるんですか?

楽曲のクライマックス、ギターがメロディと対立するように登場するのも素晴らしい発想ですよね。これもマーキュリーの歌唱とメロディに強度がないと絶対にできないんですよ。普通はギターに負けちゃうので。そこに真っ正面からぶつかって、この楽曲の勇壮さをむしろ高めてしまう。なんてことを……

第4位 “Somebody To Love”

Queen – Somebody To Love (Official Video)

日本のファンはこの曲が特に好きですよね。『華麗なるレース』より、『愛にすべてを』です。

マーキュリーにとってのディーヴァだったアレサ・フランクリン、彼女へのリスペクトを表明したゴスペル調の楽曲なんですけど、クイーンが唯一表現できない「ソウル」の領域を絢爛豪華なサウンドで置き換えているのが実にクイーンらしい力業じゃないですか?

作曲の観点で見ると、『ボヘミアン・ラプソディ』でも見られた主旋律とコーラスでの掛け合い、それこそオペラのような歌劇からの影響が見られるのが面白い。あるいはアレサ・フランクリンと紐づけるならば、『シンク』で見られる構造への接近と言ってもいいかもしれませんけどね。

実際、マーキュリーもこの楽曲が大のお気に入りだったようで。『ボヘミアン・ラプソディ』ほど過剰でなく、それでいて優雅でゴージャス。続く『世界に捧ぐ』で作風が一変することを思うと、ここに初期クイーンの成果が惜しみなく盛り込まれているとも言えるでしょうね。

第3位 “Killer Queen”

Queen – Killer Queen (Top Of The Pops, 1974)

流石に最高位に差し掛かると順当な傑作が並んでいる感もありますね。『キラー・クイーン』が第3位です。

メイだったかな、「フレディは『キラー・クイーン』を書いておきながら、自分がロック・スターだって顔をしてるんだ」なんて言葉を残しているんですが、言い得て妙ですよね。ジャンルで分類するならそりゃロックなんですけど、当時のシーンを見渡してもこんな曲書いてるロック・アーティストは1人もいませんから。

とにかくフレディ・マーキュリーの作曲センスが爆発してますね。高度さでいうとクイーン最高峰じゃないでしょうか。なんの意味があるのかわからない細かい転調に、しつこいくらいのコーラス、いやにセクシーでそれでいてお上品なメロディ、それを「ロック」にしちゃうバランス感覚ははっきり言って異常です。

特に初期のクイーンって壮大さを1つの個性としましたけど、『キラー・クイーン』に関してはフォーマットの上ではあくまで小品なんですよ。3分ばかりの中にとてつもない細やかな意匠を詰め込んだ、とびきりゴージャスな傑作。フレディ・マーキュリーにしか書けない完全無欠のポップスです。

第2位 “Bohemian Rhapsody”

Queen – Bohemian Rhapsody (Official Video Remastered)

この曲を1位にするかどうか、最後まで悩みました。ただ、あくまで個人的ランキングなので忖度抜きに2位で。クイーンの最高傑作、あるいはロック・カルチャーにおける最高の遺産、『ボヘミアン・ラプソディ』です。

この曲について、今更何か語ることってありますかね?この曲を批判することは絶対にできない、そんな強度と威厳を持った数少ない楽曲の1つだと思います。

アカペラで開幕し、ピアノ・バラードから叙情的ギター・ソロ、かと思えばオペラが始まり、唐突にハード・ロックへ突入、最後には再びピアノ・バラードへ……まったくもってポピュラー音楽の常道から外れたフリーキーな構成ですし、明らかにトゥー・マッチな作曲なんですけど、これっきゃないと思わせてしまう必然性と普遍性たるや。

「最後の最後にポップネスが宿っている」という、批評家に嫌われ、大衆から愛されたクイーンというバンドの才能。それをどういう訳だかこの数奇な名曲で表明してしまうというのがもう破茶滅茶です。奇跡的なマスターピース、完璧なロック・クラシック、そう手放しに絶賛しなければならない楽曲です。

第1位 “The Show Must Go On”

Queen – The Show Must Go On (Official Video)

長らくお待たせしました。第1位、ピエールにとってクイーン最愛のナンバーは『イニュエンドウ』の最後に収められた『ショウ・マスト・ゴー・オン』で決定です。

フレディ・マーキュリーという天才、あるいはクイーンという伝説、そのレクイエムとしてこれ以上なく相応しい名曲です。鎮痛なキーボードのリフレインの中で、まるでスポットライトを浴びるかの如く最高の歌唱が木霊する……死にゆく男の歌唱とはとてもではないけれど思えません。

クイーンの楽曲の中でもかなりキーの高い曲なんですよね。実際作曲したメイは今のマーキュリーにこれが歌えるのか不安だったそうで。それに歌詞があからさまですからね。そのことをマーキュリーに相談したところ、彼は返す刀でこう言ったそうです。”I’ll fuckin’ do it, darling(ダーリン、何が何でもやってやるさ)”と。

この覚悟、執念と言い換えてもいいですけど、それはこのエピソードを知らなくても楽曲からありありと感じ取れます。ここまでにも何度か言及しましたが、シンガーとしてのフレディ・マーキュリーの最大の個性はその多幸感にあるんですけど、この楽曲に限っては極めてシリアスでシビア。

その上で、決して悲痛ではないんですよ。「僕の魂は蝶の翅のように彩られ これまでの伝説は輝きこそすれ決して滅びはしない 友よ!僕はまだやれるんだ!」……死に直面した男が最後に見た境地として、あまりに凄絶、そしてあまりに高潔です。

まとめ

いやあ、書いた書いた。お楽しみいただけましたでしょうか?

ここで今回のランキングを、収録アルバムと作曲者毎に分類してみましょうか。

【収録アルバム別】

  • “Queen” ……2曲
  • “Queen II” ……5曲
  • “Sheer Heart Attack” ……4曲
  • “A Night At The Opera” ……5曲
  • “A Day At The Races” ……7曲
  • “News Of The World” ……6曲
  • “Jazz” ……4曲
  • “The Game” ……2曲
  • “Flash Gordon” ……0曲
  • “Hot Space” ……1曲
  • “The Works” ……2曲
  • “A Kind Of Magic” ……5曲
  • “The Miracle” ……3曲
  • “Innuendo” ……4曲

【作曲者別】

  • フレディ・マーキュリー ……23曲
  • ブライアン・メイ ……12曲
  • ロジャー・テイラー ……3曲
  • ジョン・ディーコン ……8曲(マーキュリーとの共作含む)
  • 共作名義 ……4曲

面白いのが、アルバム単位で見ると『華麗なるレース』、次いで『世界に捧ぐ』という点でしょうか。アルバムとしてのトータリティならばともかく、楽曲レベルでのキレの良さはこの時期が個人的ベストというのは意外な結果でした。

作曲者別の方は順当な感じですね。フレディ・マーキュリー強し!これに尽きます。もう少しテイラーに枠を譲ってやれば……と思わないでもないですけど、素直な結果ということで。あとディーキーの曲をしっかり選べた自負があったのにたったの8曲というのが悔しいです。彼の場合そもそもの母数が少ないですから仕方ないんですけど。

さて、そろそろ総括にかかりましょう。

クイーン名曲ランキングで『ウィ・ウィル・ロック・ユー』も『愛という名の欲望』も『地獄へ道づれ』も『RADIO GA GA』も選外にしている、このふてぶてしさったらないでしょ?

当然、これらの楽曲がクイーンの歴史において重要であることは理解しています。その上で、個人的な愛着の観点から言えば決してTOP50に入るものではなかった。それくらいの理解をしていただければと思います。

ただ、だからこそ「ベスト盤では見えてこないクイーン」が光ってくるランキングだとも思うんですよね。クイーンの代表曲なんて、それこそ映画の大ヒット以来洋楽ファンでなくとも知っている訳で。

ファンの方々と喧々諤々の議論を交わすのも目的の1つですけど、実はクイーン・ビギナーの方にもオススメしたい記事なんですよね。その割にまるでビギナー向けじゃない文字量ですけどご勘弁を。それではまた次回。

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