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独断と偏見と愛で選ぶ、ビートルズ名曲ランキングTOP50

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10〜1位

第10位 “Strawberry Fields Forever”

Strawberry Fields Forever (Remastered 2009)

この曲がチャート1位を取れないというのはどういうことなんでしょう。紛れもなくジョン・レノンの最高傑作の1つだというのに。

サイケデリック・ロックとして申し分ない幻惑を醸し出してはいるんですけど、やっぱりこの曲の凄さって「キーもテンポも違う2つのトラックを繋ぎ合わせた」部分にあると思います。2コーラス目の”I’m going to”の”going”でトラックが変わるんですよ、よく聴くとドラムの音色がかなり違うんです。

別にそういう奇抜なことをしたからこの曲が偉大だなんて言いたくはありません。ただ、その破天荒なアイデアがこの曲のファンタジックな世界観だったり、畏怖にも似た厳かな空気感を演出しているのが素晴らしいんです。

穏やかなサイケから突如として不穏になる、その極端な二面性はジョン・レノンの精神性にもそっくりそのまま当てはまる部分ですしね。幼少期の追想というテーマもそうなると意味ありげで、ジョン・レノンという1人の人間の音楽的自伝のようにすら思えてきます。

第9位 “Come Together”

Come Together (Remastered 2009)

『アビー・ロード』の1曲目である『カム・トゥゲザー』ですが、聴けば聴くほど不思議なんですよねこの曲。

チャック・ベリーを盗作したなんて話もありますし、実際両者を聴き比べるとアイデアを拝借した痕跡自体はあるんですけど、もうまるで別物なんですよね。なんですかこの妖しさ満点のサウンドは?既存のロックのジャンルで全く縛り付けることのできない、「レノンのロック」としか表現できない1曲です。

この曲も演奏がいいんですよね。マッカートニーのベース・リフはもちろんですけど、ドラム・プレイが格別です。一般的なポップスにおけるドラムの構築論からまるっきり外れています。スネアをサビまで引っ張るという大胆さ、ドラムかじっている身からすると理解不能ですよ。

ただ、そういう奇抜な構造にでもしないとこの曲のパンチに負けちゃうんだと思います。ここまで不穏で這いずり回るようなロックに、8ビートなんてかえって浮いてしまいますよ。そういう楽曲への気配りがいろんな部分にあるからこそ、この摩訶不思議なナンバーは傑作なんです。

第8位 “All My Loving”

All My Loving (Remastered 2009)

いわゆる初期ビートルズではもう頭3つくらい抜けて大好きな曲です。なんですかこの非の打ち所がない楽曲は。

6連のギター・フレーズは実に気が利いているし、下降するベース・ラインの躍動感も見事。メロディは言うまでもなくキャッチーで、絶妙なスウィングを見せるリズムは最高に心地いい。うん、個々に取り出して考えても非の打ち所がありません。

たった2分ですよ。たった2分でここまでポップスって完成させることができるんです。その軽妙なタッチに気を取られがちですけど、この曲がどれだけの密度を持っていることか。

ダークなロックンロールが目立つ2ndにおける白眉がこの軽快なポップ・チューンというのもなかなかに面白い現象なんですけどね。この曲をシングルにしなかったのは采配ミスと言わざるを得ないと個人的に思ってしまうくらい、素晴らしい名曲。

第7位 “Nowhere Man”

Nowhere Man (Remastered 2009)

ジョン・レノンの真骨頂ですね、『ひとりぼっちのあいつ』です。長年『ひとりぼっちのあいさつ』だと勘違いしていたのは内緒。

とにかくこの曲はハーモニーですね。ザ・ビートルズのコーラスって単純に三度上とか五度上のような構成じゃないんですよ、ものすごく独特です。その普通じゃない和声がずっと続いているのに、こんなにも心地いい。ライブですんなりこのコーラス再現しちゃうの結構ヤバイですからね。

で、その豊かな和声の中にあるからこそ引き立つレノンの枯れた歌声もいいんですよ。気だるげで、ほんのちょっぴりサイケで。歌詞もすごく内省的で、これぞジョン・レノンってな具合です。

ギターの音もすごく特徴的ですよね。最初12弦ギターなのかと思っていたんですが、トレブルを限界まで振り切って、その音に更にトレブルをかけまくるというギター初心者みたいな音作りが可能にしたサウンドです。この常識知らずなアプローチを思いつくのがレノンの天才性でしょうね。

第6位 “A Day In The Life”

A Day In The Life

この曲を最高傑作にするのが一番無難な選択だと思います、いろんな意味でね。『サージェント・ペパーズ』のフィナーレを飾る『ア・デイ・イン・ザ・ライフ』です。

なぜこの曲が無難かというと、完全にレノン=マッカートニーの楽曲だから。アイデア自体はレノンですけど、楽曲中間部はマッカートニーの作ったパートですからね。その2つをトリップを表現したであろう不穏極まりないオーケストラの轟音が無理やりに繋いでみせる手法は笑ってしまうほど圧巻。

アルバム『サージェント・ペパーズ』に関しては世間の評価ほどのものを私個人は見出していないんですが、それでもこの奇跡の名曲は「『サージェント・ペパーズ』のラスト」であることに意味があります。元も子もない話ですが、この曲単体を取り出して聴いても100%楽しめないんですよ。

あの夢想的イントロからEのコードで実に堂々と終わるまで、本当に片時も息つく暇のない恐るべき楽曲です。この曲がなければ、如何に「世界初のコンセプト・アルバム」と言えど『サージェント・ペパーズ』は最高の名盤とは呼ばれなかったでしょうね。

第5位 “In My Life”

In My Life (Remastered 2009)

もうこのくらいの位置になると語彙力がバグってくるので「いい曲だなぁ」しか言えなくなってきますが、もう少し頑張りますね。

バロック調の荘厳さにザ・ビートルズの黄金のようなハーモニー・ワーク、そこだけを切り取ると取っ付きにくそうなんですけど、この曲ってとびきりノスタルジックじゃないですか。誰しもの心にスッと入り込んでしまう、真の普遍性のある楽曲です。

間奏のピアノ・ソロはジョージ・マーティン卿の演奏ですが、これまたこの曲の神秘的懐かしさを引き立ててます。半分のテンポで演奏した音源を倍速にするという苦肉の策が、結果としてすごく独特な音色に繋がってます。こういう奇跡の産物がこの曲をよりマジカルにしているというのが不思議でね。

『リボルバー』以降レノンはもっとキテレツな音楽家になる訳ですが、彼の正統派メロディ・メーカーとしての才能の1つのピークがこの曲なんじゃないでしょうか。ジョン・レノンのピークなんてそんじょそこらの天才では立ち向かえない霊峰なんですけど。

第4位 “Something”

The Beatles – Something (2019 Mix / Audio)

『サムシング』が嫌いな人間っているんですか?いないですよね。いないってことで話を進めますね。

音楽そのものとは関係ないかもしれませんけど、『アビー・ロード』の録音ってザ・ビートルズ最後のレコーディング・セッションな訳じゃないですか。そこで、これまで不遇に甘んじてきたジョージ・ハリスンが史上最大の作曲家レノン=マッカートニーを超える大名曲を残した。このドラマたるや。

そんなジョージ・ハリスンの一世一代の名曲に花を添えるのが、マッカートニーのベース・プレイですね。ここまで美しいメロディがあるにもかかわらず、ベースの進行は極めてメロディアス。あとほんの少しやり過ぎると楽曲を壊しかねないギリギリのラインまで主張する、そのバランス感覚は天才の所業です。

本当にいい曲なんですよね、イントロのなんてことないドラムのフィル・インの歌心も素晴らしくって。わずかに後ろ気味で、ゆっくりとメロディを導入するかのようでね。全く隙のない、最高級のバラードです。

第3位 “Rain”

The Beatles – Rain (2009 Stereo Remaster)

第3位に個人的レノン最愛のナンバー、『レイン』です。(ということは残る2曲はすべてマッカートニー作ということになりますね……。)

私にとってこの曲は、ロック・バンドとしてのザ・ビートルズの最高到達点です。とにかく演奏がカッコいいんだ。ポール・マッカートニーとリンゴ・スターという史上最強クラスのリズム隊、彼らの残した数々の名演の中でもこの曲はぶっちぎってると思います。

イントロのスネア・ドラム、「ダダッ!ダダダッ!」。これだけで最高でしょ。リンゴ・スターのどこまでも雄弁でメロディアスなドラム、その真骨頂です。珍しく暴れまくってるのもいいんですよね。ベース・ラインもむちゃくちゃにメロディアスですしね。

それにレノンの作曲も実に絶妙な退廃ぶりで。『サージェント・ペパーズ』くらいになってくるとかなりフリーキーというか、ブットびすぎててちょっと危うい楽曲もあるんですけど、この曲はサイケ・ロックの心地よさのど真ん中をぶち抜いてます。

第2位 “Golden Slumbers/Carry That Weight/The End”

The Long One (Comprising of ‘You Never Give Me Your Money’, ’Sun King’/’Mean Mr…

第2位に来て反則技です。『アビー・ロード』のクライマックスを飾るポール・マッカートニー渾身のメドレーですね。

そもそもこのパートを楽曲単位で比較すること自体ナンセンスなので、組曲のような扱いでここは一纏めにさせてもらいます。そしてそうすると、ザ・ビートルズでも最高レベルに好きな音楽なんですよね。

アルバム・ランキングの時も言いましたけど、『アビー・ロード』に込められた想いやドラマってものは全ビートルズ・ファンを虜にしてやまないものだと思いますし、そこがあの作品が名盤たる所以だと思うんですよね。

で、最後まで「ザ・ビートルズ」であろうとしたポール・マッカートニーの悲痛さがこのメドレーには込められていると思うんです。その強い気持ちは「ゲット・バック・セッション」では空回りに終わってしまった訳ですが、最後の最後、音楽として彼はその心境を昇華させたんですね。

そりゃ感動するでしょ。ましてポール・マッカートニーですよ?ほっといても名曲作るような才能の塊が、全身全霊をかけて臨んだとあればそれはザ・ビートルズ最高の音楽になって当然です。

第1位 “For No One”

For No One (Remastered 2009)

さあ、1位はこの曲。『リボルバー』収録の『フォー・ノー・ワン』です。

私は何かを評価するときに完璧という言葉を使いたくないんですよ。それは単なる思考放棄でしかないと思うので。ただねぇ……この曲は「完璧」としか言えませんね。少なくとも私にとっては。

ポール・マッカートニーここにあり。そう言うしかないでしょこの曲。そのメロディが極めて優れているのは当然として、間奏のフレンチ・ホルンの調べは優しくも虚無的だし、三人称の詩世界もこの曲のとてつもない普遍性に寄与していますね。「ここではないどこか」だけれども、すごく肉感のある筆致です。

そしてこともなげにアッサリ終わってしまう、そのあっけなさもたまらなく好きなんですよね。余韻の心地よさったらないです。

私はポール・マッカートニーこそポピュラー音楽史上最大の天才だと信じて譲りませんが、この楽曲ってその持論の根拠の相当な部分を担っています。こんな曲、他の誰に書けるって言うんですか?

まとめ

いやぁ、書いた書いた。単独記事としては間違いなく過去最高を更新しましたね。お読みいただいた方はお疲れ様でした。

改めてランキングをまとめよう……とも思ったんですが流石にくどくなりそうなので、今回選出した50曲を収録アルバムと作曲者で分析してみましょうか。

アルバム別楽曲数

  • 『プリーズ・プリーズ・ミー』……1曲/14曲
  • 『ウィズ・ザ・ビートルズ』……1曲/13曲
  • 『ハード・デイズ・ナイト』……1曲/13曲
  • 『ビートルズ・フォー・セール』……3曲/14曲
  • 『ヘルプ!』……4曲/14曲
  • 『ラバー・ソウル』……4曲/14曲
  • 『リボルバー』……8曲/14曲
  • 『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』……2曲/13曲
  • 『マジカル・ミステリー・ツアー』……3曲/11曲
  • 『ザ・ビートルズ』……7曲/30曲
  • 『イエロー・サブマリン』……1曲/13曲(劇伴と再録曲を除いた曲数は4曲)
  • 『レット・イット・ビー』……4曲/12曲
  • 『アビー・ロード』……5曲/17曲(メドレーを3曲と換算すれば7/17)
  • アルバム未収録のシングル楽曲……6曲/27曲

作曲者別楽曲数

  • ジョン・レノン……22曲
  • ポール・マッカートニー……19曲
  • レノン=マッカートニー……4曲
  • ジョージ・ハリスン……5曲

こんな感じです。

露骨に中期以降が好きなのがバレちゃいますね。というか『リボルバー』好きすぎるでしょ。これでも相当意識して減らしたつもりなんですけどね。

それと作曲者別で見たときレノンの方が多いというのは個人的に結構驚きでした。これでもマッカートニー派を自称しているんですけどね。

マッカートニーって全曲偏差値65くらいに対して、レノンはどっちかというと45から130くらいまでの幅があるイメージなんですよ。トップクラスに好きな曲となると、この偏差値100オーバーの怪物がたくさん入ってくるんでしょうかね。

さて、そろそろまとめにかかりましょうか。

この50曲にどれだけの数の名曲が入り損ねたことか。『愛こそすべて』に『ア・ハード・デイズ・ナイト』、『恋に落ちたら』だったり『イフ・ウォント・ビー・ロング』あたりは是非とも入れたかったんですが……

当たり前のことですけど、TOP50がまるっきり私と被る人なんてこの世にいないと思うんですよ。アルバム・ランキングですらまあまあ荒れるわけですからね。

その底知れない魅力の深さと広さ、これこそがザ・ビートルズの凄まじさです。このランキングを作っていてしみじみと感じましたね。是非この記事をお読みになった方も、ご自身のTOP50を考えて見てはどうでしょう?それで私の地獄のような苦しみを経験してほしいもんです。それではまた。

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