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「みんなでドリームバンドを作ろう!」〜ピエールの場合〜 ④ドラマー編

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この企画もいよいよ今回で最終回です。ボーカリスト、ギタリスト、ベーシストときまして、最後はドラマー編。バックナンバーは↓からどうぞ。

実は私、ドラムをかじっていましてですね。ここまでの3パートは純粋なリスナーとしてのお気に入りだった訳ですが、ドラマーとなればある程度奏者の目線からジャッジしていこうと思っています。とはいえあくまで基準は「好きかどうか」の一点のみ。前置きもほどほどに、それでは参りましょうか。

第5位 ビル・ブラフォード

第5位はこの人、ビル・ブラフォード。イエスにキング・クリムゾンにU.K.、ジェネシスとプログレッシヴ・ロックの世界で縦横無尽の活躍をした名ドラマーです。

彼の魅力はやはり正確無比なプレイ。正直言って、ドラムの精度だけでいえばこの人が史上最高のロック・ドラマーじゃないかと思っています。リズム・キープの中で「揺れ」を生むこともドラムの心地よさの1つですが、彼は極限までタイトなプレイによって、「揺れ」と対極の快感を構築しているんです。

この究極に正確なプレイが、プログレッシヴ・ロックが持つ実験性や途方もない壮大さ、難解さといった部分をしっかりと支えているんです。イエス在籍期の『こわれもの』『危機』なんて、少しでもリズムがふらつけば途端に瓦解してしまうようなギリギリさを孕んでいますよね。

Heart of the Sunrise (2003 Remaster)

ただ、彼の真骨頂はイエス在籍期ではなくクリムゾンでの演奏だと思っていて。複雑なポリリズムジャジーな即興演奏、そしてブラフォードの冷徹なサウンドはロバート・フリップの世界観と完璧な相性を見せています。血が沸くというロック一般の感覚はなく、むしろ体温が下がっていく戦慄にも近いグルーヴ。

King Crimson – Larks' Tongues In Aspic, Part Two

ブラフォードにしか表現できなかったであろうプログレッシヴ・ロックの傑作というのが一体どれだけあることか。それを思えばフェイバリットに挙げざるを得ないというものです。

太陽と戦慄 40周年記念2CDエディション

第4位 キース・ムーン

ロック界きっての奇人、数々の破天荒なエピソードを持つザ・フーのキース・ムーンが第4位です。

ドラムを演奏する身からすると、キース・ムーンのドラム・プレイって意味不明なんですよね。まずスティックのグリップからして独特だし、リズム・キープなんていう概念のない乱打の応酬。しかもライヴではハイ・ハットというドラム・キットの最も根本的な部分を組み込まないという破茶滅茶っぷり。

そんな理解不能なスタイルにもかかわらず、彼のドラムは最高に魅力的なんです。正直コレが一番意味不明ですよ。なんでアレでカッコいいんでしょうね。ムーニー自身「俺は世界一のキース・ムーン・スタイルのドラマーだ」なんて豪語していますが、まさにその通り、彼にしかあんなドラム叩けっこないです。

彼の荒ぶるドラムは最早リズム楽器の様相を呈してはいません。「リード・ドラム」とも称され、ジョン・エントウィッスルと共にザ・フーのサウンドの中核を常に担っていました。『ジ・オックス』でのプレイなんて実に象徴的。「キース・ムーン・スタイル」が堪能できる名演です。

The Ox (Stereo Version)

かくいう私も「キース・ムーン・スタイル」に惚れ込んだドラマーの1人でして。破茶滅茶なフィル・インをよく真似したものですが、バンド・メンバーに「真面目にやれ」と一喝された苦い思い出もあります。私もムーニーも至って真面目にやっているんですけどね。

マイ・ジェネレイション+12

第3位 後藤マスヒロ

第3位には後藤マスヒロ。「誰だよ」と思われた方も多いと思いますが、日本最高峰のドラマーだと私は確信しています。

The ピーズの創設メンバーでありながら「ドラムが上手すぎる」という理由でバンドを解雇され、頭脳警察人間椅子といったアンダーグラウンドな名バンドを渡り歩いたドラマーです。現在は金属恵比寿というプログレッシヴ・ロック・バンドに参加しています。

彼のドラム・プレイは、洋楽の名だたる名ドラマーをマッシュアップしたかのようなスタイルが特徴的です。この辺りはかつてのバンド・メイトである人間椅子の和嶋慎治とも共通していますね。コージー・パウエルにジョン・ボーナム、テリー・ボジオらを参照したヘヴィかつタイトなプレイは圧倒的です。

個人的に人間椅子の全盛期は彼が参加していた時期だとすら思っていて。現在の人間椅子ももちろん大好きなんですが、後藤マスヒロのテクニックを前提にした楽曲群は当時にしかない味わいがあるんですよ。『幽霊列車』という楽曲なんて、電車の「ガタンゴトン」という音をドラムで再現しています

NingenIsu – YuuRei ResSha (ghost train)

現在の人間椅子のドラマー、ナカジマノブを腐す目的はさらさらありませんが、傑作『踊る一寸法師』のライブ・テイクを聴き比べればその差は明らかです。ノブの明朗なハード・ロック的ドラムも素晴らしい一方で、後藤のおどろおどろしいヘヴィネスは楽曲との相性が凄まじい。もっと注目されるべき最高のロック・ドラマーだと思っています。

Ningen Isu – Odoru Issunboushi (Live in Tokyo 2014) 人間椅子 – 踊る一寸法師
人間椅子「踊る一寸法師」
二十世紀葬送曲(UHQCD)

第2位 リンゴ・スター

第2位にリンゴ・スター。ベーシスト編でのポール・マッカートニーと並んで上位にランク・インです。個人的にはトップでもいいくらい大好きなドラマーなんですが、残念ながらこの人以上に好きなドラマーが1人だけいたんですよ。ヤツの話は次のチャプターで。

この人は本当に過小評価されていると思います。ハードさやヘヴィさ、あるいはテクニカルなプレイをしないというだけで、彼の演奏技術を軽んじる方がいるというのは残念でならない。もう怒りすら覚えますね。どれだけリンゴ・スターが優れたミュージシャンであることか。

この人は「ザ・ビートルズの屋台骨」としての役割を全うしているんですよ。コレってヤバくないですか?ヤバいですよね。どれだけメロディアスであれ実験的であれ、ロックンロールからバラードから、もう何から何までに、リンゴ・スターは求められるものを完璧に提供しているんです。この多彩さ、誰に真似できるでしょうか。

The Beatles – Ticket To Ride
The Beatles – Rain
Come Together (Remastered 2009)

あとコレはドラムを演奏する人間なら一度は気づくと思うんですが、彼のドラムをコピーするのってむちゃくちゃ難しいんです。譜面に起こしてしまえばなんてことのないプレイのように見えて、あのフィーリングを再現するのは至難の業ですよ。ちょっとしたスウィングだったり、微妙なリズムの「揺れ」の部分、ここが本当に繊細なんです。

それにスターのドラムって、ドラムとは思えないくらいにメロディアスなんです。まるで歌うように軽やかかつキャッチーなドラム、コレを叩ける人間が他に何人いるかって話ですよ。スターの8ビートは、手数足数がドラムの本質ではないということを主張しています

THE BEATLES 1

第1位 ジョン・ボーナム

はい、もう1位はこの人しかいないです。ドラマーの絶対王者、ジョン・ボーナムが当然の1位。

もう一時期ボンゾのドラムに夢中だったんですよ私。ツェッペリンの全曲をコピーしようとしたこともあったんですが、1曲1曲ドラムを追っていくたびに彼のプレイの凄まじさに打ちのめされるという絶望的な挑戦でした。

『グッド・タイムス・バッド・タイムス』の頭抜き3連のバス・ドラム、『移民の歌』の凄まじいバス・ドラムのパターン、『アキレス最後の戦い』の高速でテクニカルな8ビート、もうどこを切り取ってもボンゾの魅力って滲み出ているんです。

Led Zeppelin – Good Times Bad Times (Official Audio)
Immigrant Song (Remaster)
Achilles Last Stand (Remaster)

ただ、そういうアイコニックなプレイだけが彼の偉大さじゃないんですよね。なんてことないリズム・パターンでも、もう彼が叩くだけでボンゾのドラムになるんです『永遠の詩』のドラムなんてもう素晴らしいですよ。基本的な8ビートで進行するのに、そこに生まれる迫力とグルーヴ感はもう異次元です。

The Song Remains the Same (Remaster)

コレは個人的な意見なんですけど、ボンゾがドラマーとして活躍できるバンドってレッド・ツェッペリンだけだと思うんです。ロバート・プラント、ジミー・ペイジ、ジョン・ポール・ジョーンズという最強のラインナップがいてようやくボンゾは1ドラマーとしてちょうどいい存在感になる。

他のバンドにボンゾがいても、他のあらゆるパートを食い尽くしちゃって音楽にならない気がするんですよね。それくらい強烈なプレゼンスを持つドラマーなんですよ彼って。「世界最高のドラマー」の称号は伊達じゃないです

レッド・ツェッペリンIV (紙ジャケット仕様)

まとめ

今回は私の選ぶファイバリット・ドラマー5選。お楽しみいただけましたでしょうか。

コレでこの「「みんなでドリームバンドを作ろう!」〜ピエールの場合〜」シリーズは完結。最後に各パートの1位をまとめてみましょうか。

  • ボーカリスト マイケル・ジャクソン
  • ギタリスト デヴィッド・ギルモア
  • ベーシスト ポール・マッカートニー
  • ドラマー ジョン・ボーナム

どうです、無茶苦茶このバンド見たくないですか?ボンゾがド迫力のリズムを刻み、その間を縫うようにマッカートニーが気の利いたベース・ラインを奏で、ギルモアがギターで世界観を構築し、そこをMJの歌声がカラフルに彩る。絶対にいいバンドになりますよ。作曲のメインはマッカートニーとMJでしょうか。

こういう妄想、音楽ファンなら一度は考えるものだと思うんです。それをしっかり企画にしていただいたみの氏には感謝が尽きません。みなさんも是非この企画に参加していただければと思います。それではまた。

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