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感謝と尊敬と愛で選ぶ、Michael Jackson「好きな曲」ランキングTOP50+α

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第30~11位

第30位 “Off The Wall”

実質的1stアルバムの表題曲たるこの“Off The Wall”、よく聴くと結構ヘンテコな曲ですよね。ベース・リフやカッティング・ギター、ホーンにコーラスの役割が複雑に絡まっていて、塊としてのファンクネスではなく多層的なグルーヴを生んだ技ありの1曲。

こういうアプローチ、やっぱり作曲したRod Temperton様様、そして本作をコントロールしていたQuincy Jones様様ですよ。少なくとも当時のMJの技法に、ここまでの洗練と複雑さというのはなさそうですから。というより、当時のアダルト・コンテンポラリーの中でもずば抜けてよくできた作曲の1つじゃないかな。

そこに溌剌としたMJの表現力を乗っけることで一気に瑞々しさが引き出されるのも、きっと狙ってのことでしょう。このケミストリーって“Off The Wall”で何度か聴こえてくるんですが、その最たるものでは間違いなくありますね。

第29位 “Break Of Dawn”

“Invincible”を語る上で、ネオ・ソウルという単語は切っても切り離せません。いわゆるD’Angelo的なものはPrinceに任せるにしろ、この“Break Of Dawn”は間違いなくMJ流ネオ・ソウルの傑作の1つです。

希望に満ちた夜明けを思わせるヘヴンリーな立ち上がり、そこから導かれる独特の粘り気(ある種Stevie Wonder的と言ってもいいかもしれません)を含んだ優雅なヴォーカル、そこに雄々しさまでを感じるのがまさしく“Invincible”の楽曲の特質な訳ですが、荘厳のようで意外にもリズミカルなコーラスとの掛け合いなんて見事だと思いませんか?

そう、幼心にこの曲を聴いていた時、“Off The Wall”の頃に似てるなと感じていたんですよね。当時の彼がネオ・ソウルなど知るはずもないわけですが、もっと端的に、MJの朗らかで伸びやかな歌声に近いものを感じていたんだと思います。流石、いい感性してますよ。

第28位 “Beat It”

この曲がこの位置って、Pitchfork相手なら全力で批判するんですがね。正直に選んだ結果、“Beat It”より好きな曲がわんさか出てきてしまったのでこの位置で登場いただくことになりました。

EVHのギター・ソロが!とか、Steve Lukatherのリフが!とか、ロック小僧を喜ばせる話題はありますけど、それよりもそんなサウンドをモータウン出身のR&Bシンガー(と世間が思っている人物)が背負って最高にクールにキメている、この大胆さをもっと語りたいですね。しかもそれが80’s屈指のホットなロック・チューンになっちゃってる。

幼少期の時点でJBを咀嚼しちゃうくらい柔軟で理解力の高いシンガーが、青年を経てMick JaggarやFreddie Mercuryといったロック・スターと共演した経験値を踏まえるとどうなるか。その答えが“Beat It”です。一撃でここまで正解ぶっ放すのはちょっと卑怯ですらありますね。

第27位 “Speechless”

いやぁ、いい曲だ。アルバム“Invincible”より名作バラード“Speechless”。初めて聴いたのは映画“This Is It”で彼が唐突にアカペラでこの曲を歌うシーンでしたが、あれが何かしばらく知らずにいて、“Invincible”でまさかの再会を果たした思い出の曲です。

いまさらMichael Jacksonの歌がお上手なんてこと言わなくてもいいでしょうけど、この曲のそれに関しては特筆すべきでしょう。メロディを繰り返すシンプルな曲調ゆえ、彼が楽曲の展開に合わせてニュアンスを変化させていく様子がはっきり聴き取れます。開幕と閉幕をそれぞれアカペラで歌っていますが、その差異の鮮やかさには毎度驚かされますから。

そして彼自身、生涯にわたって歌い続けたい曲の1つにこれを挙げています。人々の前で歌う機会はとうとう持ち得なかったのが残念ですが、この子守唄のようでもあり讃美歌のようでもある名曲を彼も気に入っていたというのはなんだか勝手に嬉しくなるんですよね。

第26位 “Wanna Be Startin’ Somethin’”

世界一売れたアルバムの1曲目、よく考えたらとんでもない重責です。それをいともたやすくこなしてくるんだから、この“Wanna Be Startin’ Somethin’”はたまんないですね。かなり産みの苦しみがあった曲でもあるようですが。

入魂の一作“Thriller”にあって、最も凝った曲だと思いますね。リズムの跳ね方にしろ一気にクセの強くなった歌い回しにしろ、そして実は不思議な曲の展開にしろ。彼の作曲でここまでクレヴァーなものって、他にあんまり思いつかないです。しかもそれを全部ひっくるめて躍動感にしつつ、でもテンションを100%までは持っていかない余白も残しているのがとっても巧妙。

この凝りっぷり、やはりQuincy Jonesや彼の手配する一流ミュージシャンからの刺激なんでしょうかね。ライヴでの推進力のあるアレンジもキレがあって素晴らしいんですが、スタジオ仕事の鮮やかさという意味できっちり音源も評価したいと思います。

第25位 “Stranger In Moscow”

これももっと評価されるべき曲だよなぁ……“Human Nature”から遠く10数年、舞台をニューヨークからモスクワへと移し、MJが最早孤独と戯れることがままならなくなった時期の残酷なドキュメンタリー、“Stranger In Moscow”。

冷たい雨音から開幕し、立体的なビートが聳え立つことでいっそうその冷気は容赦なく充満する訳ですが、実によくできた曲です。深くかけられたエコーはMJの細かく震えるビブラートをいっそう生々しく仕立て、掛け合いのようなコーラスとMJの歌唱のちぐはぐさが彼への不理解を克明に描き出す……孤独を歌う曲は数あれど、ここまで残忍なものはなかなか出会えません。

ここまでシリアスだと聴いていて辛い気持ちが勝つこともままあるんですが、プロダクションの観点からどうしたって評価できちゃうのがまたなんともね。こんな歌を彼に歌わせた人類が恨めしくはありますが、きちんと昇華してのけたMJの意地を感じる、実のところ入魂の1曲かと。

第24位 “Someone Put Your Hand Out”

「隠れた名曲」としては、“Shout”かこれかあともう1つか……というくらい、ファンはもれなく好きなのに世界の誰も知らない名曲です。アルバム“Dangerous”期のペプシとのキャンペーンで初めて世に出たバラード“Someone Put Your Hand Out”。

ほぼ全編ファルセットで歌い上げる、その特異的に澄み切った歌声と、スピリチュアルですらあるメロディ。これだけで押し切るのかと思えば、ブリッジで一瞬だけ顔を見せる雄々しい成分にハッとさせられます。そこから流れるように始まるホーンの柔らかな調べもなんとも言えぬ深みがあってね……シンプルですが引き込まれる1曲です。

そうそう、この曲はアルバム“Bad”の時期にはその構想があり、完成までに5年ほどの歳月を要した、相当に難産な楽曲でもあります。それだけの時間をかけて、この途方もない清らかな名曲を生み出したという事実は、彼の完璧主義の結実と言いたいですね。

第22位 “Tabloid Junkie”

これが如何によくできた曲かというのは“HIStory”のレビューでも語りましたね。もしあの投稿を読んでくださった方がいるなら、この位置に“Tabloid Junkie”がくることを特段不思議には思われないでしょう。

ダークでシャープ、そしてエレガント。まるで黒豹のようなその美しさには惚れ惚れとしてしまいます。さっきの“Stranger In Moscow”にも言えるんですが、歌われるモチーフの悲痛さを鑑みてもなお、そのサウンドの緻密っぷりには呆気に取られますよ。“Dangerous”くらいまでは時に悪目立ちしたビートのパンチにも素晴らしい抑制が施されていてね。

“Who Is It”に始まりこの曲、そして21世紀には“Shout”へと繋がっていくこの美学、Michael Jacksonの音楽に何万字もかけて言及するこの記事ではしっかりと強調したいと思います。だって、この側面はどう考えても見過ごされていますから。

第21位 “Who’s Loving You”

私はシンガーとしての Michael Jacksonは過小評価に過ぎると常々思っていますが、その最大の根拠たり得るのがこの“Who’s Loving You”。オリジナルはかのSmoky Robinson率いるThe Miraclesです。

これもスタンダードだけあって色んなバージョンがあるんですが、ちょっとThe Jackson 5のそれは頭抜けてすごいですね。歌い出し、“Whe〜〜n”の表現力ときたら……ここだけで楽曲の力強さがバシッと決まるし、そこからも、モータウンのブレーンによるディレクションはあったにしろ、なぜこの若さでこの引き出しが?となる巧みな歌い回しの連発です。

心の師であるJBやJackie Willsonが漲らせたソウルの爆発力に、変声期前のあどけなさと特有のハスキーな声質を違和感なく同居させる。こんな芸当、そもそも大人には物理的に不可能ですからね。でも普通なら、子供には技巧的に不可能なんです。神童の神童ぶりを見せつけられるような一撃。

第20位 “Remember The Time”

MJファンではないリスナーからの支持がべらぼうに高い1曲というイメージがあります。アルバム“Dangerous”収録の名曲“Remember The Time”。この位置なので当然大好きですけど、なぜこの曲ばかり話題になるのかは正直分かりかねてますね。

無論、いい曲だからなんだとは思います。スピーディーなナンバーも難なく歌いこなすMJですけど、やっぱり根っこがソウルなんだろうな、これくらいのBPMで伸びやかに歌う彼が一番魅力的だと感じますね。この時期らしくビートのパンチは効いていますが、優雅なコーラスで上手く中和してあるのもタイムレスになった要因でしょうか。

で、「ブリッジ・ピープル」の1人でもありますMJ(この洒落が伝わる人、今度飲みにいきましょう)、楽曲のブリッジでの歌唱にとりわけ名演が多いと思うんですが、この曲のそれは最高級ですね。実に熱烈でロマンチック、そこからのアドリブの応酬も堪んないです。

第19位 “You Rock My World”

まーた“Invincble”からですよ。仕方ないですね、傑作なので。でもこの“You Rock My World”に関してはアルバム抜きにして、MJファンではないMJリスナー、“Rock With You”や1つ前の“Remember The Time”を支持するような彼ら彼女らにもっとリーチすべきだと思いますね。

ただの友達ことChris Tuckerとのコミカルな掛け合いから始まるのは、実にリラックスしたオーセンティックなR&Bです。イントロとサビで聴こえる印象的なストリングスのゴージャスさは70’sさながらだし、おおらかなリズムとグルーヴの上で伸び伸びと歌うMJの多幸感には聴いているこっちがニコニコしちゃいます。終盤の情熱的なアドリブも見事。

ただ、ここまでガッツリR&Bやってくれてるアップ・テンポな曲ってあのアルバムでもこれっきりでね……もう少し彼に時間が残されていれば、案外こういう方向性に回帰したのかもしれません。その未来を空想して虚しくなっちゃう程度にはいい曲です。

第18位 “They Don’t Care About Us”

これ、私のようにあの訃報をきっかけに彼を知った人には思い出深い1曲じゃないかな。「生前最後の映像」として、「This Is It」のリハーサルでの“They Don’t Care About Us”の断片が随分とメディアで流れていましたからね。

Queenの“We Will Rock You”が影響元とは言いますが、アンセムとするにはあまりに毒々しい曲ではあります。ただ、これはアルバム“HIStory”のレビューでも書きましたが、ロック的なアプローチと彼が当時沈んでいた闇が共鳴しているのは紛うことない事実です。それに、プロテスト・ソングとして外向きに出力されてもいますしね。

そしてこの曲、ライヴ・パフォーマンスからの連想も大いにありますが、勇壮なビートが軍隊の行進を思わせる仕上がりで、悲痛さの中にしっかりと強靭さもアピールできています。心身ともにかなりシリアスな状況にあって、この屈強さを聴かせてくれる彼を私は誇りに思いますね。

第17位 “I Wanna Be Where You Are”

MJ初のソロ・アルバム収録の1曲ですね、「ボクはキミのマスコット」という邦題に時代と当時の「マイケル坊や」へのイメージを感じますが、Marvin GayeやDestiny’s Childらがカバーもしたソウルの名曲です。

瑞々しいヴォーカルの中に、ちょっぴりの翳り、大人びたほろ苦さみたいな成分を感じるのは私だけでしょうか?実際モータウンでのソロはそういうアプローチを大人たちが狙っていたとは思うんですが、こうも易々と応えてくるとは想定外だったのでは。このビターさというのは、それこそMarvin Gaye筆頭にR&Bの名シンガーが持ち合わせる隠し味の1つでもあります。

たまーに「MJのシンガーとしての輝きは少年期を超えて失われた」なんてことを言う人を見る機会もあって、この人とは美味い酒飲めないなぁと思いつつ、まあ確かにこんな絶品の歌唱聴けばそう言いたくなるよな……と納得もしちゃいますね。

第16位 “I Can’t Help It”

作曲Stevie Wonder、プロデュースQuincy Jones、歌唱Michael Jackson。バース掛布岡田もビックリの布陣でお届けされる傑作メロウ・ソウル“I Can’t Help It”。これがあるだけに“Just Good Friends”はなんでそうなった感が否めませんが……

可憐なローズ・ピアノと蠢くベースの絡み合い、そして抑制的な16ビートから立ち上がる睦言の如きMJのため息交じりの歌唱……もう、この時点でね。アルバム“Off The Wall”というプロジェクト自体に「マイケル坊やからの脱皮」という狙いはあるでしょうが、それをここまでクリーンヒットさせられるのはJonesの老練ぶりのなせる技でしょうか。

でもね、MJだって立派なもんです。セクシーなスキャットからコーラスを振り解いた最終盤でのぐっと熱を込めたヴォーカルまで、1曲の中で見事に表情を変えてきますからね。“Off The Wall”最高傑作論を唱えたくなる気持ちも、この曲の前ではうっかり分かってしまいます。

第15位 “Black Or White”

Michael Jacksonを象徴する曲を1つだけ挙げろと言われれば、私の場合はこれになります。アルバム“Dangerous”の先行シングルとして、彼のキャリアでも屈指のヒットを記録した“Black Or White”ですね。

「肌の色が黒いか白いかなんてどうだっていい」、悲しいかな2025年にも主張し続けなければならないこの単純明快なメッセージを、彼は言葉だけでなく音楽でも高らかに宣言します。ヒップホップという黒人音楽、そしてロックという白人音楽(この表現も正確ではありませんが……)をひとつなぎにして、完全無欠のポップスでユナイトしていますから。

ヒップホップの側でもロックの側でもなく、両者を並列して扱い、結局はポップスと普遍的なメッセージに還元する。こんなことできるの「キング・オブ・ポップ」だけでしょうよ。それも、アルバム“Dangerous”という彼が最も巨大だった時期だからこその御業だと思います。

第14位 “You Are Not Alone”

ビルボード史上初の初登場1位となった傑作バラード“You Are Not Alone”。ペンを執ったのは今や悪名高いR・ケリーですが、そのことはこの楽曲の際立った美しさになんら影響を及ぼすものではないと、最初に断っておきましょう。

極めて内省的で冷ややかなアルバム“HIStory”の中にあって、救いとなるラヴ・ソングですね。「君はひとりじゃない」、きっとあの時のMJが何よりも言ってほしかった言葉でもあったはずですが、正統派シンガーとしての面目躍如、非常に誠実に、センチメンタルに、スウィートに歌い上げています。それはまるで、彼自身が生んだ言葉のように。

この、他者が描いた曲を途方もない感受性でキャッチして出力する表現力、モータウン時代から続く彼の歌唱の才能の中でも最たるものだと思っています。そして最終盤で聴ける驚異的なロング・トーンは言わずもがな、シンガーとしてのMichael Jacksonを語るうえで外せない楽曲です。

第13位 “The Way You Make Me Feel”

「キング・オブ・ポップ」になっていくにつれ、彼の音楽からクラシカルなR&Bの成分は脱落していきました。必然ではあるんですがちょっともったいないですよね。アルバム“Invincible”で回帰するまで、最後の正統派R&Bナンバーだったのがこの曲。

ドラムの音なんてのはモロ80’sなんですけど、要になっているのが裏拍で入ってくる鍵盤です。シャッフルを感じさせないくらいスネアが主張しているところに、一気に体が揺れるグルーヴを提供していますからね。そこを踏まえて、MJの歌声も溌剌とした、なんなら「マイケル坊や」を思い出させる無邪気さにまで接近している印象です。

そしてこの曲、プロデュースしたQuincy Jonesもお気に入りに挙げているほかに、Stevie Wonderもトリビュートとしてカバーしたことがあります。予備知識ではあるんですけど、この辺からもそのブラック・ミュージックっぷりは伝わるんじゃないかな。

第12位 “You Are My Life”

バラードの目立つアルバム“Invincible”でも白眉と言える“You Are My Life”。私がMichael Jacksonに思っている全てを、当の本人に歌われてしまうという不思議なことが起こっている曲です。

シンガーとしての彼には色んな表情がありますが、柔らかさや優しさのパラメータが最高値を記録しているのはこの曲じゃないかな。愛のあまりの気高さに畏怖するように、あるいは我が子を抱きしめるように(この曲の、というより“Invincible”という作品における「You」は子どもたちのことだと思っています)、慎重に丁寧に歌い上げていますからね。

私がこの曲を聴いて連想するのは、雪深い森に太陽の光が降り注ぎ、世界がキラキラと輝いている様。どうだロマンチックだろ。そしてこんな美しい世界を教えてくれた貴方こそ、私にとっての太陽、夜空に輝く月、人生そのものです。

第11位 “Smooth Criminal”

Michael Jacksonの数ある名曲の中でも、「キラー・チューン」と呼びたくなるのはこれっきゃないです。白のハットとスーツ、そして「ゼロ・グラヴィティ」のパフォーマンスで彼のアイコンともなっている“Smooth Criminal”。

彼の歌声を厚く重ねたコーラスで展開するサビは90’s以降1つの典型になるものだし、ベース・リフのインパクトは“Thriller”や“Billie Jean”といった前作のヒット曲の流れを汲んでいて、コンポーザーとしてのMJの美味しいところがこれでもかと詰まった曲ですね。そしてアルバム“Bad”で目立ち始めたキレのあるヴォーカル・スタイルも、この楽曲でのパフォーマンスがベスト。

アルバム“Bad”特有の今の耳で聴くとちょっとドタバタしすぎなサウンドも、この曲にとってはむしろプラスです。なまじMJが途方もなくクールに踊るもんだから失念しがちですが、作曲としてもキャリア・ハイでしょう。

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