スポンサーリンク

About A Rock’n’Roll Band

Pocket

2月1日に、the pillowsが解散を発表しました。「何月何日に解散します」や「解散ツアーをします」ではなく、2月1日をもってthe pillowsが解散したことを、報告しました。

これがなんとも、ボディブローのようにジワジワときていまして。1月の新譜の話だったり、80’sプレイリストだったり、他にも色々準備していたものはあるんですけど、まずはこれについて自分の中で吐き出しておかないといけないなと思い文章にしている次第です。

最初に白状しておくと、私は決してthe pillowsの熱心なファンとは言えません。アルバムも全部聴けてはいないし、ライヴに足を運んだ経験もないですから。私の古い付き合いにthe pillowsを愛してやまないナイスガイがいるので何度かチャンスはあったんですけど、後回しにしちゃっていました。馬鹿なことをしたもんです。

ただ、そんな私ですら、彼らの解散はショックでしたね。確かにアルバムのリリースは2018年の『REBROADCAST』以来止まっていたし、山中さわおのソロ活動も増えてはいた。それでも、the pillowsってなんとなくいつまでもそこにいるような、そんな思い込みをしていました。

それというのも、the pillowsは変わらないバンドだったから。バンドの進む道を確立した渾身の傑作『Please Mr.Lostman』から、その捻くれつつも真っ直ぐなギター・オルタナティヴは不変であり続けました。それこそが、the pillowsが「永遠のネクストブレイク」と言われ続けた理由でもあり、数々のロック・バンドからリスペクトされる理由でもあったと思うんです。

bank bandによる『ストレンジ カメレオン』、あるいはBUMP OF CHICKENの『ハイブリッドレインボウ』、こうしたカバーを聴けば、ほんの少し違う方向へ進めばthe pillowsはJ-Popにもなり得たような気がしてくるんですよ。それくらい、山中さわおのソング・ライティングは普遍的なものがありますから。

でも、the pillowsはとうとうJ-Popになろうとはしなかった。それはバンド・サウンドにこだわるという意味でもそうだし、彼らの音楽の温度感の上でも言えることだと思います。それこそMr. Childrenのように力強く手を引いてくれるでもなく、BUMP OF CHICKENのように優しく側にいてくれるでもない、ただずっとこちらを見つめるだけ、そんな温度感。

the pillowsがリスナーに対して何か投げかけたことって、本当に少ないと思います。「俺はこうありたい、俺はこうしてきた。俺はこうだ。」、それだけを愚直に歌ってきたバンド。だからむしろ、「君の夢が叶うのは誰かのおかげじゃないぜ」「好きな場所へ行こう 君ならそれができる」と歌った『funny bunny』は異色ですらあるんです。だからこそ、the pillowsの手を超えたある種のアンセムにもなり得たのでしょうけど。

それは言い換えるなら、the pillowsが嘘のないバンドということ。世間とのズレを感じながらも、それでもロックンロールへの憧れを飽きもせず鳴らし続けたバンドです。その音楽に誤魔化しがないからこそ、山中さわおの才能が枯れていくのがはっきりと感じられることもありました。でもそれすら、the pillowsの嘘のなさの表れ。

その純度の高さが最も素直に出ているのが、『雨上がりに見た幻』という曲だと思うんですよ。結びの歌詞、

足跡のない道を選んで

ずいぶん歩いたな

荒野の果て 何処かにきっと

足跡 残ってる

それだけが それだけが

生きた証

それだけが それだけが

僕らの誇り

これこそがthe pillowsです。『雨上がりに見た幻』は20周年を記念して作られた楽曲ですけど、それ以前から似たようなことをずっと歌っているし、それ以降も同じようなことを歌い続けてきましたから。

であれば、もしthe pillowsでやるべきことをやりきってしまった、あるいはthe pillowsを続けることが苦しくなってしまった、そうなった時点で、惰性でバンドを続けるという選択肢は彼らにはそもそもなかったんでしょう。解散の声明に「いつか再始動があるかと期待させるような言葉を使うのはためらわれ」たとあるのも、解散という決断に嘘がないから。

解散ライブもなし、最後のツアーはマニアに向けられたコアなセットリストで、『funny bunny』も『ストレンジ カメレオン』も『ハイブリッドレインボウ』もやらない。不親切もいいところですよ。でも最後の最後にリスナーの方を向くなんて、やっぱりthe pillowsらしくない。いつも通りぶっきらぼうに、誠実に解散していったんだなと思います。

そりゃあ、寂しいですよ。でもそれ以上に、ここまでロックンロールを続けてくれて、進んでくれて、ありがとうと言いたいです。最後にもう1曲だけ引用させてください。

今夜もロックンロールの引力は万能で

道なき道を切り開いて行くんだ

馬鹿げたメッセージ

撒き散らすから受け取ってくれよ

終わらない日々を過ごした

それが全て

About a rock’n’roll band

the pillows / About A Rock'n'Roll Band

コメント

タイトルとURLをコピーしました