1日遅れでの更新となってしまいました。「オススメ新譜5選」です。バックナンバーはこちらからどうぞ。
先週がかなりてんこ盛りのリリースだったこと(あと個人的な多忙)もあって、今週は新譜に手を回す余裕がそこまでなかったことをまずここで告白させてください。それでもこの企画を成立させられるくらいは聴いているつもりなんですけど、聴き漏らしはもしかしたら結構多いかもしれません。
その上で、私ピエールの独断と偏見による5枚の新譜、早速レコメンドしていきましょう。もし「なんでこれが入ってねえんだ!」というのがあればコメント欄まで是非ともクレームをお願いしますね。それでは参ります。
“Everything Was Forever”/Sea Power
今週のベストはこれでしょうか。Sea Powerの“Everything Was Forever”です。
80’s後期のオルタナティヴ/インディーをどこか彷彿とさせつつ、クドいくらいに壮大なのが私好みです。エッジの立った楽曲はそのニヒルさだけで言うとポスト・パンク的なんですけど、サウンドがやけに壮大で情熱的なもんだから一瞬U2を連想しちゃうくらいでね。
それでいて静謐な楽曲に関しても、コクトー・ツインズか何かかと思うほどに神秘的で。ザ・ストロークスが提示した21世紀ロックの基本姿勢である「引き算の美学」をまるで無視したハイ・カロリーなアルバムと言えますから。
とはいえ、メロディがノスタルジックなのが面白いところですね。80’sインディーに照らし合わせるなら、それこそR.E.M.的な質感を僅かに感じられるような。ただ、そこをシンセサイザーとエフェクティヴなギターがシンフォニックに塗り潰していく。この叙情性、大好物です。
47分とロック・アルバムとしては個人的にギリギリのサイズ感なのも嬉しいポイントですね。この音像が1時間も続くと流石に胃もたれ起こしそうですけど、そのサイズ感と作品のトータリティで聴かせ切ってしまう。アルバムとしてもよく纏まったいい作品だと思います。
“Ocean Child: Songs of Ono Yoko”/Various Artists [Compilation]
ちょっと変わり種ですけど、最近の個人的な関心もあって是非ともレコメンドしておきます。オノ・ヨーコのトリビュート・アルバム、“Ocean Child: Songs of Ono Yoko”です。
デヴィッド・バーン筆頭に、ヨ・ラ・テンゴやフレーミング・リップス、Japanese Breakfastとかなり豪華な顔ぶれが参加しています。それだけで一聴の価値アリなんですけど、それ以上に面白いのがどの曲もすこぶるカッコいいんですよ。それも現代的な意味でね。
それはもちろん参加アーティストの楽曲に対する解釈がお見事だというのもあるんですけど、オノ・ヨーコというアーティストの強度あってのことですから。現代的に解釈してもなお生き残る、オノ・ヨーコの鋭敏な感性がこの作品では生き生きと、そしてアーティスティックに主張しています。
個人的にMVPを与えたいのがデス・キャブ・フォー・キューティーの“Waiting For The Sunrise”です。彼らのポップなスタイルをしっかり打ち出しつつ、楽曲への手心は控えめでね。オノ・ヨーコへのリスペクトも感じられるし、バンドにもマッチしていていい選曲です。
最近ジョン・レノンについて色々考えを巡らせていて、その中でオノ・ヨーコという人物にも向き合っていた最中のリリースだったのが個人的に嬉しくて。まだ詳しくは語れないんですけど、私の自説を大いに補強する作品になってくれたんですよね。彼女への誤解と偏見を取っ払って、とりあえず聴いてみて欲しいもんです。
“Once Twice Melody”/Beach House
いやはや、今年はインディー界隈の大物のリリースが続きますね。ドリーム・ポップ・ムーヴメントを牽引したBeach Houseの大作、“Once Twice Melody”です。
正直なところ、手堅い名作という印象ですね。抽象的なメロディと浮遊感のあるサウンド、これぞドリーム・ポップという音楽を丁寧になぞっている作品。ドリーム・ポップ自体00’sに人気を博した音楽潮流なので、真新しさというのはあまり感じられません。
ただ、それでいいんじゃないかと思うんです。真っ正面からドリーム・ポップに向き合った、ものすごく真摯で職人気質なアルバムです。幻想の世界へ聴き手を誘う、Beach Houseの魅力を余すことなく表現していますから。
アルバム全体としては1時間半ほどあるフルボディな作品なんですけど、4つのチャプターに分かれた構造なので気疲れしないのもアルバムとしてソツがない。それぞれにキチンと緩急も用意されているし、何なら元々が時間を忘れて陶酔しちゃう音楽なので飽きることなくアルバムに埋没できます。
さっきも言った通り、ドリーム・ポップとして実に堅実なのでこれ以上言葉は要らない気がします。これまでもドリーム・ポップが好きだった方は期待通りに楽しめるアルバムですし、初めてドリーム・ポップに触れるという方もこれを入り口にして何ら問題ないでしょうからね。
“Continuance”/Curren$y & The Alchemist
スーパーボウル以来ヒップホップが個人的にとてつもないリバイバルを起こしているんですけど、その流れで聴いたアルバムとしてご紹介させてください。Curren$y & The Alchemistの“Continuance”です。
グルーヴィーなヒップホップが大好きな私からすると堪らない1枚でしたね。じっくりと聴かせるリズムとトラックがとにかく上質です。この作品の背景をそこまで知らないんですけど、これはThe Alchemistのプロデューサーとしての手腕が発揮されたと見ていいんでしょうか。
サウンド全体としてはヒップホップというよりはネオ・ソウル的な印象も強くて。もちろんビートはヒップホップのそれなんですけど、這うようなベースやローファイな質感なんかはソウル/R&Bに精通している方にもオススメできる心地よさです。“The Final Board”のアウトロで聴けるギターなんて、なかなかどうして泣けますから。
肝心のラップも作品の質感に奉仕するシックなフロウが目立ちます。バキバキのヒップホップも好きですけど、やっぱり根っこにクラシカルなソウル/R&Bがある立場からするとこういう作品により親近感を覚えてしまいますね。
私も元々そうでしたけど、ヒップホップに苦手意識を持っている人って多いと思っていて。特にこのブログにはね。そういう方にはブラック・ミュージック的にヒップホップを捉える体験が大事だとも思っているんですけど、それにお誂え向けの1枚です。
“Riot”/Tennyson
エレクトロニカ・アーティスト、Tennysonの“Riot”。この企画でなかなかエレクトロニカって触れる機会が持ててなかったんですけど、これは流石に5枚の中に入ってくる作品ですね。
個人的に音楽にはポップネスを是非とも求めたいので、ビートが先行するタイプのクラブ的なエレクトロニカは正直苦手で。じゃあなんでこの作品をリストに入れたかというと、このアルバムには通底したメロディの心地よさがあるからなんですよね。
リズムに重点を置いた作品であることもまた事実なんですが、ややか細さもあるTennysonのヴォーカルがしっかりメロディを情緒的に際立たせています。しかも両者が分離している印象もなくて、メロディからリズムに歩み寄りも感じられるのが作品としていいバランス感覚だと思います。“Iron”なんてその好例ですかね。
なんならインディー・ポップ的な感覚を持てる瞬間もあって、楽曲で言うと“Leaves”辺りでしょうか。本作の中では比較的有機的なサウンドのナンバーなんですけど、サウンド自体は開けていてビートも効いている上で、スケール感が個人的なんですよね。
そこまで電子音がピコピコ鳴っていない、しっとりとした聴き心地もある1枚です。弊ブログにお越しの方はクラシカルな感性の持ち主であることも多いかと思いますが、そういう人にも是非ともオススメしたいですね。すごく聴きやすくて、心に沁み渡る上質なポップ・ミュージックではないかと。
まとめ
ふう、1日遅れではありましたがなんとか企画完遂です。もう皆さんTears For Fearsの新譜に腰を抜かしている頃でしょうけど、改めて先週のリリースをこれで振り返ってもらえればと思います。
ここでも懺悔なんですけど、Parannoulの新しいアルバムもまだ聴けてないんですよね。評判もそれなりにいいので、上半期ベストまでには聴き込んでしっかりベタ褒めできるようにしておきます。
さて、今週のリリースも面白いことになりそうですね。さっきも名前を出したTears For Fearsの新譜だったり、あるいはGang Of Youthsあたりも要注目ですから。その辺りはまた次回お話できればと思います。それではまた。
コメント
拝読と試聴させて頂きました。
特にオノヨーコのトリビュート盤、面白そうですね。
どうも有り難うございます。