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洋楽スタンダードをカバーで楽しもう!『ヘルプ!』編

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日本が世界に誇る文化にカラオケがありますよね。好きな曲をただ聴くだけじゃなくて、自分でも歌いたい!こういう感覚は普遍的なものだと思います。

我々のようなただの音楽ファンでもそう思うんですから、遥かに感性や才能に優れたミュージシャンがオリジナルだけじゃなくて好きな曲を自分たちでもやりたい!となるのは至極当たり前の話で。

そうして生まれた、いわゆるカバー楽曲というのは世の中にたくさんあります。そして、多くの人に愛される名曲は、その分多くのカバーも生まれるんですよね。

今回はザ・ビートルズの名曲『ヘルプ!』をピック・アップ。この曲の様々なカバー・ヴァージョンの聴き比べといきましょう。それでは、参ります。

ザ・ビートルズ(オリジナル)

The Beatles – Help!

まずはオリジナル。いうまでもなくザ・ビートルズです。

いやあ、やっぱり何度聴いてもいいですね。とにかくジョン・レノンの声が素晴らしい。最高のロック・シンガーですよ。それに主旋律を追いかけたり追い越したりするコーラスの妙も流石です。

ビートルズの代表曲でもあるのでこれ以上何かコメントをさし挟むの野暮だとは思うんですが、レノン自身この曲は傑作だと認めているみたいですね。結構レノンって自分の曲をボロクソ言う人なんですが、まあいくらなんでもこの曲にケチつけるのは作った本人であっても私が許しません

ポール・マッカートニー

Paul McCartney – Strawberry Fields Forever/Help!/Give Peace A Chance (1990)

そんなレノンも渾身の出来と語るこの『ヘルプ!』、レノン=マッカートニーの片翼であるポール・マッカートニーにとっても思い入れが深い楽曲のようで、ライブでカバーしたことがあるんですよ。元ザ・ビートルズなのでカバーという表現が適切かどうかは怪しいところですけど。

ジョン・レノンの生誕50周年にあたる1990年に故郷リヴァプールでコンサートを行った時に、彼へのトリビュートとしてレノン・メドレーを披露。『ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー』と『平和を我等に』と共に歌われました。

この選曲、実にニクいですよね。音楽家としてのジョン・レノンを誰よりも理解し、そして愛していたのは、誰よりも近くで彼の才能を目の当たりにし続けたマッカートニーだったんでしょう。

レノンのハードで枯れた歌声と対照的な、どこかいたずらっぽい優しい歌声。まるで天国のレノンに語りかけるようです。これ以上語ると泣けてくるのでこの辺で。

カーペンターズ

The Carpenters – Help – Live at Budokan (Japan) 1974

『ヘルプ!』のカバーで一番有名なのはこのバージョンじゃないでしょうか。カーペンターズがアルバム『遥かなる影』で発表したカバーです。

この曲を真っ向からカバーする時に一番の障害って、やっぱりジョン・レノンの歌声だと思うんですよ。あの強烈な存在感は真似しようとしたってできないし、仮に真似したところでそれじゃただのモノマネ大会になってしまう。

ただ、このカーペンターズのカバーはそこが秀逸なんですよね。カレン・カーペンターという、天使のように優しく透き通った歌声の持ち主ならば、オリジナルと違ったアプローチで歌うことができるんです。

スタジオ録音のヴァージョンも好きなんですが、1974年の武道館公演でのテイクが個人的にお気に入りなのでそっちを紹介しています。ドラムを叩きながらにこやかに、伸びやかに歌う彼女の姿には思わず引き込まれてしまいますね……

桑田佳祐

「HELP!」 桑田佳祐

日本でも数多くカバーされているこの曲ですが、ここでは桑田佳祐のバージョンをピックアップ。

テレビ番組の企画なんでしょうか、ちょっとした小芝居を挟みながらのカバーですけど、その完成度は流石桑田佳祐。かなりオリジナルに忠実、コーラス・ワークや演奏もほぼ完コピですね。

桑田佳祐も歌手としてのオリジナリティが素晴らしいシンガーですけど、このカバーではかなりレノンに寄せて歌っている印象を受けます。もちろん彼の歌声の面白みはしっかりと残っているんですけど、そこにオリジナルへのリスペクトを含ませているというか、ともかく絶妙です。

本当にこの人器用ですよね。なまじ特徴的な分ネタにされがちな部分もあると思うんですが(本人が割とふざけたことやってますし)、やっぱり素晴らしいミュージシャンなんだと改めて思います。

ディープ・パープル

Deep Purple – Help (Live for TV, 1968)

ここまでに紹介したカバーって結構正統派というか、オリジナルの魅力を残した上で勝負しているものだと思うんですが、ここらで変わり種といきましょう。

ハード・ロックのレジェンド、ディープ・パープルが1968年にカバーしたバージョン。ちょっと一旦聴いてみてください。

……ね?変わり種でしょ?ディープ・パープルがカバーしたっていうんだからバリバリのハード・ロック・アレンジかと思いきや、お上品なサイケという。

ジョン・ロードイアン・ペイス、そしてもちろんリッチー・ブラックモアというバンドの中核を担うメンバーはこの時からいるんですけど、実はバンドがハード・ロック路線に進むのは1970年頃から。この時期はアート・ロック志向というか、なんならプログレの方が方向性としては近いぐらいなんですよ。

そういう、ディープ・パープルのあまり注目されない時代のカバーということで、なかなか面白い音源だと思ってます。それに間奏のロードのキーボードなんて普通にカッコイイですしね。

映画『イエスタデイ』

Yesterday (2019) – Help! Scene (8/10) | Movieclips

最後に紹介するのは、2019年の映画『イエスタデイ』でのカバー。

結構話題になった映画ですよね。ある日いきなりザ・ビートルズがいなかったことになった世界で、唯一ザ・ビートルズのことを覚えていた男が彼らの楽曲を発表していく。その中で彼は様々なドラマに巻き込まれて……という筋書きの作品。

映画そのものの感想は置いておくにして(いずれこの映画のレビューもしたいですね)、あれよあれよとスターになってしまった主人公がデビュー記念ライブで演奏したのがこの『ヘルプ!』。

キャッチーなポップスのオリジナルに対して、このヴァージョンは超アップ・テンポのパンク仕立てのアレンジ。望まない形でスターになり、恋人も去ってしまった主人公の破れかぶれな心境が表れています。

実際レノンも、アイドルとして祭り上げられることへの苦悩をこの曲で表現している訳ですから、こういうフラストレーションの爆発としては御誂え向きなナンバーなんじゃないでしょうか。激しいアレンジでもしっかり楽曲の魅力は残っているのも流石はザ・ビートルズです。

まとめ

今回はザ・ビートルズの『ヘルプ!』のカバーを5つ紹介していきました。

やっぱりカバーっていいですよね。魅力的なオリジナルにどういうアプローチを仕掛けるのか、そういった楽しみ方ってカバー楽曲でしかできないものですから。

それに作曲をしない分、そのアーティストの表現力みたいな部分が浮き彫りになるのもカバーの面白いところ。秀逸なカバーを聴くと思わず「その手があったか!」と膝を打ってしまったりなんかして。

比較的有名なヴァージョンを紹介してきましたが、きっと探せばまだまだ『ヘルプ!』のカバーってたくさんあるんでしょうね。今回は割愛しましたけどTHE ALFEEもカバーしてましたし。

そういう、新しい音楽を探すのとは一風違った視点で探求できるのもいいところでしょうか。いいとこしかないですね。好評なら第2回もやりたいと思っていますがどうなることやら。それではまた。

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