先週から話題騒然、弊ブログにお越しの方でこのニュースを知らないなんて方はいないでしょうがあらためて。2025年、オアシスが再結成します。いやはや、なんとめでたい!
私にとってのオアシスって「間に合わなかった最後のロック・スター」なんですよ。彼らの解散が2009年という、どのみち無理だったとはわかりつつも何とかなったかもしれないと後悔させてくる絶妙なタイミングでね。
なので彼らの再結成にまつわる動向、リークがあってからの数日間ですね、はものすごくソワソワしてしまいました。「どうせリイシューの告知」みたいな邪推を見てはガッカリし、いやでもあの兄弟があそこまで大事にするってことは……と期待し。そこまで大ファンという訳でもなかったはずなんですけど、自分でも不思議な感覚でしたね。
で、蓋を開けてみたらば本当の本当に再結成ですよ!ま、まあ、本当に再結成されてライヴをやるかは当日まで分からないですが。特にあの兄弟ならなおさらにね。それでも、あの2人が和解したっていうだけで、2024年の音楽シーン最大のトピックになり得るスクープです。
さあ、ならば私も大いに便乗しようじゃありませんか。このブログで何度かやっている、アーティスト単位でのランキング企画、オアシス編です。
先にレギュレーションに断りを。これまでデヴィッド・ボウイやスピッツでこの手のランキングやった時も、私は「オリジナル・フル・アルバム」であることにこだわってきました。ですので、今回対象とするアルバムはのべ7枚。ただ、流石にアレに触れないというのは不誠実なので、番外編としてまず紹介してからランキングに移りましょう。では、どうぞ。
番外編 “The Masterplan” (1998)
番外編というのがこの作品ですね。1998年発表の“The Masterplan”。シングルのカップリングに収められた楽曲をコンパイルした「裏ベスト」的な立ち位置の作品です。これ、ファン人気もすごく高くて、ライヴでのレパートリーも多いのでこの手のランキングではだいたい対象になり、かつ上位にいがちなんですが。
やっぱりさっきも触れた「オリジナル・フル・アルバム」かどうかは、私の中で大きな意味があるので。そもそも制作時期もバラバラで、1枚のアルバムとして語ることが難しいです。しかしながら、楽曲のレベルがものすごく高い点は事実ですし、そうは言っても個人的に好きな楽曲もいっぱいあるのでね。
やっぱりベストはオープニングの“Acquiesce”でしょう。はじめてギャラガー兄弟の2人でヴォーカルを務めた楽曲ですけど、やっぱりこういうロック・バンドのドラマみたいなものに私は弱くてね。それにリアムのガラの悪いロック・ヴォーカルから、サビでのノエルの穏やかかつ力強い歌声へのコントラストも鮮やか。それに楽曲としても、エネルギッシュなギター・ロックとしてのオアシスとメロディックなポップスとしてのオアシスを上手い具合に折衷できていて。なぜオリジナル・アルバムに入れなかったのか常々疑問に思う名曲です。
そもそもこの作品に収められているのは3rd”Be Here Now”までの音源ですけど、それってオアシス最良の時期とも言える訳で。カップリングとはいえ、その水準はものすごく高いですよ。2ndにその断片が収められている“The Swamp Song”はオアシス流ギター・ロックの中でも屈指の出来栄えですし、ノエルが歌う“Half The World Away”なんて”Rubber Soul”くらいの時期のザ・ビートルズを思わせる佳作です。そう、ノエルがヴォーカルを担当した曲が多いのも本作の特徴でしょうかね。
ただ、これオアシスのファンには怒られそうですけど、私が本作で一番よく聴くのは“I Am The Warlus”のカバーですね。あの兄弟のビートルズ愛は誰もが知るところですけど、公式に音源化された唯一のカバーがこの曲ってのがいいですよね。(アルバム外で音源化されたものが複数ありました。恥ずかしいリサーチ不足ですね……ご指摘してくださった方、ありがとうございます)
ある時期までのオアシスにあったいい意味での締まりのなさ、リズムだったりサウンド全体がカチッとしていない気怠げな感覚って、こういうサイケの成分に由来しているのかなと思ったり。またリアムのヴォーカルがいいんだな。世の中を舐め腐ってる、最高にイカした歌声だと思いません?
第7位 “Heathen Chemistry” (2002)
さあ、ここからはランキング本編へ。残念ながらワーストはこの作品です。5thの“Heathen Chemistry”。オアシスに関してはどうしようもない駄作というものはないと思っているので、称号ほどに低く見ている訳ではないんですけど。
1曲目の“The Hindu Times”、人気の高いシングル楽曲ですけど、こいつを聴いた時に前作”Standing On The Shoulder Of Giant”とのコントラストに思わず心躍るのは紛れもない事実です。かなりザラついたロック・サウンドへと原点回帰していて、聴いていて手堅さがありますよね。ただこの手堅さには功罪ありまして、ちょっと全体としてパンチに欠ける、やや地味になってしまった感はあるのかなと思っています。
傑作バラード“Stop Crying Your Heart Out”と小品ながらリアム作曲のナンバーならばキャリア随一の“Songbird”、この2曲が続く展開なんてのはグッとくるんですけどね。あとは”Happiness Is A Warm Gun”オマージュの大作“Born On A Different Cloud”からダーティーな“Better Man”というリアムの楽曲2連発でクロージングする流れはかなり好きな部類です。ラストのこのひりつき、ガレージ・リバイバルに呼応してるのかなと個人的には解釈しているんですが。
ただ、それ以外の楽曲に引っ掛かりがあまりないというのと、前作のようなプロダクションの変化で意表を突くこともない。全体として手癖で作られたようなイメージなんですよね。本作からはノエルにソング・ライティングを依存していた体制を変えるべくアンディ・ベルとゲム・アーチャーも楽曲提供も増えるんですけど、正直ソング・ライターとしてのリアムに喰らいつくようなものはないですから……その中でさっきも触れたように、ノエルの作曲能力の向上は本作における重要な成果ですし、この軽い聴き味もこれはこれで割と好みではあるんですが。
第6位 “Don’t Believe The Truth” (2005)
で、続いては”Heathen Chemistry”の次作にあたる“Don’t Believe The Truth”です。このアルバム、チャート・アクションも批評も好調だったと何かで読んだ覚えがあるんですが、個人的な順位としてはこの辺りですかね……
アルバム全体の味つけとして、“Heathen Chemistry”の延長線上にある作風ですよね。堅実なロック・アルバムという趣で。それが2作品続くと流石にちょっと退屈にも思えてくるんですけど、こちらの方がより楽曲単位の精度が高いような印象があります。後期の代表曲“Lyla”を筆頭に、ノスタルジックな“The Importance Of Bring Idle”、ラストを飾った“Let There Be Love”と、ノエルの作曲は前作に比べるとかなりの好調に思えますね。
ただ、ノエルが書いた楽曲数そのものはアルバム中約半数の5曲とかなり控えめ。その分リアムやアンディ・ベルが頑張っていてね。もうこのアルバムくらいになると、ソング・ライターとしてのリアムはきっちり兄貴と渡り合えるくらいの成長をしていると思います。“Love Like A Bomb”とか、すごくいい出来の楽曲じゃないですか?それに、この時期のアルコールでずいぶんくたびれてしまったリアムのヴォーカルの美味しいところを、流石は本人しっかり捉えているような気がしてね。
それに、本作制作で参考にしたというのがブリットポップのルーツでもあるザ・ラーズだというのは面白い。前作のさらりとしたテイストを引き継ぎつつ、そこにウェッティさやほんのりとした陰影のあるUKらしさが強調されたトータル・イメージ、ここも”Heathen Chemistry”よりこっちを支持したくなる理由の1つです。
第5位 “Dig Out Your Soul” (2008)
「今のところ」ラスト・アルバムとなっている、“Dig Out Your Soul”ですね。この「今のところ」というのが嬉しいじゃないですか。スタジオ入りしたみたいな情報も見かけましたから、ひょっとするとひょっとするかもしれません。
UKロック特有の湿気みたいな部分にフォーカスした、オアシスの中で最もダウナーなアルバムという印象です。“The Turning”のアウトロで引用されているのが“Dear Prudence”というのがなんとも象徴的ですよね。それにサウンドに関しては“The Shock Of The Lightning”や“Ain’t Got Nothin’”が好例ですがギター・ドリブンなスタイルに戻っているし、ある種のヘヴィネスみたいなものを感じさせすらする。やや軽すぎると評価できた過去2枚の弱点を、上手く解決できてるんじゃないでしょうか。
それと、久方ぶりにオアシスがビートルズ趣味、ないしサイケ趣味を丸出しにしているのも個人的に嬉しいポイントです。曲調がもろに晩期のレノンな哀愁漂う“I’m Outta Time”(実際にレノンのインタビューをサンプリングしてます、どんだけ好きなんだ……)、それからラスト・シングル“Falling Down”のどんよりとした不穏さ、あるいはアウトロでシタールが聴こえてくる“To Be Where There’s Life”、この辺りに顕著ですね。
ただ、このアルバムのウィーク・ポイントを挙げるならば、際立った名曲に欠ける点なんでしょうかね。アンセミックでメロディアスというオアシスの個性を活かしたものがあまり聴けない、もっとアンサンブルやサウンドに特化したアルバムになっていて。「あなたも私も、みんな大好きオアシス」を求めるとそこが引っかかってしまう懸念はありますが、視野を広く、ロック・アルバムとして聴いてやるとまとまりがあってパリッとしたいい作品になってると思いませんか?
第4位 “Be Here Now” (1997)
リアムがフェイバリットに挙げ、かたやノエルはキャリア・ワーストに挙げる。ギャラガー兄弟かくあるべしというエピソードで槍玉にあがるのがこの3rd“Be Here Now”です。正直私も最初の2枚とそれ以降では聴き込みのレベルがかなり違ってくるので、この企画で久しぶりに挑戦しました。
ここに至ると1stの頃の勢い任せでやんちゃくれなロック・サウンドというよりは、もっと熟練した風格のある作曲を突き詰めている印象です。それが顕著に表れているのが、本作収録の楽曲がやたらと長くなっている点でしょうね。ラストのリプリーズを除けば、5分未満の楽曲はわずか2曲。それでも4分後半とかですし、7分オーバーの曲もいくつかありますから。おかげさまで、12曲という収録曲数に対してアルバムのラン・タイムは驚異の72分。楽曲の平均タイムはきっかり6分ということになります。
ここがものすごく評価の分かれるポイントだと思います。個人的にも長すぎるアルバムというのは苦手ですし、ましてオアシスのようにメロディの質で勝負するタイプのバンドと長大な曲の相性ってよくないですからね。実際、その点を指摘して冗長なアルバムという風に理解したくなる気持ちはわかります……が、その趣向が“All Around The World”という名曲を生んだのであれば私としては是非とも擁護したくなりますね。“Hey Jude”と“All You Need Is Love”が悪魔合体を果たしたような、本当に素晴らしい1曲。
その他にも“Stand By Me”や“Don’t Go Away”のような、オアシスのキャリアでも最上位に位置付けていい傑作はしっかりと収録されていますから。ただ、どうしても全体像としてはぼやけがちになってしまうのが引っかかるんですよね。曲によっては冗長な節もあるし、それにミックスも妙にバランスが悪くて。重厚感を求めたのでしょうけど、ギターの音がやたら大きくてね。曲によってはリアムのヴォーカルすら食いかねない。オアシスなんて極論リアムがいいメロディを歌いさえすれば成立する、それくらい彼の歌声って大事な要素なんですがね。
そのプロダクションの荒さこそ、ノエルが本作をこき下ろす要因です。確かにそこのところを上手くやっていれば、今よりさらに評価されることは確実でしょう。ただ久しぶりにこのアルバム聴いた率直な感想として、全然名盤として楽しめてしまったんですよね。ギターのうるささだって、今の感覚で聴くとシューゲイズ的な面白みと取ることができないでもないですし。少なくとも「オアシスは2ndまで!」というよくある言説、ここに待ったをかけるに足る充実の1枚だとは思います。
第3位 “Standing On The Shoulder Of Giants” (2000)
個人的に今回のリスニングで最も株を上げた1枚はこれですね。まさか第3位につけることになろうとは。自身でレーベルを立ち上げ、メンバーも刷新された中でリリースされた新境地、4th “Standing On The Shoulder Of Giants”です。本作からベースには元ライドのギタリスト、アンディ・ベルが参加してますね。これ本当にどういう人事だったんだろう……
もうアルバムを再生するや否や、ここまでの作品との質感の違いは明らかですよね。インストゥルメンタルの“Fuckin’ In The Bushes”で開幕しますが、これがUKビッグ・ビートの硬さとサイケデリアのスケールの大きさを共存させた見事なトラック。ノエルがケミカル・ブラザーズと共演した過去もありますから、そういう文脈をしっかりオアシスに還元しているのは3rdまでにはなかった野心的な試みです。かと思えば続く“Go Let It Out”はこれぞオアシスっていうミドルなロック・チューンで。とはいえこっちもサウンドのデジタルな分厚さや演奏のダイナミズムは発展を感じさせます。
ここまでサウンドにこだわったオアシスの作品ってこれまでになかったと思うんですよ。いいメロディといいヴォーカルでロックンロールしていればそれでハッピー、みたいな作品だったので。もちろんいい意味でですよ。ただ、その方向性をどれだけ突き詰めても”Don’t Look Back In Anger”を越える名曲を生み出すのは苦しいじゃないですか。
そこでプロダクションによる変化を求めたというのはいいアプローチだと思いますし、本作のやたらと壮大なサウンドスケープもキャリアを積んだことで生まれたオアシスの貫禄と上手く噛み合っていて。ガレージ・リバイバル直前ということもあって、やや時代がかって聴こえちゃうのも事実ではありますが。
そのうえでまるっきり60’sサイケな”Who Feels Love ?”や初となるリアム作曲の“Little James”での微笑ましいまでのジョン・レノン・ライクなメロディ、この辺にかつてのオアシスの魅力もしっかり残っている。”Little James”に関しては、ノエル・ギャラガーというコンポーザーに頼りっきりのスタイルからの脱却という本作の狙いから生じたものとも言えると思います。あとは“Where Did It All Go Wrong ?”や“Sunday Morning Call”なんかの端正な作曲も「オアシスっぽい」楽曲としてアルバムの中でいいスパイスになってますね。
上位2枚に匹敵する名盤とまでは、いくらなんでも言えません。それでも、サウンドにもしっかり意識を向けている点、それから作品としてのスケールは大きくしつつも、一方で前作の反省を踏まえてかアルバムの長さ自体はコンパクトに抑えた点、そのうえでこれまでのオアシスの魅力を蔑ろにしない安定感、この辺を踏まえるとアルバムとしてのクオリティはかなり高いと思うんですがどうでしょう。
第2位 “Definitely Maybe” (1994)
……もうこの時点でみなさんお気づきでしょうけど、正直TOP2はつまんない結果になっちゃいます。でもそれくらい彼らはデビューと同時にトップ・ギアだったし、それこそがオアシスを最高のロック・バンドにした訳ですからね。イギリスの現地メディアや当のギャラガー兄弟はこっちをベストに挙げがちですが、私にとっては第2位。記念すべき1st“Definitely Maybe”です。
なんといっても“Rock ‘n’ Roll Star”からの“Shakermaker”、そして“Live Forever”という無敵のオープニングですよね。ロックの名盤で「1曲目が最高」ってパターンは割とよくあると思うんですよ。“Nevermind”然り“Let It Bleed”然り。ただ、ここまでそのテンションを持続させる名曲の応酬は果たして何枚あるんでしょうね。奇しくも開幕に「俺はロックンロール・スターだ」とまだ売れてもいないマンチェスターの若者がほざいている訳ですが、そりゃあこんなの聴かせてくるんだったら調子にも乗りますよ。
もちろんそこからも全編通して楽曲のクオリティは破格です。デビュー・シングルの“Supersonic”筆頭に“Slide Away”、“Cigarettes & Alcohol”なんかの代表曲に加えて、私の個人的なお気に入りとしては“Up In The Sky”なんですけど、この辺り本当にレベルが高いですね。そして素晴らしいのが、どれも「デビュー・アルバムらしい」ナンバーなんですね。だってジョージ・ハリスンやチャック・ベリーからちゃっかり拝借して、ひたすらに好きなことをやってるだけな訳でしょ?それでこの完成度というのは非凡なことですが。
あと今回改めてじっくり聴いて思ったのが、こんなにギターが主張する作品だったんですね。いきおいオアシスというとノエルの素晴らしいソング・ライティングとリアムのクールなヴォーカル、ここの2枚看板でイメージしてしまいますし、実際それが持ち味のバンドではあります。ただサウンド全体に耳を傾けてやると、ザ・ストーン・ローゼズ顔負けのキラキラしたトーンであったり、最早シューゲイズなのでは?という瞬間もあったり、あるいはグランジの影響であろうラフなサウンドだったり、ギター・アルバムとしてこんなに楽しめるとは恥ずかしながら今回まで気づけていませんでした。
で、そのギター・サウンドや好き勝手な作曲にも通ずるんですけど、オアシスを「ロック・バンド」として捉えた時に一番リアルなのはこの作品なんでしょうね。「ビートルズ、ピストルズ、オアシス。以下ゴミ」という有名なギャラガー烈伝を引用するならば、本作はオアシスのピストルズ・サイドを描いた1枚とでも言いましょうか。向こう見ずで高慢ちき、しかしそうするだけの説得力とフレンドリーさが確かにあるという意味で。
第1位 “(What’s The Story) Morning Glory ?” (1995)
はい、ということで私ピエールの選ぶオアシスのアルバム・ランキング、栄えある第1位は2nd“(What’s The Story) Morning Glory ?”です。どうです、つまんないでしょ?少なくとも日本なら百発百中でこの結果になるでしょうね。なんならオアシスという制約すらなく、旧Twitterで企画された洋楽オールタイムの名盤ランキングですら1位でしたからね。とにかく泣く子も黙る大名盤ってな具合です。
いや、そりゃそうですよ。なにしろ楽曲のレベルがちょっと段違いですから。さっきの1stに対するコメントで、ギターの存在感が面白いなんて話をしたじゃないですか。ただ本作では、そういうギター・オルタナティヴ的な色彩ってある程度減退してるんですね。その代わりに、ここぞとばかりに上質なメロディ・メイクを詰め込んでいます。そう、この転換こそ、日本で本作が絶対的な支持を集める理由だとも思っていて。この記事で何度か触れたように、オアシスってノエルの書くメロディとリアムのヴォーカルがあれば万事解決のバンドです。そして日本人の感性として、メロディへの意識はすごく強い国民性がありますから。
そして楽曲のレンジも飛躍的に向上していて。1stは「ロック小僧の生意気なる名曲集」といった趣でしたが、そこで得た成功を糧にかなり意欲的な方向へとノエルが進んでいます。オープナーの“Hello”から“Roll With It”に明らかですがシンプルなロックンロールという軸は継続しつつ、“Don’t Look Back In Anger”でのアンセミックで強烈なメロディ・メイク、“Wonderwall”や“Cast No Shadow”で聴くことのできるメランコリックな表情、“Some Might Say”や“She’s Electric”に顕著なビートルズ・フレーヴァー……そしてそのすべてがいちいち名曲です。
個人的にはその中でも“Champagne Supernova”が最愛のナンバーなんですが、これがまた見事なサイケデリック・ロックでね。1stにも感じたザ・ストーン・ローゼズのDNAをフィナーレに相応しいスケールとシンガロングを巻き起こすポップネスで昇華させる、実に天晴れな名曲。それにまたここに至るまでの道のりもいいんですよ。本作でもひときわソリッドな表題曲“Morning Glory”でロックにキメたと思えば、インタールードでノスタルジックに表情を変え、そしてさざなみが遠くから聞こえてくる……こういう、名盤に特有の展開の妙まで抑えているのがやっぱり素晴らしいですよ。
このアルバムの不思議なところが、何度も聴いた作品だしなんなら音楽体験の中では割と後回しにしていたものでもあるのに、毎回毎回「これがロックか!」みたいなうぶな感動をさせられるんです。ええ、まんまと。若干の恥ずかしさと悔しさがそのにあるのも事実なんですけど、でもそんな感動を生み出せるアルバム、私は他にまだ出会ってない気がしますね。
まとめ
久しぶりのアルバム・ランキング、楽しんでいただけましたでしょうか?日本でのオアシス人気は私も重々承知なので、ちょっと緊張感もあるんですけどね。
X見てても歓喜の雄叫びそのままにチケットをもぎ取って、渡英宣言される方が本当に多くて。しかも決してリアルタイムのファンだけでなく、解散後にオアシスを知った後追いのファンの方から、なんと親子揃ってイギリスまで観に行くオアシス・ファンもいたりしてね。渡英されるファン同士での情報共有なんかもどんどん進んでて、熱の入り方がちょっと過去にないレベルになってます。
私は生憎とそこまでのエネルギーがなく、来日を待っていようかなと思うんですが、最後に私にとってのオアシス再結成のちょっとしたこぼれ話でも。どこかに記録したかったんですけど相応しい場所がなくてね。
この前まで働いていた某所で、音楽好きの常連客とある賭けをしたんですね。それというのがまさしく、「オアシスが再結成するかどうか」だった訳です。具体的な内容としては、ツアーやって音源作るところまでやるかどうか、期限は3年以内だったかな。負けた方が勝った方に3万円分のヘッドフォンをプレゼントする、みたいな感じで。
その常連も、あるいはこの話を聞いた他の音楽好きも、全員が口を揃えて「する訳ない」と断言したんです。ただ私だけは頑なに「いや、可能性はある」と言い張って。ぶっちゃけるとトークを盛り上げるために逆張りしていた節もありましたし、再結成しないに賭けた方が絶対得だとは思います。
ただこれも偽らざる本心として、オアシスの再結成はあると思っていました。それは2人のソロ・キャリアがオアシスを肯定しながら先に進むものだったという理由もあるし、2人を繋ぎ止める数少ない絆である母ペギーの年齢を考えると今しかないだろうという理由、あとマンチェスター・シティ優勝したしテンション上がって仲直りしねえかなぁという理由、そして何より「その方がロマンがあるから」です。
その勤め先はもう離れてしまったのでこの戦利品を回収することは叶わないんですけど。ロック・バンドのロマンを信じてよかったなぁという感慨も、今回の再結成には個人的に感じましたね。ではでは、今回はこの辺で。
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